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サタンちゃまとジャングルの魔物

 

「ちょっと止まれ!」


 ジャングルの中先頭を歩いていたライトニング沢田が俺たちを止めた。

 彼はその道のプロなのか危険を察知するのが早く、真剣な顔で小型斧を握った。


「ちょっと魔物が現れたのっ!?」

「いや違う。だが、わめくなっ娘っ!」

「……なによ」


 困惑するメリーを制してライトニング沢田は倒木の前でしゃがんだ。大分年月が経っていて大分朽ち掛けていた。

 いかにもクワガタが潜んでいるようで、昆虫マニアが見たら宝の山に見えるのだろう。


「うむ、いるな……」


 するとなにを思ったのかライトニング沢田は中腰に立って斧で倒木を砕き始めた。

 虫探しか、昆虫マニアのサガか?


「にゃにしてんのおみゃえ?」

「なにって、この朽木の中に美味しい食材が潜んでいるんだ」

「にゃんだと……」


 それを聞いてまともな奴の思考が固まる。

 大体今やることか?


「おおっ! いたいたっ!」


 朽木の中に虫の巣らしき穴があって、ライトニング沢田が指を入れて5センチ位の白い幼虫を捕り出した。

 魔物じゃねーじゃん虫かよ……。


「ほほっ、異世界産のカミキリムシの幼虫だぜっ!」

「おみゃえまさか食う気じゃにゃいよな?」

「……なに言ってんだ。食うに決まってんだろ? はぐっ」

「にゃっ!?」


 ライトニング沢田は幼虫を頭を除いて頭から食べた。しかし生で食べて大丈夫なんか?

 寄りによって虫ならなおさら寄生虫とか心配だ。


「う〜〜ん、うめぇ〜!」


『喜んで食べてやがる』ちょっと凡人には理解出来ない光景だ。


「にゃっ! せめて火を通すにゃっ!」

「馬鹿言うなっ! 生だと濃厚でクリーミーな味がして最高なんだ。ホレっ、お前も食えよアーーン」

「あ…………にゃっ食うかにゃっ!」


 釣られて口の中に虫放り込まれるところだった。『危ない危ない』しかし美味そうに食う。

 とはいえ生で食うから薬が手放せないんだぞ。


「さて、ここは昆虫の宝庫だぞ。もっと良く探せばレアな昆虫見つかるかもなぁ……」


 本来の目的を忘れ脱線気な昆虫食ハンター。

 趣味に走る案内人に合わせたら、いつまで経っても目的地にたどり着けなさそうだ。


「まて沢田」

「んっ、なんだいゴムのダンナ?」

「……済まんが今日は虫は無視して人喰いフラワー採集に専念して欲しいんじゃ」


 ゴムがなにげに駄洒落言ってるけど、皆スルーしてんな。


「分かった。ダンナの頼みとあらば趣味は封印しよう」

「済まんのう」

「ああ、だが、このジャングルは虫たちの方が無視してくれなさそうだぜ……」

「なんじゃと!」


 遠くから羽音が聞こえた。

 それが近づくにつれて音が大きくなり、ヘリのような耳を塞ぐほどの爆音だ。


「……この羽音は…………デビルビーだっ!」


 ライトニング沢田が空を指差し慌てて木の陰に身を隠した。

『なんと言うか』昆虫知識があっても戦闘力がないから、冒険者だよりなのね。


 仕方ない……。


「ザウエル、ガウエル頼むにゃ」

「よっしゃぁーーっ任せてくださいっ!」

「コラッガウエルッサタン様になんて返事の仕方っ!」


 まぁ無礼講ってやつで気にしない。

 それよりも元気でなによりだ。


「おっハチの魔物じゃん! しかもデケエ!」


 170センチほどの巨大なスズメバチそのモノの魔物が六匹目の前に現れた。

 黒と黄色のストライプのお腹の先に太い針が生えていた。あんなもの刺されたら腫れたじゃ済まないな。

 人間ならあの世行きなのは確かだ。


 しかし、片翼の黒天使はウキウキな表情を浮かべ剣を構えた。


「いくぜっザウエルッ!」

「ああっ、僕に遅れを取るんじゃないぞっ!」

「な、訳ないっしょっ!」


 お互い声を掛けデビルビーに飛び掛かるブラックウインズ。


 デビルビーがガウエルを捕獲しに突っ込んで来た。


「生意気なっ! 俺を捕まえるなんて100年はえ〜ぜっそらっ!」

「!?」


 デビルビーを縦に斬って真っ二つにした。


「ははっチョロいな。おいっザウエルッそっち一匹行ったぞ!」

「分かってる。はあっ! ふんっ!」

「!!」


 ザウエルはまず一番厄介な針を叩き斬ってから、次に危険なアゴを持つ頭部を切断した。


「ふう〜、残り四匹っ」

「ザウエルッうしろっ!」

「なにっ!」


 ガウエルに言われ振り返るとすぐ目の前で、デビルビーがザウエルを針で突き刺そうとしていた。


「くっ、不味いっ」


 体勢を立て直す。しかしデビルビーの方が先に動いて針を突き刺してきた。


「このっ!」


 なんとか転がって攻撃をかわすもデビルビーが次の攻撃体勢に移った。

 転がったザウエルはすぐに攻撃に移れないからちょっと戸惑っている様子。


 ザシュッ!


