サタンちゃまと最後の一回ガチャ
「ちょっと待つにゃっ、要するに聖女さまは俺にミュータントゴブリン相手にガチャの力で倒せというにゃっ?」
「ええそうよ」
「……何故毎回アタチに無理難題押しつけて追い詰めるにゃっ?」
これが一番聞きたかったことだ。
毎回死ぬ思いしてスキルやらで乗り越えて来たけど、そろそろ限界だぞ。せめて聖女さまの意図を知りたい。
「あら、別に意地悪してる訳じゃないのよ。そーねー……あえて試練を与えることでサタンちゃまのガチャ運の奇跡を見たいからよ」
それって要するに、俺を追い詰めてレアキャラ当てる確率を高める裏ワザじゃないの?
こんなことなら戦いのない日常でガチャ回しておけば良かった。ほぼ毎日回しとけば、いつか最高レアの五将軍当たるだろう。
ただ、五将軍に関してはここぞの場面でしか、ガチャ回した時しか出てくれない気がするんだよな……根拠はないけどなんとなくそんな気がする。
そうなると五将軍以外の高レアキャラを今は狙うしかない。
で、思い当たるレアと言うか強者は……まず思い浮かべるのが巨ジン(弟)だ。現在日本で暴れているのは兄貴の方で正常な方の弟が昔いた。(とは言え弟の性格はまともではないが、奴は身内には手を出さないからひとまず安心だ)
で、巨ジン(弟)の方は二百年前に天使軍艦長ユウトに倒されたらしい。らしいと言うのは、その時俺は天界の牢獄に収監されてたから知らなかった。
さて、恐らく俺の悪魔ガチャに巨ジンもラインナップに入っているハズで、しかもたった一種だからスーパーレアだ。下手したらまだ当ててない星6悪魔かもな。
巨ジンに関してはそこら辺にして、あと思い当たるレア級悪魔はと言うと……黒騎士系が二人位かな……あとは俺が把握してないレア悪魔位かな……。
『うん』悪魔軍は百万を超える大軍勢で会ったことのない実力者が必ずいるハズなんだ。
そのいい例がデビルソーセージだ。星1のハズレ悪魔だけどガチャで出すまで知らなかった。
だから俺の知らないレア悪魔を当てても不思議ではないな。
『良しっ!』回したろうじゃないか悪魔ガチャを!
「聖女さまっ分かったにゃっ!」
「ところで何回ガチャ回せるの?」
「にゃっ……ちょっちょっと待つにゃ……」
俺は慌ててステータスウインドウを開いて魔力残高を調べた。
「え〜と……魔力1169に対して、さっき魔石ガチャ30回回したから、一回20として30にゃから600引いて現在の魔力は……569にゃっ」
「ほーーっそれで何回ガチャ回せるのかしら?」
「にゃっ!」
お前それ位暗算しろ。幼女に計算任すな全く呆れる聖女だ。とは言え怖いから計算しますよ……。
「うんとにゃ……28回回せるにゃっ!」
「……30回魔石ガチャ回さなかったら、合計58回回せたわね……ところでその魔石の用途は?」
「にゃっ……いやそのにゃ……今答える必要あるかにゃ?」
「あら、言いたくないのなら言わなくてもいいわよサタンちゃま……」
「にゃっ……」
滅茶苦茶聖女さまにプレッシャー掛けられている。もし間に受けて答えなかったら、もっと酷いお仕置きが待ってそうで正直に答えるしかないじゃないか!
