占い師の来訪
朝、雨が降るアケラ村には緊張した空気が漂っている。
今日、魔王国側から重鎮である『占い師』がやってくるのだ、大戦前から魔王国側の情報収集を行っていた教会ですらその存在を確認できなかった人物という事もありセティとモントは非常にピリピリしている。
「なんだか大ごとになってますね。」
「その大ごとの元がお前さんだよ。」
朝食を食べながらジギと会話をするケンジ
「上層部で何話してるか知らねえし知りたくもないが、お前さんが話の軸だという事は何となくわかる。
俺はここで料理と酒を振舞ってるだけだから巻き込まないでくれよな。」
「もちろん、自分も平穏な暮らしが望みですので周りに迷惑を掛けない様に心がけてます。」
朝食の硬いパンを頬張りながら苦笑いをする。
「そうだ、昨日冒険者にお前さんが考えた料理出したぞ。」
「いやいや、自分が考えたわけじゃないので、ちょっとした事をお教えしただけです、それを調理したのはジギさんですので。」
「だが水やりに使えないあの水が料理に使えるとはな、今まで仕入れていた硬い肉が驚くほどやわらかくなった時は驚いた、更にワインも似たような使い方ができるとはな。」
「臭みも取れるので一石二鳥ですよね。」
「何?イッセキ?」
「あ、いや、それよりも冒険者は何と言ってました?」
「かなり好評だったぞ、知ってるとは思うが青銅の短剣達に振舞った。」
「あの方たちですか、それは良かった。
これで話題になれば新しいアケラ村の名物になればいいですね。」
「そうなれば願ったり叶ったりだな。」
その時ギルドの扉が開いた。
「ケンジさん!!本当に雨が降りましたな!!」
入ってきたのはゴベさん。
「えぇ、予定通り降ってくれてありがたいです。」
「これは大発見なんじゃないですか?雨を予想できるなんて!!まぁわしらが田舎民だから都会では常識かもしれませんが。」
興奮した様子で席に着き酒を頼むゴベさん。
「そんな珍しい事じゃないかと思いますが、それよりゴベさん はどうしてこちらに?めずらしいですね。」
「雨だから何もすることがねえのよ、暇だから久しぶりにギルドで酒でも飲もうかなと。」
「あぁなるほど、確かにこの雨じゃ何もすることはありませんね、ジャガイモはしばらくは水やりなどをすればよいですし。」
「ケンジさんは今日ご予定は?」
「大事な会議がありますね。」
「なるほど、お忙しいですな。」
ギルド前や村の中には掲示板があり、ダロランからのお知らせといった名目で今回の魔王国と取引する旨の事は知らせてある。
村人はほぼ全員がその掲示板を見ているとの事なのでゴベももちろん知っているだろう。
2階から誰かが下りてくる音がする
階段上からアケラが顔を出した。
「ケンジ、飯食ってるところ悪いが食べ終わったら私の部屋に来てくれ、今日の会議で話す事を決めよう。」
「わかりました。」
嚙んでいたパンを薄めたワインで流し込み支度をした。
「では。」
ゴベさんに一礼して席を外す。
手を振りながらワインをあおるゴベさん、奥さんに何も文句を言われないことを祈るばかりである
◇ ◇ ◇ ◇
「すまないね朝から。」
「いえ、大丈夫です。」
「さて本日の会議だが、基本的には何もしゃべらなくていい。」
「え?」
「言い方が悪くなって申し訳ないが、今回の君は『餌』だ、主に話し合うのはモントさんやセティさんとなるだろう。」
「まぁ、それはわかりますけど。」
「あと向こうが何を把握してるかわからないのでっていうのが一番大きな理由かな。
ゆえに下手にこちら側から話すと情報を渡すことになる。」
「確かに、どこから情報が漏れた分からないって言ってましたもんね。」
「そうそう、あとめんどくさいから。」
「え?」
「恐らくモントさんやセティさんが探りを入れながら話すだろうからね、そうなると貴族同士の会話みたいにややこしいんだよ、お世辞だの皮肉だの。」
ケンジの脳内になんとなく貴族がお茶しながらバチバチに火花を散らす光景が広がった。
情報戦になると口が上手くて頭の回転が速いものが勝つ、そこにケンジなんかが入ると白服達の足を引っ張る事になるだろう。
「確かにややこしそうですね。」
「私もその貴族のはしくれだと思うとうんざりするよ、今後いろんなところに呼ばれる事もあるだろうから。」
「はははっ。」
そんな会話をしているとノックが響く
「はい、どなた?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ない、ゴルド王国北方治安維持隊隊長、ベリットと申します。」
「ベリット!?入れ入れ!!!」
「失礼します!」
