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教会の先生

健二は考えていた、主に今後のことについてである。


生活はどうするのか、そもそも住むところやお金、食事はどうするか、さらには農業をしたいとは言ったが農業で一番重要なのは土地だ、この世界、国の政治や風習など一切わからないのだ。最悪野垂れ死ぬ可能性もある。


「取り敢えずは情報が欲しいよな、人に出会えるのが一番いい。」


そんな事を考えながら道を歩いていると、道を外れたところにある岩から白い煙が上がっている。


(お?人が居るな。)


ここで肝心なのは人が善人なのか、はたまた悪人なのかによる。

善人なら商人や旅人などかも知れないが、後者の場合、賊や魔物の可能性もある。


(この周囲の治安もわからんし、下手に触らない事に越したことは無いな。リスクがデカイ)


健二はそのまま道沿いに進むことにした、近くで煙を立てれるという事は、少なくとも休める程の治安の良さという事だろうと判断した。

あと、火を使えるほどの知的生物が近くにいるのを確認出来たため人が居ることに安堵したも半分に、魔物の存在もあるかも知れない恐怖が半分だ。


健二は気がついていないかも知れないが、まだ転生する際にいた部屋、そう精神安定魔法がかかったあの部屋の効果が、常に発動している事に気がついていないのだ。


ここまで冷静に周囲位の状況を見極め、今後の目標を直ぐに考える程の心はもともと健二には無い、この落ち着き様は転生した者の特権なのだ。


そうこうしているうちに、遠くに村が見えてきた。


「ほっ、良かった。取り敢えずは人に会えそうだ。」


少し早歩きになった健二は村を目指して道を歩くのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


村はわりかし大きな規模の村だった、建物は木造で屋根は綺麗に瓦の様な土板が敷かれており、この地域の特徴なのだろうか白の屋根色をしていた。


男の村人達の格好は健二とそう大差なく、女は革で出来たドレスを着ている者もいた。


これといって昔の地球の文化と差がない様に思えたが、違う点がいくつも見つかった。


まず村人の他に武具を身に付けた者が歩いていたのだ、西洋剣に先端に宝石のついた杖、身体には金属プレート、金属製の盾や、短剣と弓矢を持つ狩人らしき人物も居た、いわゆる冒険者という格好だ。


(杖か、魔法がある世界だな。それに剣や盾、いよいよ本格的にゲームの様な世界だな。)


健二も昔はRPG系のゲームなどをしていたのでファンタジーの知識はある。

しかし現に目の当たりにすると恐ろしい物である、剣には傷や凹み、鎧にも同様に傷。


彼らの顔なども傷が見られた。


(普通に死ぬ様な世界かも知れないな...)


今の時点で健二の心の中では恐怖が7割、ワクワクが2割、不安が1割となっていた。


(取り敢えず冒険者などとの接触は避けよう、折角貰った命だ、危険な事は避けたい。)


村で一番大きな建物、おそらく冒険者のなんらかの建物だろう、周りにいる人々の姿を見たらなんとなくわかるし、看板に思いっきり剣と盾を構えた人物が彫られている。

健二は建物とは逆の道を歩き出した。


しばらくいくと市場の様に色々なものを売っている通りに出た、賑わいがあるかと言われるとそうではなく、村人が作った農産物や手芸品などが売られていた。


「お兄さん、どうだい?ポテト、安いよ!」


(お、ジャガイモだ、だいぶ小ぶりで赤いな...そっか原種になるのか)


そう、品種改良などを行なっていないジャガイモは小ぶりになり、ジャガイモの原種は赤とされている。


「なやみますね、いくらですか?」


「5個でたったの3グラだよ!」


「なるほど、ちょっと買いたい物があるのでそれ買って余裕が有ればまた来ますね。」


「あいよ!また来てくれよな!」


ジャガイモ屋のおっちゃんに愛想よく断りを入れて市場の通りをブラブラ歩き始める。


(グラ、か。この世界の通貨っぽいな、ジャガイモ5個で3グラ、300円くらいか?1グラ/100円か?わかりやすくていいな。)


意識して市場を見てみると商品に値札が付いており5Gなどと値段が書いてあるのがわかる。


中にはカボチャの様な物、なすびや唐辛子など地球でも見たことのある野菜が並んでいた。


(つまり今暦は8〜9月かな?にしてはだいぶ涼しいからここら辺は北の地か。)


生産物や気温などから地域の特徴や暦を大方予想した健二はある重要なことに気がつく。


(そういえば、言葉、なんの問題もなかったな、ヨヴィさんが現地語かなんか言ってたのはこれか。感謝しなくちゃな。)