「なっ!」


 その時、横からエイトさんがジャッジメントアックスでデビルビーを斬り裂いた。


「白天使っ! 何故僕を助けた?」

「……何故って、これ以上悪魔王に経験値を渡す訳にはいけないからなのら……」

「そ、そうか……ありがとうなっ」

「……妨害したのに、何故感謝するのら……」


 素直な黒天使と素直じゃない白天使か……普通逆だと思うが良かったな。

 さて、俺も一丁戦うか。


「ワン☆ころ合体にゃっ」

『分かった主人〜ワンワンニャン!』


 ペットと合体してスーパーサタンちゃまに変身した俺がデビルビーに立ち向かおうとした。

 するとメリーに尻尾を掴まれた。


「にゃっ! なにすんにゃメリー?」

「ちょっと! 一人で戦わないでっあたしにも経験値分けてよ」

「にゃんにゃ、にゃったらどうぞにゃ」


 俺は道を開けてメリーに譲ろうとした。


「む〜〜……」


 譲れと言われたので譲ったら、頬を膨らませたメリーはなんだかご立腹だ。

 全く女の子の気持ちがさっぱり分からん……。


「にゃんにゃメリー戦わなにゃいのか?」

「もうっ! あんなヤバい蜂相手に女の子一人戦えっての?」

「にゃっ……」


 メリーはデビルビーを指差して抗議した。

 それならそうと素直に言えばいいのに……。


「分かったにゃ、アタチが蜂を弱らせるから、そのスキにトドメを刺すんだにゃ(蜂だけに……)」

「……分かったわよ……」

「んじゃ行くにゃっ!」


 俺はデビルビーに向かって頭突きを喰らわせた。


『!!』


 ジュッ!


 デビルビーは一撃で消滅した。


「にゃっ……」

「コラーッ! なにやってるのちびっ子!?」

「悪いにゃ……手加減するのが難しいにゃ……」

「なにその言い方……」


 別にイキッて言った訳じゃなく、本当に手加減が難しいんだ。それだけ俺の力が増している証拠だ。

 さて次は成功しないとな。


「分かったにゃ、次こそ任せるにゃ」

「……本当? ちゃんとやりなさいよ」

「にゃっ!」


 俺は右手をあげて返事してからもう一匹のデビルビーに向かって猫パンチを繰り出した。

 しかしリーチが届かない。それでかわされ巨大アゴで噛みつこうとしてきた。


『主人っ〜危ないワンワンニャン!』


 咄嗟に分離したワン☆ころが飛び出しデビルビーの顔を引っ掻いた。


「はあっ!」


 そのスキにメリーがデビルビーの胸を剣で貫いてなんとか倒せた。


「やったわ! しかもレベルアップしたわっ!」


 飛び跳ね喜ぶメリー。

 やれやれ、とりあえずメリーに花を持たせることに成功した。


「サタン様っ終わりました」


 ザウエルが報告して来た。

 どうやら魔物全て片付けたみたいだ。


「ほうっ、終わったか……それじゃ先に進むかの」


 木の陰で隠れていたゴムたちが出て来た。コイツらなにも出来なかったな。

 本当冒険者としては初心者以下だな。


「まて、ダンナ」


 先に行こうとしたゴムをライトニング沢田が呼び止めた。


「なんじゃ沢田?」

「良く前を見ろ」

「ん……まさか……」


 目の前に一本の糸が道を塞ぐように張られていた。


「……まさかこれは……」

「ああ、間違いねぇ……これはギガスパイダーの糸だ。少しでも触れれば感知して襲って来るぞ……」

「それは大変じゃっ、この先の開けた場所に人喰いフラワーの自生地があると言うのに……」


 どうやらこの先に蜘蛛の巣が張っているらしい。で、目的地に通るためには蜘蛛の巣を取っ払う必要があり、当然主とのバトルは必須になる。


「ここは避けて遠回りは駄目かにゃ?」


 蜘蛛が苦手なんで他の手がないかゴムに聞いた。

 すると奴は頑なに良しとしない。


「駄目じゃ、採取した人喰いフラワーを運搬する広い道が必要。じゃからここの道以外ないのじゃ」

「だったら諦めろにゃ……」

「バカモン! ちびっ子ごときに冒険の決定権などないぞっ!」

「にゃっ!」


 何故か叱られた。それはいいとして、何故そこまでムキになるんだろう。

『あー蜘蛛は大の苦手だが』この先に張ってある蜘蛛の巣を排除しないと先に進めないみたいだ。


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