扉を開けるとゴルド王国に入国する際にお世話になったベリットさんが立っていた。
「ベリット!!来てたのか!!!!!」
「まさか本当に領主になっているとはな。」
2人は近づき固い握手を交わす。
「早かったな、てっきり暖かくなってからかと思った。」
「それだと遅いだろ、副団長に許可貰って早めに来た。
どうだ?なにか困り事はないか?」
「いくつもある、だけどタイミングが悪すぎる。
詳しい話をしよう。」
アケラはベリットに最近のアケラ村の出来事を事細かに伝えた。
「少し情報を整理させてくれ、まずお前が領主になったところまでは知っている。
だがその後だ、村に魔族が来た?しかも高位の名前持ちの魔族…オオカミの事なぞ霞むレベルの話じゃないか!!」
「その件についても協力はお願いしたい、魔族に関してはベリットは介入しないでほしい。
今現在教会の白服2名が事に当たっている、騎士団は森の調査をうちの事務局長と一緒に取り組んでくれ。」
一度に大量の情報を流し込まれたベリットは少し混乱しながらも冷静に話しをまとめていく。
アケラはベリットと同時期に入団した同期だ、彼の性格も分かっている。
「そうだな、ここで我々騎士団が魔族問題に介入するのは足手まといだ、我々の仕事でもある治安維持の為に森の調査を引き受けよう。」
「さすがベリットだな、臨機応変で話が早い。」
「ところでその事務局長やらは戦闘の方は?せめて自衛できるくらいの戦闘力は欲しいが。
こちらも新人が多くてな、あまり護衛に回せる人数が…。」
「身長180cm山エルフ、筋肉質な体に鋼鉄の弓。」
「ほう、何ともたくましい事務員だな。」
「名前はリガ・アルヘオ。」
「リガ・アルヘオ!?こんなところで働いているのか!!
しかもまたギルド職員を!!??」
「自分も最初は驚いたよ、我々がまだ入りたての頃に皆を騒がせていたあの人物と一緒に仕事ができるなんてな。」
「これは面白い、うちの隊員にも何名か当時の事を覚えてるやつがいるだろう、驚く顔が目に浮かぶよ。」
思い出話に入り浸る2人を前に浮くケンジ、基本的にこの世界にきてからこういった風に話しに着いていけないことが多々あるのでオロオロしてしまう。
「あぁ、すまないすまない、置いてけぼりしてしまったね。
じゃあベリットまたそちらにリガを向かわせるよ、村のはずれにキャンプを?」
「あぁそうだ、またよろしく頼む。」
部屋から出る前にケンジと軽い会話があった
「少年も元気そうだな。」
「王都ではお世話になりました。」
「こちらも大変そうだな、しばらくは滞在してるから何かあったら騎士団員に伝えてくれ、ギルド職員からの伝言なら間違いなく私に届くだろう。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「いやいや構わないよ、それよりアケラを頼んだぞ。」
最後の方は小さな声でケンジにだけ伝わるように話した。
「では失礼する。」
ベリットは重たい鎧をがしゃがしゃ鳴らしながら退室していった。
「いやはや、こうもいろいろなことが重なると疲れるな、ケンジもすまんないろいろと巻き込んでしまって。」
「自分は農業ができるだけでも幸せなんで。」
「そうだ、農園の方はどうだ?」
「いい感じだと思いますよ、今の雨の強さだと土が流れてしまうって事もないですし、この調子だと100日程あれば収穫出来ると思います。」
「いいね、そのことも会談で話そうか。」
「今回の会談は平和的に行きますかね。」
「平和的にさせるんだよ、魔族との対立は避けなければならない。
だが魔族の下につくつもりもない、あくまで平等な立場だね。」
「争いごとは嫌ですもんね。」
「そうだな、さ、会談に必要な書類をまとめよう。」
「そういえば今更ですけど、義手の方はかなり慣れました?」
アケラの左手には銀色に光る義手が装着されており、まるで本物の手のように器用に紙をまとめていた。
「あぁ、最初のうちは違和感が凄かったが『武器』として意識したらかなり動かしやすくはなったかな。
実際この義手の握力は非常に強力だからな、剣ならへし折れるだろう。」
「そんなに強いんですか!?」
銀の義手は『奇跡』と言われる代物で、現在の技術で作れないもの、その仕組みが分からないものをそう呼んでいる。
「この前庭先にあった石を握ってみたら粉になったよ…握手する?」
「今の話聞いてやろうと思います?」
◇ ◇ ◇ ◇
「あ、あの。」
ギルドの受付にメメの姿があった。
「はいはい、あれどこかで…。」
ミリアはキョトンとした顔で目の前にいるメイドを何とか思い出そうとしている。
