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魔族会議

今回から文字が太くなりました。

ケンジたちがやってきたのは村の食糧保管庫、保管ができる食料はここに運ばれてくる。

倉庫とは言っても小さい村なので少し大きめの小屋程度の広さだ。


その小屋の前には荷馬車が止まっており野営地から来た配達員が荷物を下ろしていた。


「あっケンジさん!ジャガイモが届きましたよ。」


保管庫にいたのはミリア嬢、ギルド唯一の受付嬢だ。


「今回は村の分も購入したのでだいぶ余裕がありますので、必要分を教えていただければその分をご利用いただきたいと思います。」


「なるほど、ではここから貰えばいい感じなんですね、で、彼らは何を?」


ミリアの後ろでは荷物をのぞき込み、何やら話し合っている人達がいた。


「荷物の検品をしてもらっています、ジャガイモはゴルド王国の商店から購入したものもありますが、中にはジュゲ大密林の方から輸入したものもあり、距離があるので痛んでるのもちらほらありまして。」


「なるほど。」


木箱のふたを開けると中身のジャガイモが見える、市場で見かけたジャガイモと同じようなサイズの物で質は良さそうだ。


だが従業員の一人が箱の中に手を伸ばしジャガイモを手に取った、そして近くの荷下ろしを手伝っていた村人と何かを話し合った後…そのジャガイモを捨てた。


「えぇ!?何でですか?」


びっくりしたミリアが駆け寄って捨てたジャガイモを拾った。


「あぁ、ジャガイモは『芽』が出ると食えないと取引先のエルフが言ってたもんで。

なんでも毒があるらしい。」


「毒ですか、それは聞いたことがあるかも。

どのくらいあります?」


「とは言ってもほんの少しだとおもいますよ、荷入れするときには全部確認済みでしたので、恐らく道中で芽が出てしまったのかと。」


荷物、とくに野菜や魚、肉などは輸送時に痛む事が多い。

この時代では珍しいことではなく運送業における課題の一つでもあった。


「そうですか、仕方ないものですね。」


「あの、その芽が出たジャガイモは残しておいてもらっていいですか?

種として使えます。」


居ても立っても居られなくなったケンジは横から会話に割り込む。


「種?そういえばジャガイモは植えたら生えるみたいなことを言っていましたけど。」


「そうです、ジャガイモはこれをそのまま植えるんです、この芽から成長します。」


「つまりこれを?」


「えぇ、なのでもしよろしければ残しておいてもらえると。」


「了解しました!何か農作業の方で手伝えることは?」


「ゴベさんに言って何人か農作業出来る人を集めてもらえませんか?

本格的に農作業が出来そうなので。」


「おぉ!いよいよですね!!」


農機具が揃ったので畑を耕す準備ができたのだ、ジャガイモも届いたのであと少しで植え付けが可能だ。


「あ、後ものすごく重要な話なんですが…。」


「はい!なんでしょう?」


「その…カレンダーって知ってます?」



◇     ◇     ◇     ◇


農業において重要な要素のうちの一つである暦。


ほとんどの農作物は種をまく時期や収穫できる時期が大まかに決まっている。

例えばジャガイモは「春植え」と「秋植え」が存在し、春植えは2月中旬から4月中旬に植え、収穫は5月から6月となっている。


秋植えは8月から9月に植え、11月頃に収穫する場合が多い。


ケンジの体感だとかなり涼しくはなってきてはいるので11月頃だと勝手に予測している。


今まで村や王国内でも少し探したが、時刻を表示する物や月日を表示する物が見当たらなかった。


もしかしたらまだ太陽暦などが普及していない世界だった場合、ケンジの勘で農作業を行わないといけない。


だが不可能ではない、そもそも農業における月日は目安であり本来ならば気温や降水量などを参考に栽培するものである。


(いよいよ重大な問題にぶち当たった感じがするな、この世界は地球と同じ世界なら問題はないけど、その大前提が違う場合、例えば四季ではなく二季だとしたらかなり変わってきちゃうよなぁ。)


