サタンちゃまと漁師の依頼
三匹のイルカに報酬として、バケツ一杯分の新鮮なイワシが必要となった。
だけど、そんな時に限って手持ちがなかったので困っていた。そこに漁師の爺さんが声を掛けて来たんだ。
「新鮮なイワシなら漁協の事務所に一杯保管してある。しかしなんだ……タダとは言えなんだな……」
「ケチジジイ」
「にゃっメリーッ!」
親切に声掛けてくれた爺さんになんてこと言うんだこの赤毛のツインテールは。
非常識な彼女に呆気に取られて見ていると振り向き指を刺された。
「なによちびっ子猫みたいなリアクションして!」
「にゃっ!」
キレるとこそこじゃない。
「あのさっ善意って普通無償で行うモノじゃない?」
それは分かるが、だからと言ってタダでくれと要求するのも間違っている。
あくまで有償無償か決めるのは爺さんだよ。
案内されている道すがら、俺は先回りしてお爺さんの前に立った。
「お爺さんは魔物に困ってるにゃから、藁をも掴む思いでアタチたちに依頼したのかにゃ?」
「…………わしはおじいちゃんじゃないっ!これでも六十じゃ……」
「にゃっ!」
子供相手にジジイがキレた。
認めたくないのは分かるが……世間ではお爺さんの部類に入る年齢だな。
あと、若く見られたいのなら、そのジジイ口調やめなさいよ。
『ほっほっで、若造。その魔物とはどこじゃ?』
「はあっ? そこの角が生えた子供っ……子供がわしに若造呼ばわりしおってこの……」
今度は竜神さまにキレた。
まぁまさか、コスプレ風ちびっ子竜神さまが何千年と生きる神さまとは、初対面の人は分からないよね。
「にゃっ!こう見ても彼女は竜神さまにゃのだ」
慌てて俺がフォローした。
なにせ神さまだからね。
「竜神じゃと……こんなチンチクリンが……?」
「にゃっ!」
これ以上フォローは無理。
殺されても知らないよお爺さん。とは言え、爺さん死んだらイワシを入手出来なくなるから困るな。
まぁ、イルカの要求を無視する手もあるが、そうもいかないんだよね。
『ふぉっふぉっワシがチンチクリンとは言いよるのう子供』
「人生の先輩に向かってまだ言うかっ!」
頑固ジジイと煽りロリババアの罵り合いが永遠に続くかと思えた。
そんな中、漁港に到着した。
「あら、静かな漁港ね」
メリーが言った。
漁港は朝が盛んで昼間は閑散としている。だがそれにしても人っ子一人見当たらない。
「隣りに異世界大陸が出現して以来。日に日に魔物が現れるようになって漁師たちは恐れて漁に出れないのじゃ」
やはり海の魔物か……そうなると水着を置いて来たから困ったぞ。
「実はの、山からはゴブリンが海からは半魚人が出現して困っておるのじゃ」
挟み撃ちかよ。
それじゃ漁師は家に引き篭もるわな。
「そうなると二手に別れる必要があるわね」
「いやメリー。水着がにゃいのに海方面はどうするにゃ?」
「そりゃあ……ちびっ子が行けば?」
「にゃっ!」
確かに俺が着ているサタンドレスは防水だが、下着が濡れるのは勘弁だ。
それに二人と別行動させるのは心配だ。強いとはいえ、トリッキーな動きをする竜神さまにメリーを任せるのは正直不安だ。
ガチャを回せる俺が出来ればメリーと行動したい。しかし海方面が手薄になるな。
『海ならミー一人で充分だ』
空から飛行機形態のE-アルマーが声を掛けた。
「なっ!せ、戦闘機が喋りおった!」
『驚かせて済まないボーイよ』
「コリャッロボットまでワシを子供扱いするのかっ!」
爺さんが、ロボ形態に変形して降り立ったアルマーにキレた。
まぁ、ここにいるメリー以外俺を含めて長寿だからな。
『海の魔物はミー一人で充分だ』
「助かるにゃアルマー」
『問題ない。ミーはどんな相手でも一人で勝つ自信があるぞ。では先に行くぞ。加速形態ッ!』
ガッキィィン!
アルマーが潜水艦のサブマリンモードに変形して颯爽と海に飛び込んだ。
「これであたしたちが山方面に決まりね。で、ちびっ子分かってるわよね?」
「にゃっガチャのことかにゃメリー?」
「あったり前よ。回せるんでしょガチャ?」
あれから魔力は回復したから五十連ほど回せるかな……。
「じゃあ今から回して、出来れば超レア悪魔出しなさいよ」
「にゃっ!?」
プ、プレッシャー掛けるなメリー。
とにかく山に入る前にガチャを回すことになった。
確かにそろそろ星6レア悪魔が欲しいな。
次回久々のガチャ回。
なにが出るかは今から考える。