「以前お会いしたことがあります、メメです、アケラさまのメイドの。」
「あぁ!!お久しぶりです!どうされました?」
「しばらくお休みをいただいてまして、本日から復帰させていただきたいのですが。」
「そうなんですね!でも実は今日はとても大事な会談があるので…アケラさんに一度聞いてみてもいいですかね。
こちらで少々お待ちください。」
「分かりました。」
受付前で待機するメメ
するとギルドの扉が開く音がした
「ん?君は確かアケラ様のメイドだったかな?」
後ろから声を掛けられる
背後にはリガ、セティ、モント、ダロラン。
重々たるメンツに思わず立ち上がるメメ、ダロランやリガはであったことがあるので分かるがセティとモントは誰かわからない。
しかし教会関係者のシスター服、しかも白服。
国内でも知るものは少ないが、貴族に使えるメメは知っていた、白服が教会内における最高権力達という事を。
「こ、これは失礼を。
アケラ様にお使いするメメと申します。」
「これはご丁寧にどうも、私はセティ、こちらはモント。
反応から見るに我々の存在はご存知のようですね、今はアケラ村に臨時で務めさせていただいてますのでよろしくお願いします。」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。」
「アケラ様のところへは行ったのか?」
「いえ、なにやら本日大事な会談があるとの事で後でも良いかと思っておりまして。」
「それはそうだな、会うのは少し後でも良いかもしれん。
今日は来客の予定があって他国の大臣なのだ、話しが複雑でギルド関係者のみで行われるので申し訳ないがその時は外してほしい。」
「なるほど、それは間が悪かったですね。
では私はアケラ様のお屋敷の方で待機させていただこうと思います、領主館はどちらに?」
その問いにその場にいる誰もが顔を見合わせた。
領主館、それは領主が滞在している村や町には必ずあるはずの屋敷であるが、アケラ村にはそんなものはない。
申し訳なさそうなリガが申し開きをする。
「すまない、本来なら早急に準備するはずなのだが、元々あった館は老朽化で建て替えが必要な状態で尚且つ本国から建設作業員がまだ来てないのだ。
本来なら着任する前に準備するのが普通だが緊急で着任が決まったアケラ様に準備する時間がなかったのだ。」
「これは村長でもある私の責任でもあります、本来なら優先すべき事態なのですがそれよりも緊急性の高い物事が同時に多発しまして、それの対応に追われるうちにこんな時期になってしまった。
アケラ様には今現在ギルドマスター室を執務室として利用していただいており、寝泊りはここで一番広いお部屋を利用していただいています。」
ダロランも少し髪が後退している頭を下げる。
メメは驚きつつも白服の2人をチラッとみて大体のものごとを察した。
「事情は分かりました、私はアケラ様のメイド、アケラ様が良いのなら私は何も言いません。
それに白服の方が2人もいらっしゃるこの状況、私が何か物言い出来る状態にないと思われます。」
「いやはや、ご理解いただき感謝します。
私の方からも再度アケラ様には謝罪の方をさせて頂きますので、アケラ様の隣の部屋をご利用ください、このダロランが案内いたします。」
「何から何までありがとうございます、本日よりお世話になります、よろしくお願いします。」
こうしてダロランとメメは2階へと上がっていった。
「さて、ではリガさん本日は打ち合わせどうりによろしくお願いしますね。」
「もちろん、身の潔白の為にもね。」
「モントさん、一言余計でしてよ。」
むすっとした表情のリガと相対するように立つモント、セティとしては中立の立場を貫きたいが、後輩がこうも上から目線で物事を進めようとするとどうしても庇ってしまう。
(やっぱり単独行動の方が楽だわ。)
心の中で大きくため息をつくセティだった。
◇
「お待たせしました~、やはり後からの方が良いかと…あれ?リガさん、ここにいたメメさんは?」
「すれ違わなかったか?先ほど2階へ上がったぞ。」
「えぇ?」
「話はしてあるから大丈夫だぞ。」
「はぁ、私ってどうしてこう毎回タイミングが悪いんだろう…。」
◇ ◇ ◇ ◇
昼過ぎ、雨が少し落ち着いてきた頃、2台の馬車がギルド前に到着した。
魔王国の旗を掲げるその馬車からまず下りてきたのはシルマ、以前の装いとは変わりスーツの様なぴちっとした衣服を身にまとっていた、そのせいか元より高い背丈がより高く見え威圧感があった。
シルマは後ろの馬車に足場を置き、ぬかるみの上にマットを敷いた。
そして扉を開き中にいる人物をエスコートした。
「あれが、占い師…。」
