サタンちゃまとダンジョン祭り6 邪神の一面
相変わらずマイペースな邪神が俺の横で好きな食べ物並べて缶ビール片手に晩酌してる。
それで俺が生暖かい目で見ていると奴と目が合った。
「なんだちびっ子……物欲しそうに……」
「にゃっ……」
『別に欲しくねーよ』なんで見てただけで決めつける。すると邪神が俺に缶ビールを差し出した。
「飲むか?」
「にゃっ!」
俺は人間の大人より長生きな万年ちびっ子だけど、『だからって子供に酒勧めるな!』それにおっさんが口つけた酒は神であっても遠慮したい。
それで俺が断わると邪神は『別に一口くらい酒をどの親も子供飲ましてんじゃねーの? ハイハイ真面目だな』と聞き捨てならない捨て台詞を吐いた。
まぁ、ろくでもない飲兵衛な毒親ならともかく、普通は飲まさないぞ。
「しかしにゃ、ヤケに人間臭い邪神にゃら」
「おっ、ちびっ子言うねー俺が人間臭くて悪いか?」
「別に悪かにゃいけどにゃ」
「だったら聞くなよ」
「にゃっ……」
世間話してコイツの情報を聞き出そうとしたが、上手くはぐらかされた。なんと言うか表向きは口が軽いけど、絶対に秘密を喋らない口が重い神でもあるな。
「ところでさっさと飯食って急いで下に潜るにゃ」
「……別にのんびりしても良くないか?」
そう言って食べ終えた邪神は寝っ転がった。
「ちょっと聞き捨てなりませんわねっ!」
俺たちの会話を盗み聞きしていたイザベラが割って入ってきた。まぁ、王子を賭けたシャイニーとの勝負が掛かっているから、そりゃ必死だ。
だけど飛び入り参加の邪神は優勝なんかに目がなく、目標は地竜の首だからのんびり最下層にたどり着けばいいわけだ。
「そんなに勝ちたいのか人間の少女よ?」
半身を起こした邪神がイザベラの顔を見て問いただした。流石神さまだけあって、理由を聞かずとも分かっているみたいだ。
「なっ…………当たり前でしょう。この勝負は、あたくしが勝たなければ愛しの王子様は恋敵のモノになりますのっ、だからぜったいに負けません!」
「そうか……理由はどうあれ、お前にも譲れない信念があるのだな……ならばその願い付き合ってやろう」
イザベラに共感したのか邪神が立ちあがると、金のシャベルを肩に置き手を差し伸べた。
「……邪神と聞いて怖い神様かと思ってましたが……あたくし分からないですわ、貴方のことを……」
少し戸惑いながらイザベラが視線を反らしながら、邪神の手をとって握り締めた。
確かに邪神は妙に人間臭いところがあるな。
「まぁ俺は異世界人のような純粋な善には優しいよ」
「にゃっおみゃえは善と悪どっちの味方にゃ?」
「シシ……さぁな……とはいえ俺の正義を邪魔する者が例え正義なら潰すし、逆に悪でも共闘することもあるかもな……」
邪神の答えの意味がいまいち分からず俺は首をひねった。勿体ぶって今すぐ教えて欲しかったが突然現れた珍入者に遮られた。
『にぃやぁ〜〜』
「んっ……」
振り向いて俺の顔を見るなよ邪神。今の鳴き声はリアル猫のモノだ。
「あらっ可愛い」
イザベラが鳴き声の主に気づき指を差した。
その主は猫だった。キャンプ中の俺たちの前に一匹のキジトラの猫が尻尾を立てて現れたのだ。
まさかのリアル猫と俺とのコラボとはな。
「にゃんで猫がこんなところに?」
「そりゃあここが地下一階のダンジョンだから、猫が紛れ込んでいても不思議じゃねーさ」
食器を片付ける谷川シェフが言ったので納得した。しかし寄りによってダンジョンに入ってしまった猫を俺は同情の目で見つめた。
ミートイーターの群れに見つかったら、いくら猫でも逃げ切れないだろう。助けてやりたいのは山々だが、今外に出たら失格だ。だから可哀想だが、猫は置いて行くしかないんだ。
「俺は、人間の立場を優先にそれまで飼っていた家族同然だったペットを置いて行った人間が理解出来なかった……」
邪神がそう言うと猫の頭を撫で片手で抱き抱えた。
「にゃっ、まさか猫連れて地下に潜る気かにゃ?」
「ああ、ほっとけないだろそれに、猫片手で戦う位どうってことはないさ」
そう言って邪神は左手で猫を抱き、右手に金のシャベルを切っ先を俺に向けた。
しかしまさか邪神が猫好きだったとは以外だったな。
「ははっ、猫持って戦うなんて面白い神様だな?」
恐れ知らずか誰にでも平等に接するヒューイがタメ口で邪神に話し掛けた。この男も中々の大物だな。
「シシ、なんら問題はない。さてそろそろ俺たちも本気を出すとしようじゃないか?」
『にゃあ〜♬』
「おっ! お前もそう思うか」
コッチ見るな邪神。今鳴いたのは俺じゃない。
「ところでアンタのその武器だが……もっとマシな剣とかあったんじゃねーの?」
ガウエルが邪神のシャベルを指差し聞いた。すると邪神はシャベルを得意げに掲げ見あげた。
「これは……俺が……神になると決断した時に、転生の女神からもらった大切なシャベルだ……」
「にゃっ転生の女神っ!?」
女神からのプレゼントとは初情報だ。通りで金色のゴージャスなシャベルだと思ってた。
こうして説明しながら邪神はシャベルを愛おしげに撫でると説明を続けた。
「確かにこのシャベルは武器に使うモノじゃない……俺の……大切だった家族の墓穴を掘るためのモノだ……」
「おみゃえに家族がいたのかにゃ?」
「おっと、これ以上ネタバレだから終いだ」
自分から語っておいて会話を中断した邪神が代わりに俺の頭を撫でた。
「猫みたいににゃでんにゃっ!」
「シシ、似たようなもんだろさて……」
いつもの軽いノリに戻った邪神が笑いながら、シャベルの先を地下二階を繋ぐ階段を差した。
ようやくヤル気になったみたいだが、すでに他のライバルたちは最深部まで到達しているはずで、これから急いでも追いつけそうにない。
さて、邪神はどうするつもりだろうか……。