現地語、このスキルは通常の翻訳スキルとは違い、微妙なニュアンスまでも完璧に変換してくれるスキルだ、例えば『結構です』の様に日本語ならその場の雰囲気で分かりそうな言葉は、他国の人からすると分からない事がある。


その曖昧な言葉もしっかり相手に伝わる様に変換してくれるのだ。


(取り敢えずなんとか流せたけど、お金を手に入れないといけないな、何か稼ぐか、物々交換とかが安定かな。最悪の場合は冒険者で採取系の依頼があるだろう。)


30mほど市場を進むと終わりが見えた、そこまで大きな市場ではなく、村で採れたものを村人が売る。


ただそれだけである、商人が間に入るわけでもないので自由に行なっており規模も小さい。


「あれは......」


その道を過ぎ、曲がり角の奥に見えたのは小さな教会であった、なぜすぐにわかったかと思うと、修道女が庭先を箒で履いていたからだ。


(そうゆえばヨヴィさんが教会とかで強く祈れば少し会話できるとか言ってたな。)


取り敢えずは教会で祈るもありだなと、足を運ぶ。

「こんにちは」


「あら、こんにちはお祈りですか?」


「えぇ、中に入ってもよろしいでしょうか?」


「とうぞ!どうぞ!誰も拒みませんよ。」


修道女は扉を開けて中に入る様に促した。


(にしても、やはりこの世界は本当に美男美女が多いな、先程の修道女さんもすごい綺麗だったし、これが異世界クオリティか。)


教会は小さく4人が座れる長机が4つ、祭壇が一つ。

そして壁には大きな天使の像。


(見たことあるな...心なしかヨヴィさんに似てる気もするけど。)

「この天使像は...」


「はぃ!こちらの天使像は大天使、アストログロブ・コーネリア・ヨヴィ様のお姿を模した物になります!!」


(ヨヴィさんのフルネーム長いな。)


「この像は過去に一度だけ聖地・センラルを作りし時に下界されし時に記された聖画を元に作成されております!」


「なるほど、ではお祈りを...」


健二はその場で祈りのポーズをとり、頭の中でヨヴィと念話する様に語りかける。


(もしもし、健二です。ヨヴィさんおられますか?)


⦅なんで電話みたいな感じなんですか?⦆


(あ、繋がった。)


⦅あ、繋がった。じゃ無いんですよ、何用ですか?今立て込んでまして、少し忙しいんですよ、あっ、(こことここに記入を、そうそう後子孫の名前を、はい。)あっ、で何ですか?⦆


(お手続き中でしたか、いえ教会を見かけましたので無事転生できたのと、感謝の意を伝えようと思いまして。)


⦅あぁ、良いんですよ!こちらは仕事ですし!ご満足頂けてる様で何よりです!、あっ、ちょっと待ってくださいね。(そうですね、10ptでしたらそのくらいは出来ますよ。)すみませんね。⦆


(いえ、お忙しい様なので私はここら辺で失礼します。また困りましたら質問あるかも知れませんので、その時はまた...)


⦅あぁ、そうですね!また困りましたら今回の様に話しかけてください!基本的に私の像があるところなら出来ますので!ではではこれで...⦆


(はい、改めてありがとうございました。)


話し終えた健二はゆっくりと目を開け立ち上がった。


「熱心な方なのですね、ここまで熱心に祈る方は久方ぶりにお見えになりましたね。」


「あ、長い時間すみません。」


「いえいえ!小さな村には信者の方も少なく、冠婚葬祭や行事ごとでしかお仕事がないので...」


(この人はヨヴィさんの信者だし多少は信頼出来るかもな)


「あの、ご相談がありまして。」


「はい!何でしょう!?もうぶっちゃけ暇で暇で!同じアストログロブ様を信仰する者として何でもご相談して下さい!」


(そっか、俺も信者と言う事になるのか、今後も信者として名乗るか。)


「実は僕、記憶喪失でして、どこから来たのか、この国、いや、この世界の事などさっぱりわからないのです。」


「まぁ!!なんと!つまり此処に来られたのは運命ですね!!私、名前をラシ・ロロラーナと言います!ラシとお呼びください!」


「あ、僕はナカヤマ・ケンジで、す。...はい。」


(しまった、フルネームを言っちゃった!性を持ってるのは貴族とかだけだったりして…。)


「ケンジ様ですね!私!子供達にお勉強などを教えてる事がありまして!是非よろしければこの世の成り立ちや歴史、世界史などお話致しましょう!さ!お座りになって下さい!」


(…大丈夫かな。)


有無を言わさず長椅子に座らせられた後にラシは祭壇の前に立ち、分厚い本をもち語り始めた...



次話、少し長いです。

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