仕方ない。正直に言おう。
「あのにゃっ、今戦ってるレッドデビル三十人に魔石あげたにゃ」
「あらそう〜偉いわね〜正直に答えてサタンちゃま…………お座りっ!」
「にゃんっ!?」
言わんこっちゃない。俺は強制正座させられた。正直に話しても結局罰を受けてしまった訳だ。
「全く低レアのご機嫌取るために貴重な魔力使ってんじゃないわよ。ねぇサタンちゃま?」
「にゃっ……」
優しい顔で顔を覗かせる聖女さまは怖い。
この首輪がある限り聖女の一声で自害させられる罰だってある訳で、とてつもない恐怖だ。
そこまで命じないとは彼女を信じたが、なにせ俺は悪魔だから、神に仕える聖女の所詮敵だからな。
「まぁ良いでしょう。この位危機感あった方がレア当てる奇跡を呼べるかもね……」
「分かったにゃ……頑張るにゃっ……」
俺は両手を空にかかげて悪魔ガチャスキルを発動した。すると当然空から巨大カプセル自販機が出現。そこでついでにゴブリンを始末したい。
で、あることに気づいた。
出現したての自販機を動かせることに……だったらゴブリンの真下に落とすわな。
「今にゃっ!」
「ギャッ!?」
ズズズンンーー〜ーーン!
ブチッ!
悲鳴のあとに生き物が潰れる嫌な音がした。狙い通りゴブリン潰したけど、怖いから見ないでカプセル自販機のハンドルを回した。
久々のガチャだ。果たして結果は……。
とりあえず20回回した。
【 1、星1レッドデビル剣型 2、星1ユニコーンラビット 3、星1レッドデビル槍型 4、星2デビルキャンサー 5、星1レッドデビル剣型 6、星1デビルソーセージ 7、星2ブラックタランチュラ 】
『にゃっ!』蜘蛛系は相変わらず苦手だ。それとまた謎のデビルソーセージを引き当てたけど、強さとか能力は不明で謎過ぎる。
今度余裕あったら使ってみよう。
さてガチャの続きだ。
【 8、星1レッドデビル棍棒タイプ 9、星2ハニワデビル 10、星3シャドーマン 11、星3半魚人 12、星1ユニコーンラビットオレンジ 13、星3ケセランパサラン 14、星2ホワイトタランチュラ 15、星1ユニコーンラビット 16、星2カタミミブタ 17、星3クビレオニ 18、星1レッドデビル剣型 19、星1レッドデビル槍タイプ 20、星1デビルソーセージ 】
『……』色々ツッコミどころがある。バラエティーに富んだ新しい悪魔たちを引いた。半魚人とか有名どころも引いたし、逆にケセランパサランとか沖縄の妖怪カタミミブタや同じく妖怪のクビレオニを引いた。
なんだか妖怪も悪魔に入れていいのか疑問に残るところだけど……それより高レアが出なかった。
「なにしてますのサタンちゃま……」
「にゃっ!ま、待つにゃっ……あと8回回せるにゃっ」
後ろから聖女さまが俺にプレッシャーを掛けてきやがる。これは運だから結果はどうしようもないよ。
とりあえず残りのガチャを回そう。
ガチャッガチャガチャッポン!
【 21、星2ブラックタランチュラ 22、星1レッドデビル槍型 23、星1ユニコーンラビット 24、星3グリーンマン 25、星2デビルスネーク 26、星1レッドデビル槍型 27、星1レッドデビル剣型 】
『にゃっ!』残り1回だけど、早々高レアなんて出やしないな。たまに星3が出るけど用途は不明だし、皆イロモノっぽいから微妙だ。
「サタンちゃま……」
「にゃっ!もうにゃんにゃのっ!」
結果が芳しくなくても俺の肩を掴んで当たるなよ聖女。
しかしいよいよ持って追い詰められてきたぞ俺……。
とは言えあと一回ガチャ回せるから、最後の一回に希望を託すしかない。
「最後の一回回すにゃ……にゃあっ!」
俺は自販機のハンドルに手を掛けた瞬間何者かに突き飛ばされた。
「ゲゲッ!」
全身紫色のミュータントゴブリンが、目の前にガニ股に立って笑っていた。そう奴が俺を突き飛ばしたんだ。
頭が飛び抜けて良いとあってミュータントゴブリンは、冒険者から奪った剣と盾を装備していた。
「あと一回にゃのに、にゃんで意地悪するんにゃっ!」
「ゲゲッ♬」
会話が成立しないが、俺の邪魔をしたい悪意だけは伝わった。さてどうする……俺の背後に出したばかりの悪魔たちが見ているが、右も左も分からない新人の彼らに命令するよりは、いつもの俺の得意技でミュータントゴブリンを退けさせよう。
「ゲゲッゲゲッ♬」
「にゃんっ!」
ミュータントゴブリンが剣を振りおろした。俺は横に移動してかわし、ジャンプして奴の顔面に頭突きをかました。
それで吹き飛ばしたスキに俺は最後の一回の悪魔ガチャを引いた。
ガチャッガチャガチャッポン!
