白服 モント
早朝、とは言っても朝日が昇る前。
むくりと起き上がった青銅の短剣リーダーのバン、横にはリリーとゴートが寝ている。
寝相が良い二人のおかげで少し狭いテントでも十分な睡眠がとれた。
「おい、起きろよ朝市行くんだろ?馬車が出る前に行くぞ。」
「んん~、もう?」
「ゴ-トさんはどうします?」
「........、私は特に買うものは無いのでもう少し寝てます。」
少しの物音で起きることが理想とされる冒険者稼業、真横で会話なんてするとゴートはすぐに起きた。
むしろまだまどろみの中にいるリリーにはもう少し寝覚めが良くなって欲しいところではある。
「では僕たちだけで行きますね、財布持っていきます。」
「はい、お気をつけて。」
野営地から貸し出される毛布に包まりつつゴートは再び眠りにつく。
◇
「リリーは何を買うんだ?」
「矢かな、あとは雑貨とか?お兄ちゃんは?」
「いいのがあれば剣を買いたい、無かったら研磨してもらうだけになるかな。」
「もう折れそう?」
「いや、長く使ってるからだいぶ短くなってきた、研磨のしすぎかな。」
「なるほどね。」
なんて言ってると宿泊区画から少し離れたところに商業区画が見えてきた、朝早いのでそこまで人がいないがゴルド国からの馬車が到着すると一気に賑わう。
申請すれば誰でも簡単に店を開くことのできる野営地の朝市は、王都などの厳しい審査などが必要なく違法性がないのであれば良いという緩いものである。
故にその規模は世界でもTOP5に入る。
しばらく雑貨屋の前を歩いていると、ひときわ大きなテントが見えた。
周りのテントと違い常設型の店で、研磨機や加工設備などが設置されている。
「どうも、研磨の方を頼みたいのですが。」
「あいよ、剣見せてみな。」
「これ。」
腰に携えた剣を店主に渡す、薬草採取や雑用などの依頼をこなしてやっと買った思い出のある剣だ。
とは言っても駆け出し冒険者用のシンプルな量産型の物だが。
「おぉ、これはかなり使い込んでるな、この柄だと元はロングソードだろ?
ショートソード並みに短くなってるじゃねえか。」
「研磨しまくってるからなぁ。」
「そんなレベルじゃねぇよ、買い換えた方がいいぜだいぶ薄くなってるし。」
「う~ん。」
悩んでいるとしびれを切らしたリリーが小突いてきた。
「買い換えなよ、戦闘中に折れたらどうすんのさ。
依頼の報酬も期待できるんだし、タイミング的に良いんじゃない?」
「確かにそれもそうか、長い間お世話になったけどお別れだな。」
「そうだそうだ、お嬢ちゃんのいう通り。
装備はすべて消耗品!!何なら一流冒険者は予備の武器も持っているもんだぜ。」
「じゃあこの剣を買取で、その金額を値引いてもらえたら。」
「お兄ちゃんケチだね。」
「節約家って言って?」
結局、250Gのロングソードを200Gで売ってもらえた。
「それでよかったの?」
「あぁ、重さも前のと同じだし長すぎず短すぎない。
幅は少し細めだけど問題ないかな。」
「まぁ、お兄ちゃんがそれでいいならいいけど。」
「リリーは何か買うのか?」
「矢の補充かな、オオカミ討伐で何本か使ったし補給したいかな。」
「じゃあ弓矢店だな。」
◇ ◇ ◇
「ここかな。」
着いた出店は森エルフの男性が店主をする小さい出店だった。
「何がいるのかな?」
「矢を買いたいのですが。」
「弓は何を?」
「ショートボウを。」
「ならこれだね。」
男性は布で包まれた商品を手に取り、リリー達の前に広げた。
布を広げると6種類の弓矢が10本ずつ束ねられており、それぞれ長さは同じだが色や羽の部分が違っていた。
「今日入っているのはこれだね、一番安いのなら1束で10G、高いのは60Gかな。」
素人のバンが見てもその差は歴然だった。
安いものは雑に枝を加工したもので、少し曲がってるように見える。
だが高いものは真っ直ぐで綺麗な物で、ついている羽も猛禽類の綺麗な羽で矢じりにも綺麗な装飾が施されてる。
「一番安いのでいいんじゃない?」
「いや、この20Gのやつ2束ください。」
「えぇ?高くない?」
「安い奴はやわらかすぎてぶれるの、高い奴は遠距離用や威力の高い弓用。
重いからいい弓じゃないと飛ばせない。」
というわけで程よい矢を20本購入。
「この『クロスボウ』とかは?」
「う~ん、専用の矢が必要になるし、連射もおそいから要らないかも。
重いし。」
店主の森エルフはクロスボウを手に取り、構えて見せた。
「そうですね、弓に比べると重いですしコンパクトでも無いです、ですが素人でも扱えるといった点が優秀ですね。
