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ゴルド王国

ラシが語り始めたのは世界史だった。


かって1つの大国があった、その国の王は双子でいつも喧嘩ばかりをしていた、ある日片方が『自分の方が強い、故に大国は我が治める』と、それに激怒したもう片方は『ならばどちらがより優れているか見極めようではないか。』


そうして始まった世界史に名を刻む激しい戦い。

その戦いは7日続き、ついに8日目で決着が付こうとしていた。

しかし、負けたくない片方は闇に力を求めた。


もう片方は闇に対抗すべく光を求めた。


だが、王達は双子。力は互角で大陸に大きな亀裂を生み出した。

それが今の『ゴルド海峡』と言われる場所である。


そして戦いで傷ついた王は北と西にそれぞれ逃げ、西の大陸には、光の王ゴルド・オーラン王が逃げ帰り彼らの故郷である『ゴルド国』が、北の大陸は闇の王、ゴルド・ドーラン王が逃げその力で築いた国『ドーラン国』別名『魔王国』がある。


「ですがこのお話はうん百年前のお話、今は両国とも良い関係を築いております、魔王国とはいいますが、中身は魔族の国というだけで特に世界征服を目論んでいたりなどはありませんよ。」


「なるほど、では今は戦争などは無い時代なのですね。」


「小さな領土の小競り合いなどは有りますが、昔の様な大きな戦争なんてのは無くなりました。」


この世界はとても平和、ケンジの記憶にあるファンタジーの世界に比べるととても平和だと言うことがわかる。


少し安堵した、正直なところ国同士のいざこざや、戦などがあると真っ先にダメージを受けるイメージが食糧なのだ。


士気に直接影響するし、畑に火を放たれるだけで国としたら物凄いダメージだ、腹が減っては戦はできぬ。


この世界が平和で何よりだ。


「そしてですね、西はゴルド国、北は魔王国、東と南にはまた違う国があります。」


東はゴルド海峡を越え、険しい山を越えた先には大密林が広がっており、いわばアマゾンがある。


そこには原住民やエルフなどがいるとの噂。


「エルフがいるんですか!?」


「そうですね、近年では王都でも見かけるようになりましたね、なんでも山脈を掘りトンネルを作るそうです、このトンネルが出来たらますます交易が捗ると商人さんがおっしゃってましたよ。」


(なるほどエルフか、せっかくならお目に掛かりたいな。)



「質問!」


「はいどうぞ!」


このシスター、実にノリが良い。


「エルフとおっしゃいましたが、この世界には他にどの様な種族が居るのですか?」


今健二の脳内は農業をしたいが7割、異種族を見たい、交流したいが3割を占める。


種族によっては5割を超えるかもしれない。


「そうですね、今現在私が聞いた話、出会った人とかだと、ラミア、オーガ、獣人種に魚人種、魔族とかですかね、あとは存在が確認されてませんが、書物にはドラゴン族、魔神族、天使族などが記されてます。」


「おぉ、結構いますね...」


「まぁ、伝説上の種族ですのでほぼ信仰の対象として扱われます、人は天使族信者が多く、逆に魔族や獣人族など異人種が信仰してるのは魔神族やドラゴン族と聞きますね。」


(信仰が存在するのか...トラブルに巻き込まれるのは勘弁だな。あとはやはりファンタジー王道の異種族とはぜひ会ってみたいな。)


その後も小一時間に渡り歴史と地理の説明をざっと受けた。

要するとこうだ。

・北 魔王国領土、現在ゴルド国とは友好国


・西 ゴルド国、ケンジ滞在中の領土。魔王国と友好国


・東 ジュゲ大山脈、ジュゲ大密林、エルフや獣人族が暮らす密林同盟国


・南 グランシェル海、幾つも島国があり様々な魚が採れる。


・東西を分裂する海峡 ゴルド海峡、激しい王の争い後で出来た海峡


・1G(グラ)=約¥100

・100G=約¥10,000=1LG(ログラ)

