サタンちゃまと三人と一匹
『急ぎとならば、ユーの背中に乗って行くかい?』
俺の親友の戦闘ロボのE-アルマーが気を効かせて言ってきた。確かに飛行形態に変形した彼の背に乗って向かえばすぐにアンソレイの村に着くハズだ。
駆けつけるのが早ければ早い方がいい。それに時間がないので回答を迫られた。
もちろん俺の答えはイエスだ。(それは悪魔が言っちゃいけない言葉だが……)
『さあっミーの背中に乗って行くがいいっ加速形態ッ!』
ガッキン!
アルマーが戦闘機形態のジェットバードモードに変形した。毎度変形する前にカッコいい掛け声をあげるのはヒロイックロボのお約束だな。
『さあっミーの背中に乗りたまえサタンと座敷童とワン☆ころよ』
「にゃっ!」
「なんでアタイもなんだい?」
『ワンッ……いや、ワンワンニャンッ!』
まさかの指名にワラちゃんとワン☆ころが驚いてる。
確かに俺を含め二人と一匹は勇者チームと戦うメンバーだけど、戦闘力ほぼゼロのワラちゃんを連れて行っても幸運の加護意外役に立つとは思えない。
「やいやいこらっロボット!なんで無力なアタイを現場に行かせたいんだ?」
着物の袖を腕まくりしたワラちゃんが喧嘩腰の態度でアルマーに詰め寄った。どうでもいいけどなんだか江戸っ子口調だな。
今にもワラちゃんがアルマーの足に蹴りそうな雰囲気だけど、足の指剥き出しのワラジで蹴るのはやめとけ。超金属の角っぽに指が当たって逆に負傷するぞ。
『落ち着け座敷童。君を指名したのはミーが総合的に判断した結果に過ぎない。まぁそれと関係するのだが現在村を襲撃中の魔物討伐は絶好の経験値稼ぎのチャンスだ。で、座敷童の幸運の加護はレベル1 なんだろ?』
「……レベルとか意味わっかんねーよ……でも、幸運の加護をもっと高めることが出来たら嬉しいかな……」
『それは君も高める資格がある』
「ちょっと待った!レベルあげたいよっでも、弱っちーアタイがどうやって?」
『問題ない。すでにミーが問題を解く答えを導き出している』
流石超高度AIだ。どんな秀才をも凌駕する頭脳の持ち主だ。
「そ、そこまで言うのなら従ってやるわよ……」
ようやく納得したワラちゃんがアルマーの背中に乗った。しかしちょっと素直じゃないな。まるで小さなメリーだ。
「凄いにゃっアルマーは頭がいいにゃっ世界一にゃっ!」
『ノーノー!ミーよりももっと頭のいい人を知ってますからそんなに褒めて貰っては困るな』
「にゃっ!アルマー以上の?」
『ああ、ミーの産みの親は、宇宙一の頭脳を持つ並行世界の科学者っその名はスピラリス星人ボルトだ』
「にゃっ星人っ!?」
まさかアルマーの製作者が宇宙人とはな。確かに誰かが作らないと彼は存在しなかった。
しかし宇宙人とは驚きだ。確かに宇宙人に作られたと言っていたが本気で信じていなかった。てっきりアルマーは自然発生の機械人種なのかと思ってたぞ。
まぁ、その仮説の方があり得ないか……しかし異世界大陸で星人の話題が出るなんて思ってもみなかったぞ。
「聖人ってアンタを作った聖職者?」
読み方は一緒だけど意味が違うぞメリー。
『確かに彼は聖人とも言えるかもな……』
間違っていてもムキに否定せず肯定するアルマーは優しいな。本当彼がロボットってのを忘れてしまうほど人間的だ。
□ □ □
一足先に現場に到着した俺たち四人と一匹。
『あれっ二人増えてるって?』そりゃもう人員が増えたんだ。一人目が当然アルマーでもう一人がメリーだ。
決闘に参加しない彼女に来るなと断ったんだけど、言っても聞かないから仕方なく連れて来た。
しかし人数が増えたのに飛ぶスピードが変わらないアルマーは凄い。
で、現場は逃げ惑う村人と燃え盛る炎と襲撃中の魔物で大変な事態だ。
『ふうむ、相手は量産型のパペット型の魔物か……姿は見えないが、必ず誰かが隠れて人形を操っているに違いないぞ』
「それってまさか魔王軍っ?」
『ああメリー。それはあり得るから油断は禁物だ』
「オッケーアルマーっさっさと倒しましょう」
メリーが鞘から剣を抜くと両手で構えた。
やる気はいいが、ワン☆ころの経験値泥棒になるぞ。
『待てメリー。今回は座敷童とワン☆ころに経験値稼ぎをおこなって貰いたい』
それは俺も考えていた。しかしどうやって戦闘力ゼロのワラちゃんに魔物を倒させるんだ?
結構強いワン☆ころだけなら分かるんだけど……。
『問題ない。ワン☆ころのスキルを使えば全て問題解決出来る』
「あ、アンタがそこまで言うのなら……従うわよ……」
『ワンワンッニャンッ♬』
納得したワラちゃんが全てアルマーに任せることに決意した。しかしワン☆ころのスキルを使用って今俺が考えていることと同じなら、多分今夜は俺の出番はないな。
ネタバレ回避とストーリーの都合上次回はパペット魔物討伐の描写はカットして勇者との決闘回にする予定です。その分面白い展開を考えてますのでよろしく。