まぁ、パーティーにアーチャーがいるのならクロスボウは不要かもしれませんね。」
「あぁ、俺でも練習すれば扱えるって事か、たしかに弓使いがいなかったらこれもありなのかな
。」
「ですが飛距離も無いので中距離向きかもしれませんね、まぁパーティー構成にもよりますが基本は護衛任務などに使われることが多いですね。」
「なるほどね、じゃあ俺らには不要だな。」
「そのようですね、また機会がありましたら是非。」
◇ ◇ ◇
火をつけるための着火紙、野営時の携帯食料のジャーキーやパン、その他消耗品を買い漁った。
途中、リリーが石鹼を発見し、駄々をこねたが1個70Gもする高級品だったので引きずられる様にしてその場を後にした。
「戻ったよ。」
「どうでしたか?」
「必要最低限は買えたかな、もうそろそろ寒くなるからか非常食の店が多かったかな。」
「もうそんな時期ですか、そしてリリーさんはなぜふてくされてるのですか?」
「…........お兄ちゃんが石鹼買ってくれなかった。」
「あぁ。」
そもそも水浴びが基本的なこの世界でお湯で体を洗うのは裕福な国民くらいだ。
バスタブを所有してるなんて貴族くらいだろう。
「俺らが石鹼買ってどうすんだよ。」
「石鹼を使った水浴びでも少しはマシなんだから。」
「だとしても手のひらサイズの物で70Gは高すぎるよ。」
「おぉ、かなり高いですな。」
「はぁ、私たちも銀級に昇級しない?」
馬車の時間があるので荷物を整理しながら会話を続ける。
「確かに銀級になるとその分報酬の良い依頼も増えるけどさ、やっぱり銅級の方が依頼主との距離感が近いんだよね。
あとは銀級になると緊急依頼とかに駆り出されるから…。」
「あぁ、なんか昔あったね。」
緊急依頼とは、銀級以上の冒険者が対象の緊急性の高い依頼である。
早急な解決が必要な物事や、達成が困難な依頼に集団で取り組む事がある。
「そんなことより雑用に近い依頼の数をこなせばリスクの高い銀級の依頼よりも良かったりするから。」
「怪我でもして冒険者辞めることになりましたら意味がないですからな。」
ゴートも銅級にとどまることに賛成している、3人パーティーの場合2人の意見が合えばその意見に賛成することが多いので今回はバンの意見に旗が上がった。
「まぁ、それもそうか、食えてるだけありがたい話かもね。」
「そうそう、じゃあ出ようか、朝食は携帯食料で済ませよう。」
「携帯食料ももっとおいしければなぁ。」
「今日のリリーさんは文句が多い日ですな。」
◇ ◇ ◇ ◇
馬車乗り場はいつも通り混んでいた。
そのほとんどがゴルド王国行きのキャラバン隊で、それぞれ荷物の最終チェックを行っていた。
その中でも反対方向を向いているキャラバンが一隊。
アケラ村行きのキャラバンだ。
「どうも!3人相乗りいけます?銅級冒険者です!」
「遠距離いるか?」
「1人。」
「なら一番後ろの荷馬車に乗ってくれ、後方の警戒もしてくれるとありがたい。」
「お安い御用です、みんな、後ろの馬車だ。」
「なんであたしの仕事をお兄ちゃんが承諾してるのよ。」
本来ならお金を払い乗せてもらうのがマナーだが、冒険者だと護衛する代わりに無料で乗せてもらうことがある。
特に遠距離攻撃手段があると歓迎される。
キャラバンは3台の馬車で構成されており、先頭には商人、中央馬車には食料などの商品、最後尾馬車には乗客が乗っていた。
「お邪魔します。」
「どうぞ。」
「わ、綺麗なメイドさん。」
馬車にはすでに乗客が1人乗っており、ロングスカートのメイド服を着たメイドが座っていた。
バン達は馬車に乗り込み朝食をとりながら出発を待つことにした。
「失礼ですが、アケラ村に向かわれるという事は領主様のメイドのお仕事をされてる方ですかな?」
「はい、メメと申します、道中短い間ですがよろしくお願いします。」
「失礼、我々は銅級冒険者の『青銅の短剣』、私はゴートと申します。
彼はリーダーのバン、そして妹のリリーです。
よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします、皆さんはアケラ村へ何しに?」
「ギルドの方に用事ですね、依頼達成の報告を。」
「なにかトラブルでもありました?」
「いえ、只のオオカミの討伐以来ですよ、アケラ村は今後は頻繁に交易を行う予定なのでしょうな、そのための安全確保の依頼でしょう。」
「いやぁ、どうだろうね。
俺が思うのはなんかあったんじゃないかな〜、だって俺らが来た頃なんてオオカミの目撃情報なんてなかったぜ?