と言った方で大雑把ではあるがケンジは紙まとめた、昔ながらの羊皮紙に羽根ペンにイカ墨などから作られたものだ。


ケンジは丁寧に紙を折りたたみ胸ポケットに入れた。


「ふふふっ、久々に授業をしました、この村の子ども達にはあらかた教えまして最近はあまり出来てなかったもので...」


「いえいえ、こんな見ず知らずの放浪者に親切にしていただいてとても感謝しております!ありがとうございます。」


「また、何か困りごとがありましたら是非教会をお尋ね下さい、アストログロブ様は迷う魂を導かれるお方、きっと貴方様の道を示してくださいますでしょう。」


("迷う魂を導く"か、全くその通りだなヨヴィさんの仕事。)


「はい、是非他の教会でも祈らせていただきたく思います。ほんとうにありがとうございました。」


ケンジは教会を後にある場所に向かった


「さて、まずはお金を稼がないといけないな。確か村の真ん中に建物あったよな。」


向かうは冒険者が集う建物、そう無一文のケンジは何としても金を稼がねばならないのであった。


◇ ◇ ◇ ◇


「くそ〜〜、異世界来ても草むしりするハメになるとはな〜。」


今、ケンジは冒険者ギルド周辺の花壇の草むしりしていた。

時は数刻前にさかのぼる。


「ここかぁ。小さな村だけど、割と良い建物だな。」


目の前に建つ建物は、壁は白い煉瓦で出来ており、屋根もこれまた土板、全体的にしっかりとした作りの2階建の大きな建物。


玄関は木を金属で補強した頑丈な両開きドア、中は石畳のしっかりとした床、石造の家なので中は涼しい。


2階までは中央に大きな階段があり、途中で左右に分かれて2階部分へと繋がっている。


2階は宿泊施設や会議室などになっているらしい、1階は入り口入ってすぐ右に銀行の様な受付があり、受付嬢との間には鉄格子がある。

やはり冒険者は血の気が多い人が多いのだろうか?


左手には丸テーブルが4つほど、それぞれに椅子も4つ、簡易なDIYで作れそうな代物だ。


奥にはカウンターがあり、食事の提供などもある。


そして一番目立つのは階段横にある大きな提示板、誰がどうみてもクエストボードである。


「おぉ、すごい。まんまファンタジーの世界だ。」


しかし思っていたのと違うのは、かなり人が少ない事だ。

いや、人は居る、居るのだがどう見ても地元民が多く冒険者らしき姿のものは5〜6人しか見えない。


(おかしいな、市場ではもう少し冒険者の姿は見えたのだが。)


とりあえず突っ立っているだけでは何も起きないので受付に向かう。

「すみませ〜ん...」


「あっ、はい!ご用は何でしょう!?」

よほど暇なのか頬杖をついて本を読んでいた受付嬢が慌てふためいて対応する。


金髪のショートボブで可愛らしい見た目をしている、目は青く、ヨーロッパ系の顔に似ている。

緑色と黄色のコートを着ていて、左胸に小さなメダルがついており、そのメダルは正面玄関に飾ってあった紋章と同じで

ドラゴンが描かれておりその背景に斧と剣がクロスしてある紋章だ。


「あ、え〜と、仕事を探してまして...」


「お仕事?クエストなどでは無く?」


「そうですね、実は私、記憶喪失でして、お手伝いでも何でも良いので、お金を稼ぎたくて...冒険者登録?とかはするつもり無いのですが...」


「あら、それはお気の毒にまだお若いのに大変ですね。そうですね、ご身分を証明するものがなければ登録は出来ませんのでクエストは無理ですね。」


冒険者登録は

・身分証明

・技術書(いわゆる資格)

・職業(魔術師や剣士など)

このいずれかの証明、提出が義務となる。

ケンジはこのいずれも持っていないためにどのみち登録は不可能であった。


「ちょっと上司に聞いてきます。」


「あっ、ありがとうございます。」


何だか申し訳ないが、此処で少しでもお金が得れるなら今後の方針もある程度見えてくるだろうと思っていた。


「お待たせしました。」


「あ、はい。」


受付嬢の声の方を見るとそこには背の高い女性がいた。

180cm近い背にすこしとんがった耳、髪は赤褐色、肌は濃いグレーのエルフだった。顔立ちはとても整っており、ヨヴィが言ってた通りとても顔面偏差値が高い世界のようだ。


(ダークエルフ?普通に人間社会に異種族いるんだ。)


「お待たせした、仕事を探していると言ったね。何が出来る?」


「えっと、手先が器用で、記憶喪失ですけど野菜や農業の知識は断片的にあります。」


「ほぅ、ではちょうど良いのがある、報酬は100Gだ。」


(100G、¥10,000くらいかだいぶいいな。)

