サタンちゃまとちびっ子冒険者2
準備が整ったのでちびっ子冒険者を交えてBBQパーティーを始めた。
用意した肉は貴重な日本産の牛肉と豚肉。それとビックバードのもも肉と謎肉と野菜だ。謎肉はまぁ不安に残るが、別に食っても死にやしないだろう。
さて、肉焼こう。
「アシオン好きなだけ肉食べていいにゃ」
「タダ働きで頂いていいでありますか?」
「うん、いいにゃ」
「だったら焼き当番は自分に任せて欲しいであります!」
まだ幼いのにアシオンは俺たちに気を使って、トングで表面が焼けた肉を次々と裏返していく。
で、少しでも気を使って手伝おうとするものなら、
「手伝いは一切不用でありますっ!」
「にゃっ!」
俺の手首にアシオンのシッペが飛んでくる。
「少しは手伝わせてくれにゃ」
「駄目であります!サタンちゃまはなにもせず肉が焼けるまで見ていて欲しいであります!」
「にゃんと……」
ガンとして意見を曲げない今どき珍しい頑固な幼女だ。まぁ幼女チームに入りなら個性があって良きことだけど。
「ケケッ♬ アシオンちょっと肩叩きお願い出来るか?」
「もちろん了解であります!」
敬礼してアシオンが黒鴉の背後に回り肩を叩き始めた。全く彼女の善意を利用するんじゃないよ。
「ところでアシオンはなにしにこの街に来たにゃ?」
「それはですね……」
「『た、大変だぁぁ〜〜っ!』」
アシオンが言い掛けたところにドワーフの一人が慌てて飛び出して来た。
「どうしたにゃ?」
「はぁはぁぜいぜい……はぁはぁ……」
「にゃっ……!」
ドワーフさん急激な運動は身体に悪いですよ。
「ケケッ♬ ホレまずは飲め」
「ああ……済まぬな……グビッ……ンッ!ブホッゴホッ!」
「ケーーッケケッ♬」
激しい運動直後にコーラ《炭酸》飲ませるな黒鴉。案の定ドワーフさん吐いたろ。
それで注意しようと思ったら、黒鴉がほくそ笑んでる。ワザとだな。
「ゴホゴホッ……ウムムッ!吐いたがなんじゃっこの黒い液体はっ? 爽やかな喉越しとスパイシーな甘みは確かに美味いっ!」
ドワーフさんが目を見開きコーラのペットボトルを握った。今はそれどころじゃないから異世界人の反応はあとにして。
「で、血相変えて一体なにが起こった?」
悪ノリする黒鴉の首にヘッドロックを掛けたクレナが聞いた。
「おおうっそうじゃった。た、大変じゃよ。パ、パペット型モンスターの群れがこの街を襲撃して来たんじゃ」
「パペット型……街の男たちはなにしている?」
「そっそれが、大半の冒険者たちは武器バザールに参加していて不在じゃ」
皆んな並んでまでイベントに参加したからな。だから参加中の冒険者たちは買い物に夢中で、地震かなにかで会場が潰れない限り、テコでも動かないだろうな。
「ううむ……最悪なタイミングの時に魔物の襲撃かいや、もしかしたら手薄になるこの時を狙っていた可能性が……」
クレナの推測通りパペット型だけに、裏で操る存在がいてもおかしくない。
そうなると魔王軍の可能性が高い。
黒鴉がニヤニヤしながら俺の肩に触れた。
「社長っウチらで魔物を返り討ちにしてやりましょうよ。ケケッ!」
「そうだにゃ皆んな行けるかにゃ?」
「任すであります!」
アシオンもやる気みたいで立ちあがった。ちょっといくら冒険者でも幼女で戦えるのか心配になる。
『ここは東と西の二手に別れて討伐に向かおうゾイ』
「では、組み分けは私にお任せください」
この中で一番まともなクレナがチーム分けを考えてくれるみたいだ。
しばらく考えたあとにクレナが組み分けメンバーを発表するみたいだ。
「では私をリーダーに東方面チームのメンバーは、サタン様とワン☆ころとドワーフ殿だ」
ちゃっかりお気に入りの俺をメンバーに加えてるところが嬉しいなクレナ。
「西担当のチームリーダーにはアシオン殿に任せたい」
「マジでっ!こっ、子供に負けた?」
「馬鹿者っ!お前より遥かにアシオン殿の方が頼りになりそうだ」
「ぎゃーーっ子供以下の信用かよショック」
日頃の行いの悪さが人選に影響したな黒鴉よ。
で、西方面メンバーはリーダーにアシオン。黒鴉と竜神さまとワラちゃんの四人だ。丁度均等に人選が行き渡ったな。さて、ワラちゃんは戦力外に近いが、実質黒鴉がいれば問題ないだろう。
神さまもいるしな。
「では皆の者っ健闘を祈る」
クレナがそう言って鞘から漆黒のロングソードを引き抜くと天にかかげた。
そして俺たちは東と西に別れて魔物討伐に向かった。