よく聞くのは森にでかいクマが出て追い出されるって話だ。」
「私も聞いたことがある!一番最悪なのが魔物が出たりした場合って他の冒険者が言ってた。」
「まぁまぁ、この事はギルドが正式に依頼を出すなり声明を出すなりするでしょう。」
「その場合俺ら銅級冒険者じゃなくて銀級が駆り出されるだろうけどな。」
「でしょうな。」
「私がいない間にアケラ村ではかなりいろんなことが起きていますね。」
「そういえばお姉さんはアケラ様のメイドさんなんでしょ?
なんでこの馬車に?」
「えぇ、実は領主になられてすぐに休暇をいただきまして、おかげでゆっくり家族と過ごせました。」
メメは最初こそ遠慮していたが、それも初日しか持たなかった。
2日目からは休暇を満喫しており、思いのほか長期の休暇を取ってしまった。
「へぇ、なんだか優しい領主様なんだね。
私たちまだ会ったことないけどいつか会ってみたいな~。」
「えぇ本当にやさしい方ですよ、是非会って頂きたいですね。」
そんな雑談が続き、しばらくたった頃リリーが後方からやってくる何かに気が付いた。
「後方からなんか来る、道沿いだから人かも。」
「何人くらい?」
「2人?速度的に早馬かな?」
「早馬だったら大丈夫だろ、アケラ村への緊急の知らせかもしれないし。」
「一応弓だけでも構えられるようにしておこうかな。」
遠くに見えた影はどんどん近づいてきた。
「あれ?シスターかな?」
「シスター?」
バンも馬車から身を乗り出して後方を見る。
たしかに教会に勤めるシスターの服だ。
色が純白であること以外に問題はなかった。
「白い修道服だね珍しいな、人数は2人!」
「なんと!!?」
身を乗り出したのはゴート
「何々?シスターでしょ?」
「白服は只のシスターじゃないんです、世界に13人しかいないのが白服…。
それが2人も?そもそも王都から出て活動する白服は数人しかいないはず…ここから先はアケラ村か魔王国しか無いのに。
何かあったのか?」
ドタバタしているとあっという間に白服に2人が追いついた。
「こんにちは、アケラ村までですか?」
「こんにちは!!アケラ村まで行きます!!シスターさんたちも?」
身を乗り出したリリーが話しかける。
「えぇ、私たちもアケラ村へ。
私はセティ・パロネル、アケラ村で修道女をしてますので何かあれば是非!
では我々は先を急ぎますので。」
ひらひらと手を振りキャラバン隊を追い抜き先へと行った、その時のセティの表情はどこかしらに不安が残るような笑顔だったが、誰も気が付くことはなかった。
後続の黒肌の白服もぺこりと頭を下げて着いてゆく。
「なんだかいい人そうだったね、後ろの人もアケラ村のシスターさんかな?」
「い、いや白服が2人もアケラ村にいるのはおかしいというか…そもそも村に白服が駐在することが異常事態なんですけどね…。」
ゴートは何が起きているかわからないといった様子で首をかしげている、一方であまり興味のない3人。
バン、リリー、メメはアケラ村で働いているシスター程度としか捉えてない。
「まぁ、アケラ村着いたら何かわかるでしょ。」
バンのその一言で片づけられたゴートはやや不満そうだったが、いくら考えてもキリがないのでアケラ村への到着を待つばかりだった。
◇ ◇ ◇ ◇
太陽が頂点に達したお昼時。
セティ達はアケラ村ギルドへと到着していた。
目の前にはギルドの扉がありセティが立っている。
「セティさん。」
「な、なんですか?」
扉になかなか手をかけないセティにしびれを切らしたモントが声をかける。
「これはちゃんとした教会の仕事ですよ、関係者が特殊なこともあり我々しか対処できません。
その対処が早ければ早いほど解決が早くなります、ためらわずにアストログロブ教の教えに則って仕事をこなしてくださいね。
ルーシー様もそう望まれてます。」
ここで教会と上司の名前を出されてはセティも逆らえない。
「分かりました、覚悟を…決めます。」
扉に手をかけギルドに入る。
ギルド内は昼時だというのにがらんとしており、数人の旅人がバーで酒や料理を楽しみ、受付カウンターには薬草採取の依頼達成報告をする冒険者の姿も見えた。
「失礼。」
受付の冒険者に一言謝りミリアに話しかける、割り込まれた冒険者は何をするんだと言わんばかりに睨みつけてきたが、その正体が白服だと知るとぎょっとした表情で後退った。
「セティさん、おかえりなさい!」
「ただいま、突然で申し訳ないけどリガ・アルヘオを呼んできてほしいの、緊急の呼び出しだと伝えてちょうだい。」
「わかりました。」
緊張した声のトーンと真剣な眼差しを見たミリアはテキパキと動きリガを呼びに行った。