「それはどの様な内容ですか?」


「この建物周辺の花壇の手入れだ。」


◇ ◇ ◇ ◇


「どうかな?そろそろ日が暮れるが。」


「リガさん性格悪いですよ、そんなんだからこんな田舎のギルドに飛ばされるんですよ?」


「ふん、田舎の方がアホが少なくて過ごしやすい、ちょうどよい。」


事務所で依頼書のまとめをしているのは

【リガ・アルヘオ】ギルドの事務長を務めている。


「けど、だいぶ時間が経ちますね、様子を見に行きますか。」

そう提案するのは

【ミリア・モートン】ギルド唯一の受付嬢である。


2人は椅子から立ち上がり、外を目指す。


この村のギルドは5人で成り立っていた、ギルドマスター、バーテンダー、クエスト職員、そしてリガとミリアである。


今は訳あって極小規模のギルドだが、これから人が増えれば増やしたいと思っていた。


そんな時に来たのがケンジだ、ちょうど花壇や清掃の担当が欲しいと思っていた所だったのだ、草むしりが刻限までに終わっていたら雇おうと相談していたのだ。


「たかが草むしり、されど草むしりだ。やはりギルドの見た目は良くしていかねばならん、ちょうど良い時に来てくれたものだ、畑仕事の覚えがあるものなら手入れもしてくれるだろう。」


「けど、記憶喪失らしいです。大変ですよね〜。」


「ふん、疑わしい。そう上手いこと知識が残った状態での記憶喪失は珍しい、事故でなったなら尚更だ。」


「それはつまり?」


「魔法、もしくは呪いや何か人為的な物かもしらん。私の様な山エルフはあまり魔法など詳しく無いが、その可能性は充分にある。」


リガはどうもそこが引っかかる、これといって不思議な気配もしない男が、無一文で記憶喪失といった、しかし身なりがどうもおかしい。


しっかりと身についた筋肉、無一文なのになぜ痩せて無い?

そして清潔感のある髪と服。

言葉遣いもおかしな点は無い、おかしく無いからおかしい。


「とりあえず、全て鵜呑みにするのは軽率だろうな。」


「なるほど、了解しました。」


2人は裏口から出て、正面玄関に向かう。


花壇は4つ、3m×20mが建物を囲む様に並んでる、そこには花やハーブなどを植えてあったらしいが、今ではハーブが花壇の隅まで侵略し、花は無くなっていた。


はずだった。


「ど、どうなっている...?」


目が点になっているリガ達が目撃したのは。


白色の小さな花を咲かせる低木だった、そう花木が植わってあったのだ。


そして急いで正面玄関に行くと、今度は40cm間隔で植木鉢が置かれており、そこには赤い垂れた花があった。


そしてその植木鉢の間には、また白い花が咲いていた。

「あ、ちょうど今終わりましたよ。」


正面玄関奥の花壇の前でしゃがんでいた人物が立ち上がりこちらに近づいてきた。

ケンジである。


「おい!これはどういう事だ!なぜ花が咲いている!あとギルド横の花壇には木が植っていたぞ!」


 「あっ、すみません!やっぱり確認を取るべきでしたでしょうか!?、受付に誰も居なかったですし、かってに定植してしまい申し訳無いです。」


(定植?全て手作業で植えたのかしら?この面積を1人で?そしてこの草花はどこから...?)


「あの...お花はどこから?」

とりあえずミリアは一番の疑問を尋ねる。


「えと、村に来るまでの森の入り口付近で偶然見かけた自然の...おそらく【モクセイ】って花木ですね、裏口にいたおじさんに台車をお借りして引いてきました。あと裏手にあるシャベルとスコップもお借りしました。」


