サタンちゃまとゴブリンの洞窟
俺と聖女さまとメリーの三人でこの先にあるS級クエストの目的地のゴブリンの洞窟に到着した。
洞窟の入り口は意外と狭い。だからゴブリンにとっては罠を仕掛け易いし、敵が侵入して来たら闇に身を潜めて弓を放てば容易く守りを固められると、一緒について来たフルフェイス男が解説した。
この男を入れたら四人だな。
ところでメリーはフルフェイス男を睨んでいた。頼んでないのについて来て目障りなんかな?
が、経験上こう言う危ない男は刺激しないのが一番だけどな。
「なんでアンタもついてくんの? まさか聖女さまが取ってきたS級クエストを横取りする気なの?」
「まさかぁクエストは依頼を受けた者のモノだ。ただし、俺はゴブリンのお宝が欲しいだけだ」
「ゴブリンのお宝っ?」
お宝と聞いてメリーの目が輝いた。しかし期待しない方がいいと思う。だって野蛮なゴブリンのお宝だ。きっとドクロとかろくなモノじゃない。
「ああゴブリンはな、光モノを集める習性があってこの洞窟は昔金が取れたらしい。つまり……」
「洞窟の奥に金塊が眠っている可能性があると言う訳ね」
金にうるさい聖女さまが鋭い指摘した。
「ああ、大いにその可能性がある。しかし今回のゴブリンの群れのリーダーがミュータントゴブリンの可能性がある」
「なにそれっ?」
メリーが馬鹿っぽく聞いたがそんなんじゃ、フルフェイス男に馬鹿にされるぞ。
「娘っそんなことも知らないのか?」
「ちょっと馬鹿にしてっ!コラッ兜脱ぎなさいよっ!そしてその頭を石でかち割ってやろうかい?」
ホラ馬鹿にされた。だからってキレちゃ駄目だ。
肩をすくめるフルフェイス男に、メリーは大きな石を両手で持ちあげた。
しかしメリーからマジで殺意を感じる。
ちなみにここは治外法権の異世界大陸なので例えば人殺しても、日本の警察は犯人逮捕もこの地に立ち寄ることも出来ない。だから冒険者同士のイザコザで殺されるケースは良くあるらしい。
ま、メリーは馬鹿でもそこまで愚かじゃないから、単なる威嚇だろ。
「あら、ミュータントゴブリンは5パーセントの確率で誕生する突然変異種で、高度な知能と類まれな身体能力を兼ね備えたレア個体ですわよね?」
「ああ、流石だな聖女。この洞窟を寝城にするゴブリン族の頭がレア個体のミュータントゴブリンって訳だ」
「なるほど……当初このクエストを知った時はゴブリン討伐ごときでS級なのが疑問でした。しかし、頭のキレるミュータントゴブリンが群を統率しているなら、成功難易度が格段とあがる訳で下級から上級クエストにランクアップしていったと見て良いでしょう」
「流石聖女様の考察力だ」
フルフェイス男は手を叩いた。そして話を続けた。
「まずあの狭い洞窟の入り口に顔を覗き込んでみろ。たちまち罠の矢の雨が飛んで来るぞ。それもひっきりなしに……」
ひっきりなしって弾切れ無縁のアルマーの無限ミサイルと原理が一緒か?