まだ幼い彼女だが周りを見て行動できる、じつはギルドメンバーの中でも一番周りからの信頼度が高いのはミリアだったりする。
「ごめんね。」
「い、いえ。」
割り込んだ冒険者に一言謝罪をするが、冒険者側は困惑してる様子で受付カウンターへと戻った。
「アケラ村、どんなところかと思えばなかなか良いところですね。」
ギルドの備品の冒険者向けの図鑑を手に取りながらモントがぼやく。
「本にホコリが溜まってない、見たところ利用者が少ないのにきれいに掃除されてる。
来る道中でも村人が畑で何か作業をしてましたし活気がある。
これを維持するのが領主の腕の見せ所ですね…。」
「元は戦時中、野営地と同じような物資の中間集荷場のような役割を果たしていました、その時に作られた建物や設備をそのまま利用してるのです。」
「あぁ、そういえばセティさんは戦争経験者でしたね。
また今度お話聞かせてくださいよ、白服同士がこうやって2人で行動する事ってないんですから…。」
「申し訳ありません、お待たせいたしました。」
「リガさん…。」
「おかえりなさい、何やら緊急のお話だとか…そちらの方は?」
「初めまして、モントと申します。
ここでは何ですので場所を移したいのですが。」
「アケラ様が本日おられますので、もし重要なお話でしたらそちらの方でも…。」
その時ギルドの扉が開いた。
皆が振り返る。
「ふぅ、ジャガイモの方おわりまし…た。」
セティ、モント、リガの視線を集めるケンジ。
その間2秒ほどしかなかったがケンジは1分程に感じた。
「モント、彼が例の…。」
「あぁ、初めましてモントと申します、今からケンジさんを含む大事なお話がありますのでご一緒願えますか?」
「え…?はい…。」
何が何だかな状態ではあるが、白服の人が言う事なのだから普通の話ではないのだろうと察したケンジ。
◇ ◇ ◇
「わざわざお越しくださってありがとうございます、アケラ・グラディウスです。」
「初めまして、モントと申します。
立場上、セティさんの部下に当たりますがこの度は重要なお話を上層部から預かっておりまして。
そのお話をさせていただきたく思います。」
ギルドマスター室兼領主室となっている部屋では狭かったので会議室で話が進む。
アケラ、ダロラン、セティ、モント、リガ、ケンジの6人で会議机を囲む。
「上層部ですか?」
「はい、正確には上から3人までを上層部としてお話させていただいてます。」
「そんな上から…一体どのような?」
「セティさん、書状をお願いします。」
「…はい。」
セティは袖から一枚の紙を取り出した。
「では、読み上げさせて頂きます。」
目の高さまで紙を持ち上げ、皆に聞こえる声量で読み上げる。
「アケラ村と魔族との交易の最中、魔族側が教会における極秘情報をほのめかす発言をした件について。
極秘情報は現段階で教会内部の白服とアケラ村のシスター、ラシ・ロロラーナさらに領主アケラ・グラディウスとギルド職員のダロラン・ポート、リガ・アルヘオ、以上が把握しているものでありそれ以外の情報の漏洩は確認されていない。」
それはケンジが異世界人であることを知っている人物の一覧だった。
つまり教会の言う『極秘情報』というのはケンジが異世界人ということだろう。
「そこで教会は重要参考人としてリガ・アルヘオをあげるものとする。」
「ハァ!!?」
真剣に聞いていたリガだったが、いきなり名を挙げられ、つい怒鳴り上げその場で立ち上がる。
「リガ君、落ち着いて最後まで聞こう。」
「続けても?」
睨むような形でモントが仕切りなおす。
「…失礼しました。」
椅子に座りなおすリガ、モントは目線だけでセティに続きを読むように促す。
正直セティは申し訳ない気持ちでいっぱいだった、許されるのなら今すぐ言い訳をしてリガに謝りたい。
これは間違った判断だと、もっと公平に、出来るなら魔族側も交えて議論すべきだと…。
だがセティはそれらを我慢して読み上げる、白い修道服を身にまとっている以上仕事はこなさねばならないし、上司の言う事は絶対である。
それがアストログロブ教の不変の教えでもある。
「参考人は魔王国との連絡要員として頻繁にやり取りをしており情報の漏洩元として一番可能性が高い事を考慮し今回の結論に至るものとする……以上です。」
「ぐっ…確かに頻繁にやり取りはしていたが、ケンジの事なんて話してない!!」
「『極秘情報』と、言ってください。」
「っ!」
明確に否定できない事にさらにイラつくリガ。
だが連絡を取っていたのは彼女であり、その方法も手紙ではなくテレパシーといった物的証拠が残らないものであった。
「よいですかな?」
「どうぞダロランさん。」
「その参考人とやらでうちのリガの名前が出ましたが、具体的にはどのような取り調べをするのですか?
