サタンちゃまと不死の姫君2
アヤネとミツヤとユウナと一緒にアルマーの戦車形態に乗っての移動は以外と快適で、子供時代の遠足を思わせて楽しかった。
とは言え、未だに背中に張りついているワン☆ころが爪を立ててムズムズする。
「ところで……さっきから背中に張りついている猫はなんなの……」
後ろに座るミツヤが不思議そうに、俺の背中に張りつくペットについて今更聞いてきた。
俺は大分前からツッコミ待ちだったぞ。
「あのにゃ……」
「ちょっと待って言わないでっ!種類当てるから……」
「にゃっ……」
ミツヤが人差し指で俺の口を塞いだ。クイズじゃないんだから、陽キャのそう言うやり取り疲れる。
「猫のようで猫でない。いやしかし、犬のようで犬ではない。摩訶不思議な生き物ですな」
「にゃっ!結局答えはでにゃいようだにゃミツヤ?」
「ちょっ……台詞の中にどんだけ猫要素入れとくのよサタンちゃま……」
『にゃっ!』驚くことソコかよ。でも言うほど『にゃあにゃあ』言ってない。たったの『三にゃあ』だ。
で、そのあと説明すると皆驚きの声をあげた。主にこのペットがガチャで手に入れたことについてだ。
「アンタのスキル非常識よ。そもそもそれはスキルと呼べるモノなのかしら?」
「にゃんにゃアヤネ。まるで俺のスキルが不正ツールみたいに言って……」
「確かにそれに近いチートスキルね」
「にゃから、ふ、不正スキルじゃにゃいにゃん!」
俺は否定して怒った。
すると三人娘に怒った姿が可愛いと言われた。こりゃ逆効果だ。
ところでお尻がむず痒い……。
「ところで……サタンちゃまに尻尾生えてんだ……」
「にゃっ!」
ミツヤが俺の先端矢印形の悪魔の尻尾を握った。
「尻尾は握っちゃダメにゃん!」
「えっ? まさか尻尾が弱点なの?」
「違うにゃっ、あえて言うとにゃ、くすぐったいのにゃ」
「そうなのごめん」
例えるなら全く同性ならお尻触ってもいい訳ないし、尻尾なんて握ったら飼い猫だって嫌がるだろ。
さて、クラスメイトと楽しい会話をしていると、アルマーが停止した。
『ユーたち着いたぞ』
どうやら目的地の不死の姫君のお城に到着したみたいだ。彼から降りて正面を見ると、確かに城壁に囲まれた城がそびえ建っていた。
見た目はメルヘンチックな西洋風お城だけど、全体的に黒い石造りの不吉な印象だ。
城門までおよそ500メートルの距離だ。しかし、不気味なほどに鎮まり返っていた。
「にゃんにゃ城は留守にゃ?」
「社長っ居留守の可能性ありますぜ?」
俺の肩を叩き。黒鴉が言った。
「悠長に待ってる訳にもいけにゃいにゃ……」
「なんらなら先に撃って反応見ますか?」
「それは駄目にゃっ!そんにゃことしたら、友好関係にゃど結ぶの不可能に、にゃるぞ!」
大体下手に刺激したら、十万の不死兵が巣穴を突かれたアリのように大量に湧いて来るぞ。
「だったらどうするかにゃ……やはりなんとか不死の姫君と謁見して友好関係結ぶしかにゃいぞ」
「果たして上手くいくでしょうか……」
「にゃにを言うかロウラン。会ってみにゃくちゃ分からにゃいのにゃ」
「そうですね。あっサタン様っ!城門が開きました」
「にゃにっ!」
城門が観音開きに開くと中から兵士の軍勢がワラワラと現れた。
「なんか、歓迎ムードじゃなさそうね」
「ええ、しかも皆武器を手にして」
顔を合わせたアヤネとユウナが言った。
しかも全ての兵士がガイコツだった。
「アンデット系とは相性がいいとはいえ……尋常じゃない数なのら……」
翼を畳んで地に降りた天使のエイトさんが言った。確かに相性より数が優っている。
数にして一万と以外と少ないが、その数が倍に増えていくから十万の兵とは、あながち間違ってはなさそうだ。
「ケケッ♬ 社長っ見てください。この数をっボーナスタイムですぜ」
「待つにゃっ黒鴉。まだ敵と判断すりにゃ……」
「甘いですよ社長。あんだけの数の兵隊を出しといて歓迎ムードとはいい難いですよケケッ♫」
確かにそうだけどなぁ……。
「サタン様っ!」
俺を呼んだクレナが軍勢に向かって指を差した。すると無秩序に群がっていた兵士たちがまるでモーゼの十戒のように左右に分かれ、中央に道が出来た。
中央の道から全身甲冑姿の男が姿を現した。
この騎士もアンデット系か? 顔右半分が剥き出しのドクロだ。しかし、顎ひげ蓄えた精悍な顔立ちは将軍クラスだな。
手を後ろに組んだその騎士は当たりを見渡してから、俺たちを見すえた。
「この場所は神聖なる我が主君エテルネル様の領地内であるぞ」
意外と意志のあるアンデットだ。しかも会話が出来て偉そうだ。
だが、こう言った上から目線の男とは話しが合わない。しかし、責任者が出て来たからには交渉するチャンスだ。
とはいえ、子供の俺とじゃマトモに取り合ってくれなさそう。
でも頑張る。
「アタチの名はサタンッ!エテルネル姫さまと同盟を組みに東の国から参ったにゃっ!」
「我が主君に会いに……サタンに……東の国……猫口調……無礼な……」
「にゃっ!?」
なにが気に食わなかったのか半顔の騎士が鞘から剣を抜いて空に掲げた。
やっぱり猫口調か?