ちなみにだけどアルマーの場合は、ミサイル装填装置と異次空間にある二十四時間フルオート武器生産工場と繋がっていて、攻撃中自動補充されて結果無限にミサイル攻撃が出来る仕組みなんだ。
まぁこれは異星人のテクノロジーで現在の地球の科学力では不可能らしいな。
「奴らの連携力は馬鹿に出来ない。矢にしたって隊列組んで順番づつ放つから攻撃が途切れない。それもリーダーのミュータントゴブリンが指揮しているからだ……」
そう言ってフルフェイス男は腕組んで考え込んだ。罠は予測出来ても対策までは思いつかないのか。
要するに入り口に立てば矢の嵐だ。だったら矢に当たっても平気な奴に頼めばいい。
そう考えると一番頑丈そうなのが四段変形ロボのE-アルマーだ。だけど彼は今谷川シェフと別行動だ。
テレパシーで呼ぶ手もあるが、万が一谷川チームが強敵と戦闘していた場合は死活問題だ。だからこの案は却下だな。
さてどうしよう。
俺たち四人はいい対処法が思いつかなくて詰んだ。
皆と相談している時に聖女さまが意外と頑丈な俺を盾にする案を出したが、それは流石に出来ねーっつーの!
いくら頑丈でも死ぬわ!
「なんとかしなさいよちびっ子」
「にゃんっ!?」
困った時のサタンちゃま頼みはやめてくれませんかねぇメリーさん。
とは言え俺には優秀な悪魔の部下がいるからな。
「分かったにゃん……」
俺は渋々ながらステータスウインドウを開いて悪魔ファイルをタップした。
で、困った時にお世話になってるいるあの二人を呼び出すことにした。しかしなぁ、またアイツに嫌味言われそうだな……。
とりあえず二人を呼び出した。
「サタン様っお呼びとあらばこのクレナ。即参上いたしました」
俺に跪く黒髪ストレートロング美女の悪魔騎士クレナだ。彼女は俺に絶対の忠誠を誓い真面目な部下だ。
一方、
「またアタシを呼びましたぁ? 好きですねぇ社長〜ケケッ♬」
「にゃっ!」
クレナと同じく黒髪ストレートロングで右目を前髪で隠した陰キャ美女の黒天使騎士の黒鴉だ。彼女はクレナとは性格が真逆で不真面目でイタズラ好きときた。
主人の俺に対してもあだ名で呼んで、舐めた態度取るけど決して裏切らない。忠実な部下だ。
周囲をキョロキョロ観察する黒鴉。呼ばれてすぐに状況確認しないと死に直結するからな。
するとある男に目が止まった。ここに男は一人しかいないけどな……。
「おっ!コンビニ強盗だ!」
「んっ……?」
『失礼だろ』無闇に指差すなよ黒鴉。しかもコンビニ強盗って冗談がドギツ過ぎて笑えない。
黒鴉の冗談は他人をキレさせる。そう言うことだよ。
「あのにゃクレニャに黒鴉っ……」
とりあえず二人に状況を身振り手振りで説明した。もう身体が幼女だから大変なんだ。
「状況はよーく分かりやした。しかし社長〜先にクレナの名を呼んだのはひいき?」
「ニャッ!」
「ケケッ♬ 冗談ですよ〜会長っ〜アタシはどっちが先に呼ばれたって気にしませんよ」
「それにゃら言うにゃよ……」
分かっていたもの、ちょっとホッとした。
「ケケッ♫ ところでサタンちゃま」
「にゃっ!」
調子に乗って部下がサタンちゃま言うな!
「真面目な話している時に、そのにゃーにゃー挟む喋り方はいかがな物かと……」
「にゃっ!? お前がアタチに物申すのにゃっ!それにコレは仕様だからにゃ『にゃ』抜きで喋るのは不可能にゃっ!」
「ケケッ♬」
笑うなっ!
「冗談ですよ社長〜ところで洞窟で身を潜めているゴブリン共を外に炙り出せばオーケーすね?」
「そうだにゃどうやって……」
「そりゃまぁ、ゴキバルサンみたいに煙で洞窟中を燻し外に出て来たところを、火災レックス先輩の火炎ブレスで丸焼きイチコロって作戦すよ。ケケッ♫」
確かに良い作戦だ。俺は言われた通り火災レックスを追加に呼び寄せた。
しかし、卑怯な作戦を考えさせたら黒鴉の右に出る者はいないな。
黒鴉は超有能キャラ