「にゃっ……!」
プラチナカプセルが最後に出た。
『やった!』星5の高レアだ。
カプセルが開いた。さて、今回はなにかな?
煙りの中からシルエットが見えた。身長は小柄で女性型だ。そしてその正体が明らかになった。
全身黒い鎧を身にまとい黒生地のロングスカートを履き、クリーム色のロングヘアーと見間違うポニーテールの色白の肌の優しそうな美人なお姉さん。
いわゆる黒騎士か?
比較すれば、白天使の肌が露出したスケベな格好に比べ我が軍の黒騎士の肌の露出は顔と首のみで、極端に肌の露出が少ない。
いわゆる清純派とも言えるな、悪魔なのに……。
手にはカマか……いや、岩などを砕くツルハシを握った優し気な黒騎士が俺に頭をさげた。
「お久しぶりですサタン様……」
「にゃっ!だ、誰にゃっけ……?」
「……」
俺の残念な反応にお姉さんが黙った。
だって彼女とは初対面だよ。
「ゲギャッ!」
空気を読まない雑魚ゴブリンが飛び掛かって来た。しかし彼女がツルハシで心臓に一突きして引っ張った。
「ゲゲッ!!」
ツルハシの先になにか白い物が引きずり出された気がしたが、とにかくこの攻撃でゴブリンは絶命した。
「ふふっ♡ 駄目ですよ〜人の会話に割って入っちゃふふっ♬ だから取っちゃいました……魂を」
優し気なお姉さんがクスリと笑い。左手で掴んだ白い大きなオタマジャクシを俺に見せた。
まさかゴブリンの魂か……それなら彼女の正体は……。
彼女は俺の元に駆け寄り魂を差し出した。言っとくけど悪魔王でも食わねーよ。そんなモン。
それよりお姉さん誰だっけ?
「サタン様、私のこと覚えてますか?」
諦めの悪いお姉さんだなぁ、まだ聞くか?
「済まにゃい……覚えてにゃい」
「……仕方ないですね……コノーッ!この場合普通なら悪いちびっ子にお尻ぺんぺんお仕置きだけど、サタン様にはもちろんしませんからお安心を……」
『にゃっ!』なんだよこのノリは、とにかく彼女は俺が可愛くて体罰したくてしょうがないみたいだな。
ちょっと距離を取ろう……それよりこのお姉さんは何者だ?
『おっと!』お姉さんが前屈みで黒いツルハシを両手で握って、俺の顔をじっと見て優しく微笑んだ。
なんだ彼女は天使か?
「初めましてサタン様」
ようやく自己紹介かお姉さんが俺にお辞儀をした。
「にゃっ」
「私はデスプリーストのロウランと申します。得意技は魂抜きです。よしなに〜〜♬」
黒騎士のお姉さんが陽気に手をヒラヒラさせ挨拶した。優しい感じだけど、彼女って死神か……。
とは言え最後のガチャで星5をゲットした。
だけどまたしても星6はお目に掛からなかったけど、黒騎士のお姉さん三人目だ。この調子で集めたらサタンちゃま親衛隊を結成出来るぞ。
てか、今日から親衛隊作るぞ!