連絡係が彼女だったからといった理由はあまりにも薄い。」
「何が言いたいのです?」
「恐らくもう報告書などで情報は出てると思いますが、魔族側に角の生えた方が居ましてその方は遠く離れた地からでも脳内に直接声を届けることのできる方でした。」
リガは角の生えた魔族から声を聴いていた、2回目の訪問の際は事前に行くことをテレパシーで聴いたのだ。
「その方の能力はわたしも確認しました、となると私も魔族側と通じてる可能性があるのでは?
そうすると私も参考人ですかな?」
あごひげを触りながらやや挑発するような眼差しでモントを見つめるダロラン。
「ふふっ、確かにそれだとダロランさんもアケラさんも参考人として調べなくてはなりませんね。
ですが今回はアケラさんのみ参考人として調べさせていただきます。」
「なぜ?」
「この中で唯一前科持ちだからです。」
「........。」
少しの沈黙の後、深いため息が一つ。
「黙って聴いていれば…教会ってのは昔からやり方があまり変わってないのな。」
「あら、元騎士団の方とは思えない発言ですね。」
「元だからいいんだよ、今は昔ほど信仰してないから。」
アケラは机の上にガシャンと銀色の左手を置く。
前より扱いに慣れたのか滑らかに指を動かし擦り合わせている
「前科があるって言うんなら私だって部隊を丸々壊滅させてしまった戦犯だ、前科みたいなもんだろ。
その書類を作った上層部ってのが気に入らないね、普通そういうのは上司であるギルドマスターか領主に話を持ってくるもんだろ?」
「今回同席していただいてますので…。」
「その教会の上層部は、まさか古い考え方してる奴らじゃないだろうな?
もし『そんな考え』でリガを参考人にするっていうのなら…。」
「ちゃんと公平な判断の元で作られた書類です。」
今アケラが言った『そんな考え』といったものは恐らく山エルフ差別の事だろう。
「どうだかね~。」
「…ではどうすれば納得していただけるでしょうか?」
モントも身を乗り出して手を組み机に乗せる。
その横では胃の痛そうなセティが青い顔をして座っている。
「うーん、確かに極秘情報が向こうに知られているのは由々しき事態だ。
万が一彼の身に何かあってからでは遅い、早急に対策をしないといけない事には変わらない。
だけどこのままどうぞとうちのリガ君を差し出す訳にもいかない…。」
とうのリガはうつむいたまま手を握りしめている。
「…では参考人取調べに我々も同行させてくれ、さらにはその後、魔族側を交えた会議も開きたい。
もちろんモント君も出てもらうし、可能なら向こう側の『占い師』なる人物も呼び出そう。
これまでで一番大きな会議だ。」
「そうですな、それが一番でしょう。
こういうのは白黒はっきりさせるのが一番良いでしょう。」
「もちろん取り調べの同行は認めましょう、その会議も我々にとっては願ったり叶ったりです。
魔王国と直接交渉できるなんてありませんから。
しかし本当にその会議が実現できるのですか?」
「出来るさ。」
「その自信はどこから?『占い師』の存在が確認できたのは今回が初めてです、我々の力でも確認できなかった人物がひょこひょこと表に出てきますか?」
「そこにでかいエサが居るだろ?」
アケラの銀色の義手が指さす先には、話についていくのが精一杯の青年の姿があった。
「え?」
読んでいただき誠にありがとうございます!!
X(旧Twitter) @yozakura_nouka
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