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サタンちゃまと幻の草1

 

 あれから15時間が経過して黒鴉とクレナとロウランが俺のカードファイルに戻った。

 で、アヤネとミツヤとユウナは次のクエストがあると言うので別れた。

 ちょっと残念だが、また会う約束したから良しとしよう。


 そんな訳で残ったメンバーは俺とエイトさんとアルマーとワン☆ころと不死姫の身体を借りたヤドカリ(パギュール)の五人と一匹だ。


 それで城の前で野宿をしていた訳だけど、聖女チームと合流するにはあと二日ほど掛かりそうだ。

 なんでも祭りの後の晩餐会があって、主催ののじゃ姫が帰してくれないから予定より合流が遅れるとのことだ。


 ところで気になる点が一つ。

 それはパギュールの実体化制限時間についてだ。普通の悪魔と一緒なら最大15時間過ぎた時点で強制カード化してバイバイだ。

 しかしそうなると、不死姫さまが解放されて大変なことになる。そう、それが今一番の気掛かりなのだ。

 だから俺はパギュール(ヤドカリ部長)に直接聞くことにした。


「にゃあ、パギュールはそろそろ物質化の制限時間にゃ迫ってるにゃが大丈夫にゃ?」

「ああ、その心配は無用ですぜサタン様。この女体(からだ)を支配している俺の身体は半エーテル体で制限時間が過ぎても強制退場される心配はないと思うぜ」

「にゃっ、大丈夫かにゃ……」

「さあなっ、そん時はそん時ですぜサタン様」


 その場しのぎの大雑把な性格だな。

 まぁ、良く言えば楽天家だな。


「しかし腹減ったなぁ……」

「にゃっ!」


 ヤドカリ部長がそう言ってお腹を摩った。

 とは言え、寄生前の姫さまは俺のグルメガチャでたらふく食ったばかりなのに、もう腹が減ったってとんでもない胃袋だな。

 ある意味大変だぞ。金銭的にな……まぁ幸い俺にはグルメガチャスキルがある。

 そう、魔力さえあれば実質ダダで飯にありつけるから助かったよ。

 スキル開発者のギジェル博士に感謝だな。


「で、サタン様っここは一つ。グルメガチャを……」

「にゃっ!魔力回復中にそれは無理にゃっ!」

「そうですか……では自炊しかありませんね」


 あきらめたのかヤドカリ部長は胡座をかくと困惑した表情を浮かべ、後ろ頭を掻いた。

 しかし、自炊と言っても鍋とか調理器具一式がモスマンの無限胃袋に閉まってある。

 それで彼を呼んで調理器具を出せばいいんだが、生憎モスマンはさっきファイルに戻ったばかりだ。


「にゃ〜あ、調理器具がにゃいから自炊も無理にゃっ」

「だったら外食か……」

「にゃ〜お金もにゃいにゃ……」

「マジかよサタン様っ、ちょっとしっかりしてくださいよ!」

「にゃっ……ごめんにゃちゃいにゃっ……」


 俺が素直に謝るとヤドカリ部長が慌ててなだめた。


「いやいやっ謝らんでくださいよっサタン様っ!今日は仕方ない。我慢しやしょう」

「にゃっ……」

「ところで天使まで金ねぇってどう言うことだよ?」


 今度はヤドカリ部長の怒りの矛先がエイトさんに移った。


「あわわっ……うっかりしていたのだ……」

「全く無駄にエロい身体してんのにっ使えねー天使だ!」

「ひええっ……」


 まるで蛇に睨まれた蛙のようにエイトさんは怯え、縮こまってしまった。

 確かにそのスタイルの利点をエイトさんは全然活用してないな。

 これが宝の持ち腐れだな。


『主人〜っお腹空いたワンニャン』


『おっ!』ペットのワン☆ころが前足で俺を突いてご飯を要求した。


「あるにはあるにゃ……」


 俺はポッケを探って一本のペットフードのチュームを取り出した。

 しかし、皆が腹を空かせている時にペットだけに餌やりは気が引けるなぁ……。


「サタン様っ……この小動物は?」


 不思議そうにヤドカリ部長が聞いてきた。


「コレはワン☆ころ。アタチのペットにゃっ」

「ペット……」


 複雑な表情を浮かべたヤドカリ部長はワン☆ころを見つめた。

 するとワン☆ころが勝ち誇るように鼻をあげた。


『僕はペットだから飼い主より偉いんだぞっワンワンニャン♬』

「ははっ、確かにペットの言いなりな下僕な飼い主いるわな。しかし、腹減ったなぁ〜いいなぁお前だけ飯にありつけてよ」

『ワンワンッニャン♬』


 ヤドカリ部長はしゃがんでワン☆ころの頭を撫でた。とりあえず先輩にタメ口の困ったペットにキレなくて感謝だ。


「アンタら困っているようだが、どうしたんだい?」


 日が落ちてすっかり夜になり焚き火をして飢えをしのいでいたところに、冒険者風の一人の男が声を掛けて来た。

 大きなリュックを背負いスコップをさして、無精髭の三枚目の男だ。


「なんだ貴様っ!」


 男に警戒したヤドカリ部長が立ちあがってランサーを構えた。


「ひっ!、ちょっと待ってくれよっ!お、俺はアンタらが困ってると思って声を掛けただけだよ……」


 すると男は震え、両手をあげて降参した。

 別に悪意は感じられないな。


「そうかにゃ、なら止めるにゃパギュール」

「ハッ!サタン様の命令とあれば、従います」


 ヤドカリ部長は俺に頭をさげて座り直した。


「ところでお前はにゃんだ?」

「にゃんだ……あっ!いやいや、俺は孤高の冒険者のスベリヒユってんだ」

「にゃっ!スベリヒユ……」


 変な名前だ。

 しかし、どこかで聞いたことのある名前だな……。


「でっ、お前が俺たちになんのようなんだ?」

「え〜とぉ……なんだか飯も食べずに野宿してるようだから、良かったら一緒に飯でもと……」

「なぁにぃっ!一緒に飯だとうっ……サタン様っどうします?」

「にゃっ!この男のご好意に応えるとしようにゃっ」

「了解しましたー」


 怪しい男の飯を口にするのは危険だが、俺を含め皆腹が減ってるから背に腹はかえられない。

 まぁ、不死身のヤドカリ部長に毒味させてから食べれば問題ないな。


 しかしこの男は俺に声を掛けたのは、単なる善意からではなさそうだ……。


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