なんてぶつぶつ考えているうちにたどり着いたのはギルドの2階。

用事があるのはダロランさん。


この村の村長でもあるダロランさんなら何か知ってるのではないかというミリア嬢の案だ。


「失礼しま~す。」


ギルドマスター室には2人の人物、部屋の主のダロランとまだ領主館が出来ていないアケラが半分居候のような形で机に座っていた。


実はギルドとは別の所にアケラの家もあるのだが本人曰く「何も家具がないし、仕事しにどのみちギルドに来るからギルドで寝泊まりしたい。」

との事で、ギルドの2階で寝泊りしている。


「あれ?ケンジ、どうしたの?」


「アケラ様、集中していただきたいですな。」


前見た時よりも書類の量が減ってはいるが、それでもまだまだある。


「少し息抜きをしよう、この前ちょっと減らしたのに王国から帰って来たと思ったら、魔族との取引に関する書類のサインが多すぎるよ。」


「それに関しては仕方の無いことでして、私は村長としての決定権はありますが、やはりその上の領主であるアケラ様の許可もいるのです…。」


「わかってるよ…、ケンジ君は何か用があって?」


「そうなんです、ちょっとダロランさん達にしかお話しできない感じの…。」


「あぁ、じゃあ異世界知識的な感じだね?」


ダロラン、リガのギルド職員2人とラシとセティ教会の2人の計4人がケンジの秘密を知っているので、少しこの時代にそぐわない話題や知識などの相談をする場合はこの4人を頼ることになりそうだ。


「そうなんです、農作業を開始するのに対して必ず要るわけで無いのですが…カレンダーってっ知ってます?」


恐る恐る聞くケンジ、前回『岩塩』の質問をした際にリガのタブー、いやリガというよりは山エルフ全体のタブーに触れてしまったので異世界知識はデリカートな話題なのだ。


「カレンダー…。」


あごひげを触りながら怪訝な顔をするダロラン。


「あっち系の話なら教会が管轄かもしれませんな。」


「え?教会?」


「えぇ、『かれんだー』なるものは確か魔王国内で採用している暦だと把握しておりますな。」


「魔王国で!?そうなんですか、それなら教会かもしれませんね。」


「ですな、因みにゴルド王国では『4賢暦』というものがありまして、とは言っても一部の貴族しか使ってないので覚える必要はないのですが…。」


「4賢暦?どういった感じの?」


「まずは葉が赤くなり涼しくなり始める『王賢』

水が凍るほどの寒さになる時期、これが『氷賢』

花が芽吹き、自然があふれる時期『草賢』

そして気温が高く、雷鳴轟く時期『雷賢』の4つの分類があります。」


「…お覚えにくいかも。」


「ほほ、でしょうな。

故にあまり普及せず、一部貴族が『おしゃれ』として使ってたりする程度ですかね。」


(氷賢はたぶん冬だな、草賢も春…雷賢は夏かな。)


「王賢はなんで『王』なんですか?それ以外は時期の特徴があるんですが…。」


「それに関してはいたってシンプルで、初代ゴルド王が生まれた時期だからです、場合によっては『聖賢』と呼ばれもします。」


「む、むずかしいですね…。」


「えぇ、我々もそう思います、故に一部でしか利用する者がおりません。」


「では、教会に聞いてみますね…。」


「いや、それよりももっと詳しい人がいるかもよ?」


ひと段落着いたアケラが割り込んでくる


「詳しい人?」


「アケラ様?」


「いやいやダロラン君、ケンジにはどのみち話し合いには参加してほしいとは思っていたからね?

ならばもう話しておいてもよいのでは?」


「ふむ、まぁ確かにそうですな。」


ケンジの知らぬところで話がどんどん進んでしまう、だがこの世界の事を何も知らないので何の力にもなれない。

会議や重要な話は任せっきりである。


「あ、さっき決まったんだけど魔族の人たちが明日には来るから、その会議に参加してほしい。」


そして知らないところで話し合われた内容は大体ろくな内容ではない。


「ま、魔族の会議!?」


「ほら、王都に言ってた時に手紙が来たでしょ?あの時に来てた魔族っていうのがシルマっていう人物で…。」



かくかくしかじか…。


「まぁ、農産物の話もしたいってのもありますが、魔王国の文化も気になりますね。」


「他国と交流を試みたのは今回が初じゃないかなぁ。」


「恐らくそうでしょうな、ですが今回は”近隣の村同士での交流”という事ですので、正確には国同士の交流ではありません…ケンジ殿もあまり重くとらえられませんように。」


「そうですか、それは良かったです!