ギルドの扉の前に並んでいたリガとケンジ。
2人の目線は馬車から降りてくる人物に釘付けになっていた。
降りてきたのは一人の女性、魔族は体のどこかしらに人間とは異なる部分があるのが一般的だがどう見ても一般的な人間の女性にしか見えなかった。
占い師はシルマにエスコートされながら馬車を下り、マットの上を歩きギルドの前まで優雅に歩いてきた。
「本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます、あいにく名乗る名が無く『占い師』と名乗らせていただいてます。
本日はよろしくお願いいたします。」
「こちらこそ急な用件で申し訳ありません、事務局長のリガ・アルヘオと申します。」
「農業担当ケンジと申します、よろしくお願いします。」
お互いに頭を下げるが占い師の目線はリガではなくケンジに釘付けになっていた。
「あ、あの何か…。」
「いえ、失礼いたしました。」
「では、ご案内いたします。」
2人はリガに案内されながら会議室へと向かった。
◇
2階の最奥、会議室ではアケラ村と魔王国との異質な会談が開かれていた。
神妙な顔つきのアケラとリガとケンジ
落ち着いた様子のダロランとセティとモント
そしてガチガチに緊張したシルマと占い師。
「ちょっとシルマさん!白服はセティさん1人だけでは!?」
「以前まではセティさんだけでしたよ!!」
2人だけでしか聞こえない声量で会話する魔王国組。
「いかがされました?」
「いえ!何でもありません!!」
「さようですか、では僭越ながら始めさせていただきます」
リガは立ち上がり手元の書類を見ながら話し始めた。
「え~、この度は」
「少しいいか。」
話しはじめを遮ったのはアケラ、銀の義手を挙げ皆の目線が集まるのを確認し発言する。
「初めて参加してくれた占い師さんやモントさんには悪いが、堅苦しいのは嫌いでね。
よろしければ簡潔に、砕けた感じで早々と問題を解決したいのだがいいかな?」
本来ならば許されないであろう発言だが、この場においてはアケラ以上の立場の者はおらず異を唱えられるのは占い師のみだった。
今度は占い師に視線が集まる中、先ほどまで少し慌てていた様子だった占い師は少し背筋を真っ直ぐにして明るい声で返事した。
「えぇ、かまいませんよ。
私共としましても取引に関しましてはシルマが全権を持っており、私はアドバイザー程度の役割しかありませんので…。」
「さようですか、では単刀直入に。」
場の空気がガラッと変わる。
「ケンジの事、どこまで知っている?」
「…........。」
占い師とアケラがしばらく見つめあう、その間僅か数秒の出来事だったが2人以外は数十分にも感じた。
「それは…以前シルマが少しお話させてもらった時の発言の内容についての事でしょうか?」
「そうだ、願わくば聞き間違いだと思いたい内容だったが…白服が2人同席している時点で察してくれると助かる。」
「嘘は付けない状況ですね、こういう会談には嘘も付き物だと思っていましたが、いやはやお厳しい。」
「そういうのは貴族同士でやればいいんだ、答えを。」
「ふふ、そうですね、私の名前をお聞きになったら分かるかと思われますが、占いの結果で国境付近の村で転生者が現れると出ましたので…。」
「それを信じろというのですか?」
睨みを利かせるモント
「そんなに睨まないでくださいよ、何か占いましょうか?モントさんの出身である西の少数民族の集落の話でも?」
「えっ?」
一瞬で青ざめるモントとセティ、白服は秘密組織。
構成員の情報は名前以外秘匿されており、同僚ですら知らない情報が多い。
「しゅ、出身地の話は禁止です!!」
「あら、これは失礼。
ではセティさんの指輪に貯蔵されている『奇跡』の保管庫のお話はいかがでしょう、特に私がその中でも興味があるのは…。」
「それもダメです!!!!もうわかりました!!結構です!!」
慌てて止めるセティ。
これ以上喋らすとアケラ達にまで被害が及びそうなので皆がハラハラしていた。
「驚きましたな、全知全能といったような力でしょうか。」
「いえダロランさんそれは違います、頭の中にうっすらと文字が浮かび上がるのです、それがおぼろげなのでハッキリとした答えが出ない場合もあります。」
「ふむ、興味深いです。」
「それよりも、ケンジさんはどのような能力をお持ちで?」
ずいっと身を乗り出して聞く姿勢に入る占い師。
話すなと言われたので迂闊に話せないケンジはアケラにアイコンタクトを送る。
アケラはそれにこたえるように会話の相手をし始めた。
「生産系だ。」
「ほう、生産系。」