「おい待て!!今誰からものを借りたと言った!?」


「え、裏口にいたおじさん...」


「バカ!おじさんじゃ無い!その方はおそらくギルドマスターだ!!」


「っ、えぇっ!!!」


「オイ!失礼な事言ったんじゃ無いだろうな!ギルドマスターは国から派遣された元冒険者であり!現段階でこの村の村長代理でもあるんだぞ!」


「そ、そんな!失礼な事なんて何も!!ただ、職員の方ってのは何と無くわかったので

『花壇を新しくしたいので、この台車と道具お借りしても?』

と、聞いたら

『おぉ!困ってたんだよ!!何でも使ってくれ!なんなら買ってきてくれても良いよ、これを見せたら後払いでも売ってくれると思うから!無くさないでよ?』

とか言ってバッジ...ですかね、貰いまして。

花と植木鉢はお店で買いました、後でギルドに金銭受け取りに来るとの事です。」


「まぁ、ギルマスがそう言うなら良いが...バッジとはなんだ?見せてみろ。」


「はい、ご本人にお返ししようと思いましたが、今お渡ししておきますね。」


ケンジはそう言うと胸ポケットから金色のメダルの様な物を取り出した。

そこには大きな紋章が刻まれていた。


「ぎっ!!!」

リガから変な音が出た


「それっ!ギルドマスター証じゃ無いですか!!!!!???」

ミリアは大きく叫んだ、あまりに急に叫ぶのでびっくりする。


「ちょっ、またあの人いい加減なことしてますよ!!」


「もう疲れてきた、あのおっさんマジでマスターとしての自覚が足らないわ。」


(さっき僕がおじさん呼ばわりしたの注意したのに、この人おっさん呼びしてるじゃん。)


「と、とりあえず、返却を求めます!!」


「あっ、ハイ!ありがとうございました。」


ミリアはギルドマスター証なるものを、大切にハンカチに包み、サイドポーチにしまった。


「...で?お前は草むしりのみならず、花や木を植えてくれたのだな?」


「はい、そうです、花は植木鉢が【シクラメン】その間の白い花が【アリッサム】って奴ですね(この世界でも同じ名前か分からないけどね。)今から涼しくなるので冬の花を植えました。」


「うーむ、そうだな。とりあえずは依頼達成ということにしよう。ありがとう。」


「ほんとですか!ありがとうございます!!」


正式な手続きを踏んではないが、異世界初のクエスト完了になる。

「これはあれか?手入れはどうするんだ?私どもは事務仕事や村の警備などもあるんでな、手入れをしてくれる優秀な庭師がいればなぁ。」


「リガさんっ、露骨すぎますよ...!!!」


高身長であるリガは見下ろす様な形でケンジを見つめる。


「よ、宜しければ定期的にお手入れや、庭系のお仕事とかを...」


「む?良いのか?しかし身分が証明できない者をギルド員として雇うわけにはいかないしなぁ...悪いが、一般よりだいぶ安い給料で...」


「いいんじゃない?」


会話に突然割って入ってきた人物は正面玄関から現れた。


「「「ギルドマスター!!」」」


「ふふっ、そんな一斉に呼ばれると照れるなぁ。」


どこか抜けてる様な話し方をするのはケンジが裏口で声を掛けた人物そのものだった。


白髪に伸ばして三つ編みにした白髭、歳は70後半、にしてはとても若いオーラを感じる。

背筋も伸びてるし、顔にシワがあるもののまだハリがある。


「そのメダルは純金製だし、換金したら1000LGは下らないよ。それを持ち去らずに返しに来たんだ、私は信用しよう。」


「せ、1000LG…!!!」


(1LGが1万だから、1000万円かっ!今更ながら汗が出てきた...)


「あ、あの!ギルドマスターとは存ぜず失礼なことを致しました!申し訳ありませんでした!!」

ケンジは深々と頭を下げた


「いやいや君を試しただけさ、仕事をこなして、依頼者の信用も得た。これは立派な事だよ。ぜひ冒険者協会、このギルドで働いてほしい。」


「言っときますけど、先月中に職員補給要請を出し損なったギルマスが人手不足の原因ですからね。美談で終わらせないでくださいよ。」


(偉いのか、偉くないのか。わからないな、取り敢えずは身を寄せれる場所は出来たかな。だいぶ幸先良いな。)


「えー、ゴホン。ではケンジと言ったな、まだ正式な職員としては認めないが、臨時職員として雇わせていただこう、君の管轄は『現地職員』として働いてもらおう。改めて自己紹介だ。