分かるけど、仕様だから無茶言うな。
「さて、私は主君を護る不滅の将軍ガイストゲネル。我が主君の領地に土足で踏み入れた罪をその生命で償ってもらおう……」
結局戦いは避けられないみたいだな。
次から次へとガイコツ兵士が城門からなだれ込んで来たけど、逃げるどころか黒騎士たちは笑顔で剣を構えた。
「ケケッ♬ 社長のレベルアップのボーナスチャンス!」
「願ってもないチャンスね」
俺の成長のために戦ってくれる黒鴉とクレナには感謝しかない。一方ロウランは冷静に分析していた。
「それにしても数が多すぎます。ですから、いくら我々でもあっという間に囲まれてしまいます。ですから一割残して間引きする必要がありますわ」
ツルハシを地に置いたロウランがチラリとアルマーに視線を送った。
そうか、ここで彼の出番だな。
「アルマーッ出番にゃ」
『了解した。では、危ないからミーから離れていてくれ』
「分かったにゃ!」
言われた通り三人娘を後退させて、シールドピクシー二体召喚してシールドを貼らせた。
もちろん俺も中にいる。
『うむっではっ!アクセセレイション・ホームッ!』
ガッキィンン!
アルマーがドリルタンクモードから人型モードに変形した。
「ちょっとあのロボットさんが武器も持たずにアンデットの群れに向かって行くけど、大丈夫なの……」
俺の右手を握るユウナが心配そうに聞いた。
『ラッキー!』いや、今はそれどころじゃない。
「大丈夫にゃっ、こう見えてもアルマーは全身武器の塊にゃっ!」
アルマーの上半身にミサイル発射口。両椀にバルカン砲に両肩にキャノン砲に、ふくらはぎにミサイルハッチ。
オマケに目からレーザー光線発射と同時フルオープン攻撃を途切れることなく半永久的に敵に浴びせることが出来る。
仕組みは、武器カートリッジと繋がる異次元の無人フルオート弾薬工事から、自動的に供給されるから無限攻撃出来る。
まぁ、それは異星人の科学の力で可能となるから、人類の科学力では再現不可能みたいだ。
まぁ分かっていても、細かい原理が理解出来ない機能は摩訶不思議な魔法とそう変わらない。
以前俺は聖女さまにアルマーの全身武装について話したことがある。それを思い出した彼女はこの時のために彼を同行させたと思う。
かつて聞いた。
こことは違う。とある並行世界でたった一機のアルマーが、とある国の軍隊を壊滅させ国家転覆させたと言う逸話。
その話が真実。
いや、トモなら十万の兵隊など敵ではない。
「フンッ!我が最強不死の軍隊に、たかがアイアンゴーレムが歯向かうだと?」
ガイストゲネルが顔を歪めて笑った。ちょっと分かり易い位アルマーを舐めてるな。
でもこの位煽ってくれないと、力で圧倒した時スカッとしないから良しだ。
「アルマーッやっちゃるにゃ!」
『ああ、君たちは危ないから下がっていてくれ』
「なんだとうっコラッ!」
まぁ許してやれよ黒鴉。
『さて、久々にリミッター解除だ!』
パカッパカッパカッパカッ!
ガキガキィン!!
アルマーの全身武装がフルハッチオープンした。