いやあ国同士の話し合いになったりしたら大変だなぁって。」


「でもいずれはそうなるんじゃないか?」


ニヤニヤしながらいたずらっぽく笑うが、領主であるアケラが言うから怖いものである。


「では、え~と魔族の方に聞きたいのが『カレンダー』以外に何かありますか?」


ダロランは机に向かい書類の作成に入る、恐らく会議に使う書類だろうと思われる。


「そうですね、食文化などにも興味がありますね。

我々はジャガイモや肉などが主食ですが魔王国領地では何が取れるのかを聞いてみたいです、それによってはこちらで栽培する作物を少し変えるのもアリでしょうし。」


「ふむふむ。」


「あとは文化ですね、カレンダーのように独自の文化があるようにまだまだ我々が知らない事があるかもしれませんので。」

(まぁ、カレンダーに関しては物を見てみたら別物かもしれないけど。)


「よくわかりました、ではまた会議の時にお願いいたします。

恐らく相手方も貴方に興味がおありでしょうから。」


「わかりました、では私は畑を耕してきます。

新しい農具が手に入りまして、先ほど試運転をして大丈夫そうでしたので。」


「お!いよいよ?私も手伝いに行こうか?」


「アケラ様はその書類の山がなくなるまでギルドから出しませんので。」


領主は大変だなぁ。



◇     ◇     ◇     ◇


ケンジが畑に戻ると何人かの村人の姿が見えた、その中でレイリリ君が指揮を執り、畑の耕し方をレクチャーしていた。


「おまたせ。」


「あ!お疲れ様です!!ゴベさんに聞いて手伝えそうな人を集めておきました!」


実に優秀である。


「ありがとう!!できそうです?」


「慣れれば女性でもできるかもしれませんが、上手くコントロールするなら力がいるので男性の方がいいかもしれません。」


「それは仕方ないかもね、他にも仕事はあるから大丈夫。」


実際農作業には力のいる作業が多い、現在では機械化が進んだが昔ながらのやり方でしか出来ないここでは人員の割り当てが重要になってくる。


「ではこの耕耘機に関してはレイリリ君に任せても良い?」


「良いんですか!?任せてくださいよ!!自分もなんか村の仕事欲しかったんですよ!!」


大興奮のレイリリ君は目を輝かせながら飛び跳ねた。


「仕事は大丈夫です?」


レイリリ君は牛舎の管理などをしているが、農場の手伝いをさせてもよいのだろうか?


「実は今あまり仕事ないんですよ、馬や牛は放牧状態ですし、いまはまだ数も少ないので!」


「そうなんですか?ではお言葉に甘えてもよいですか?」


「大丈夫です!!」


アケラ村はまだまだ発展中なので畜産業まで力が入ってないらしく、乳牛や馬、羊が数頭ずつしかいないためレイリリ君以外の村人でお世話している。


牛乳や羊毛など少量しか取れないので村で消費しきっている。


「ではここの畑はすべて耕しますね、何か気を付けないといけないことはありますか?」


「そうですね、大きな石などは畑の外へ、耕すときに浅くならないように体重をかけることを忘れずに。

あとは…。」


レイリリ君に手順を教えて畑を任せることになった、村人の労働組合代表のゴベさんにも同じことを伝えてもらう様にお願いして後を任せる。


本来ならばケンジも農作業に参加すべきなのだが、手持ち無沙汰な村人がたくさんいるので仕事を与える必要がある。


アケラ村は現在古くなった建物の解体や、領主館の建設、そして畑の仕事があるが。

建築関連は専門業者などが担当なので一般村人が手伝うには危険が伴うので、残る畑仕事くらいが一番良いのだ。


(あとは魔族との会議があるのか…魔族の人たちにはリガさんが連絡したそうだから早くても明日来るっていうけど、そんな早く来れるのか?

魔王国領地はここからかなり遠いって聞くけどな。)


「あっ!!ケンジさん!!」


呼びかけて来たのはラシさん、教会のシスターだが最近上司と後輩が同時にできたらしく少しストレスでやつれているように見える。


「どうかされました?」


「いえちょっと小耳にはさんだのですが、会議に出られるんです?」


「そのような話で進んでますよ、何かアドバイスとかあります?魔族の方と出会うのは初めてなので…。」


「そんなの私だってありませんよ!!

いえいえお伝えしたい、というかお願いしたいことがありまして。」


「お願い?」


ラシは周りに誰もいないことを確認するとケンジの耳に顔を近づけ話しかけてきた。


「実は我々教会側は会議に参加しません、魔族側からしたら一番嫌な相手の場合があるので…もちろんすべての魔族の方がそうとは限りませんよ?

ですが万が一があっては困るので。」


「まぁ確かに魔族と教会って良くはなさそうですね、お願いっていうのは教会のイメージを聞いて来てほしいとかですか?」


「いやぁそこまでストレートに聞けたら良いんですが…、聞いてほしいのは村の場所です。」


「ん?場所?」


「えぇ、魔族の方々が住まう村の場所を聞き出してほしいのです。」




読んでいただいてありがとうございます!!

ジャガイモは芽が出ると良くないのは有名な話ですね、じつは直射日光に当てるのもよくなくて緑色に変色してしまいます。

日陰で長期保存が可能な作物、人類を支えたといっても過言ではない野菜ですね!!

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