私はリガ、リガ・アルヘオと言う、種族は山エルフだ、事務長をしている。」


「では次私!私はミリア・モートンと言います、ヒューマンです!受付嬢をしてますので!わからない事あればなんでも聞いてください!」


「では私、ギルドマスター、【ダロラン・ポート】といいます。種族はヒューマンです。基本的には村の祭事や管理を行ってるのでどちらかと言うと村長ポジションかな?わからない事あればリガくんに聞いてくれたまえ、彼女がほとんどの書類をまとめているからね。」


「本来は私の仕事の3分の1は貴方の仕事です。」

「あとは、バーテンダーの【ギジ】さんとクエスト職員の【マッシ】くんが居るよ。また出会ったら挨拶しとくと良い。」


「はい、分かりました。 あ、自分の自己紹介!名前は、ケンジと言います!記憶喪失で名前と以前の仕事の知識しか無いのでご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします。」


パチパチパチパチと小さな拍手が起こる


「では早速で悪いが、君の部屋を紹介しよう、ついてきたまえ。」



ギルドの2階は居住区となっており、冒険者の宿泊や職員の寝泊まりなどに使われる。

部屋は6畳ほどの広さで、簡単なベッドとタンスが一つ、窓がついたシンプルな部屋だ。


「ここが君の部屋だ、好きに使うと良い。食事は下のギジさんに頼みたまえ、代金は給料差し引きだ。あ、そういえば花壇の件、報酬がまだだな、明日の朝渡そう。」


「ありがとうございます、明日からまたよろしくお願いします。」


「うむ、では今日はゆっくり休みたまえ。」


パタン


「異世界か...」


ケンジは静かになった部屋でベッドに腰掛けながらそうつぶやいた。

自分の掌を見ながら今日を振り返る。


最初は草抜きをしようと思っていた、花も何も植わっていない花壇は雑草が生い茂っていたからだ、それは良く見た雑草で根が細かく生えるタイプのめんどくさいやつだった。

とりあえずは草を引っこ抜こうと引っ張る。


スルン

まるで土が砂になったかの様にスムーズに抜けたのだ。


「!?えっ?なんだこれ!?」


土を触るが、何の変哲もない硬い土だ、普通は放置した雑草はひげの様な根が生え、土を掴んで離さない様になっている。

それなのに多少の土が付いてるだけで、スムーズに綺麗に抜けたのだ。


(もしかして...異世界チートって奴?)


天使ヨヴィに話を聞きたいところだが、あいにく協会などでないと会話ができない。


(100pt使って転生したから、余ったptで何かスキルを得た可能性が高いよな。)


そんな事を考えながらスルスルと草を抜いていく。

2〜3株まとめて引き抜いても変わらず引き抜ける、それどころか太い茎の草もなんなく抜ける。


(これ、面白いな。)


こうなったらもう止まらない、一旦乗った勢いは止まらずあっという間にギルド周囲の雑草を抜き取った。


(除草したらしたで、花壇が寂しいな、何か植えるか。)


何も植わってない花壇ほど、悲しいものはない、ケンジはこの世界にも前の世界によく似た花があることは市場で見た。


名前まで同じかわからないが良く役所の花壇などに植わってあった花や木と見た目は一緒だ、ならギルドに植えても問題ないだろうと、ケンジはギルドの裏口に回った。


そこで出会うはギルドマスター、後に判明したが仕事のサボりをしていたところだったらしい。


その後、マスター証を預かり町に繰り出す、花屋で花を株ごと買い、ついでに植木鉢も買う。


この世界でも焼き物は存在し、柄や絵、色を付けたりなど割とバリエーションがあった、今回購入したのは6号ほど(直径18cm)の植木鉢だ、ここに【シクラメン】を植え、間に【アリッサム】を植える、シクラメンは9〜10月アリッサムは10〜4月に花を咲かせるのでちょうど良いと思ったのだ。


白と赤(どちらかと言うとピンク)の花なので見た目も良い。

あとの花壇には【モクセイ】いわゆる金木犀だ、常緑植物なので季節問わず緑色の葉をつけるので目の保養にもなる。


花も可愛く白や黄色などがあり、とても強い甘い香りがする。


育ちすぎると大木に成りかねないが、等間隔に植えたし、良いことに建物横(植えた所)には窓も出入り口もないただの壁なので最悪大きくなっても良いと思った。


(今考えると、だいぶ後先考えてない植え方しちゃったな。)


考え事をしながらベッドに横になっていると瞼が重くなってゆき

異世界転生初日はこうして終えた。





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