「それ以外の回答は差し控える。」
「あら、それは残念です........アケラさまの能力もお聞きしても?」
「そこまでお見通しとは恐ろしいな…私のは........セティさん、なんだったかな。」
「ウェポンマスターです、パサミからお聞きしてるはずでは?」
「そうでした。」
「おぉ、ウェポンマスター!!知ってますよ英雄バルハラトがその能力だったといわれてますよね。」
ニコニコと微笑みかける占い師、それとは真逆に話してよかったのだろうかと不安になるケンジ。
だがアケラは微笑み返した
「よくご存じで、さて、これ以上話すと白服のお2人が恐ろしいのでここまでにしておきましょうか。」
必死にメモを取るモントとヒヤヒヤしながら見守るセティ。
彼女らは恐らく今夜は寝れないだろう、報告書と睨めっこだ。
「ですね、あとでケンジさんとアケラさまだけにお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「今はダメですか?」
「はい。」
すこしムッとしたアケラだったがすぐさま元に戻り話も戻す。
「了解した、後で時間を作る、では次の議題に入ろう。」
◇
「はい、え~では次は私、リガ・アルヘオにおける情報漏洩の疑いの件です。」
「これは私共から。」
立ち上がるモント
「以前こちらに来ていただいたこともあるシルマさんの部下、その中に角の生えた方がおられたと思います、その方が行う『超遠距離からの情報交換方法』につきまして詳細をお伺いしたく思います。」
「これはシルマだね。」
「はい、私から。」
立ち上がるシルマ、下手すると座った状態のままでモントと同じ目線だったのが一気に見上げる形になった。
「角の部下に関しましては先ほど仰っていただいたように人の脳に直接言葉を送る事が出来ます。」
「それにつきまして疑問があります、言葉を贈るだけとありましたが考えを読むような力はありますか?」
「ありません、あったら今頃幹部クラスでしょう。
彼が言葉を贈るには条件があり、晴れの日、起きている時、そして一度会ったことのある者に限られます。」
「その条件がそろっていないと出来ないのですか?」
「はい。」
「…わかりました。」
「恐らくモントさんが心配されている情報漏洩に関しては大丈夫ですよ。
リガさんからこちらへは念話できませんし、ケンジさんなどはすべて占い師の力によるものです。」
チラッとリガの方を見ると『見たことか』と言わんばかりに目線を送ってくる姿がモントの眼に映った。
「ありがとうございます、質問は以上です、あ、いえ他にも聞きたいことは山ほどありますがこの件については以上です。」
「ありがとうございました。」
2人とも着席する、モントとしては報告書に書くことが増えたのでどうしようといった顔だがセティは少しほっとしたようにも見えた。
「では今度はこちらからのお話でもよろしいでしょうか?」
占い師が立ち上がる
「今現在食料などの話はそのまま進めてもよいでしょう、今度は冒険者に関するお話をしたく思います。」
「冒険者とな。」
「はい、今現在ゴルド王国における重要な職になっている冒険者ですが、私共としましては魔王国領地にもゴルド王国認定の冒険者ギルドを作ってもらいたいと思っております。」
とんでもない発言にケンジ以外のゴルド王国民は驚きの表情を隠せない、また1人だけ置いてけぼりである。
「意味を分かった上での発言ですか?」
いつも柔らかな口調で話すセティが冷たい声で問う。
「えぇもちろん、言い換えましょうか。
魔王国はゴルド王国に一部土地の権利を条件付きで受け渡します、その条件はギルドを建設し冒険者を魔王国でも活動できるようにしてほしい、といった感じですかね。」
「こ、この話はここでするべきではない…。」
がくがくと震えるダロラン
「先に謝っておきます、申し訳ありません。
着任したばかりのアケラさま、この世界に転生したばかりのケンジさん、今からアケラ村は魔王国とゴルド王国の問題に巻き込まれる形になります。」
「なぜ今から発展しようとしてる村に、こんな巨大な問題を落とす?」
アケラの義手がギリギリと嫌な音を立てるほど握られている
だが涼しい顔で占い師は答える。
「占いのお告げです。」
まったく話についていけないケンジだったが
騒ぎを起こした後ににっこりと悪びれる様子もなく笑う占い師の様子をみて少し鳥肌が立った。
読んでいただき誠にありがとうございます!!
X(旧Twitter) @yozakura_nouka
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