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光魔法の秘密

「光魔法は厳密に言うと魔法ではありません。」


セティから放たれた衝撃の一言。


「光魔法は魔法じゃない!?」


「どういうことですか?」


驚くアケラとよく分かってないケンジ


「えーーっと。

魔法というものは自然界に存在する精霊に協力をお願いして、様々な現象を起こす事なのはご存知ですよね?」


「えぇ、ラシさんから聞いています。」


「ケンジくんが見たことがある奴だと水魔法が分かりやすいな、水に対して『船を押す』とか『渦を作る』などという命令を出すことで精霊が応じれば船が動く、一般的にはそれが魔法と言われている。」


「2人は疑問を思ったことはありませんか?光魔法というものに。」


光魔法、それは主に騎士団や教会関係者が扱う魔法として広く認知されている。


「騎士団の入団試験の時に魔法の適性がない『色なし』と診断されたものでさえ扱える魔法…他の魔法と違い、周囲に精霊が居なくても扱える特異性。」


(確か魔法は精霊の力を借りるものだから、火の魔法を使う際には周囲に火の気がないと扱えないんだったかな?

それが魔法の原理としたら、あの夜、周りに光もないのに発動できた光魔法はどうなるんだろう....。)


「じゃあ逆に聞くが、光魔法はなんなんだ?」


「実は…ここだけの話ですよ?異世界人のケンジさんと能力をお持ちのアケラ様だからお話しいたしますからね?」


教会からマークされている2人、ゴルド王国の国教であるアストログロブ教の信仰対象であるヨヴィと接触している、今後も他言厳禁な話を聞かされそうである....。


「光魔法というのは国が保有する『奇跡』による能力の授与とされています。」


「それも『奇跡』なのか!?」


「本当に何でもありなんですね、『奇跡』。」


騎士団、教会はある程度の実力が認められると、とある儀式を行うらしい。

その際に国が保有する『宝珠』に触れるそうだ、詳細こそ分かってないがセティが予想するにはその『宝珠』が『奇跡』なのではないかという話らしい。


「これはあくまでも予想ですよ?魔法学会が長年研究しているのに未だに光魔法は魔法と認められていません。

『奇跡』を長年扱ってきた私の予想にすぎませんが....。」


「まぁ、今出せる結論としては光魔法の正体は分からないし、その儀式を受けれないケンジは光魔法を扱えないってことだね。」


「魔法は…諦めたほうが良いですね。」


ケンジとしては魔法というものを一度使ってみたかったが、出来ないものは仕方ない。

むしろ魔法を扱えるほとんどの者が冒険者や騎士団などに所属していることから分かるように、戦闘は避けれそうにない。


正直、戦闘はしたくない。


王都ではおススメされたナイフを購入したが、前世では暴力などとは一切無縁だったので戦闘する気は一切ない。


「まぁ魔法はなくても生きていけますし…。」


「そりゃそうだ、魔法が全てではないし君の専門は生産業だからな。」


「確かにそうですね、ではではお次は能力の方をお調べしましょうか。」


セティは修道服の裾から一冊の分厚い本を取り出した。


「アケラさんの能力は聞いております、武器の扱いが上手くなる....『ウェポンマスター』だと思われます…。」


「『ウェポンマスター』....名前が?」


「教会が過去に確認ができた者や、記録から付けた名前です。

過去に騎士団の団長や隊長クラスの人物や国王関係者、『奇跡』による能力などをまとめたものです。」


「じゃあ過去に私と同じ能力の持ち主が居たという事に?」


「断言はできませんよ、似たような能力をお持ちの方もいます。」


ケンジの魔法適性を測った物の様な便利なものが無く、能力を持っている人物は非常に稀であるため正式な能力名などは無いのだ。


「なるほど、じゃあその『ウェポンマスター』って能力の詳細とかは分かるの?」


「えーと、過去には3人しか確認されていませんね。

内容は、「ありとあらゆる武器、もしくは武器と認識した物の取り扱い技術の向上。」とされていますね、どうです?当てはまりますか?」


「それそれ!あってるよ、まだそんなに武器を試していないけど扱ったことのない武器でも手に取った瞬間に頭に使い方が浮かんでくるんだよ!!」


「なるほどなるほど、この『武器と認識した物』っていうのがどこまで適応されるかを検証しないといけませんね。

これはまた後日検証いたしましょう。」


王都の宿で見せてもらった針金のような細い投擲武器を巧みに扱っていたのを覚えている。

あれも細い針金のような物を武器として認識したからであろう。


鞭や弓など扱うのにコツがいる武器を一瞬で扱えるようになり、極めることのできる能力。

なかなかに強いのでは?とケンジは思った。


「では次はケンジさんの能力を調べましょう、生産系の能力ですね。」


ケンジの能力は非戦闘系の能力を3つ授かっている。


・『土壌の操作』

・『作物の分析』

・『緑の指』


「えーと、どれも過去に記録がないですね…能力の把握をされていましたらご説明願えますか?」


「そうですね、この土壌の操作っていうのは土を操るとかではなくて、土の三相構造っていうのを操作する能力で水と空気と土の割合を....。」


かくかくしかじか能力について話すが、実はケンジが使用したことのある能力は『土壌の操作』しかなく、『作物の分析』と『緑の指』についてはまだ詳細は分からない。


まぁなんとなく想像はできるが。


「なるほどなるほど、完全な非戦闘能力ですね。」


「植物を育てるための能力だな。」


「よし、能力は把握しました。

もし何か質問がありましたらいつでも私にお聞きください。

あ、ラシさんは知らないことなのでくれぐれも内密にお願いしますね。」


「あ、やっぱり白服の人とは権限が違うんですね。」


「ええ、異世界や『奇跡』などは白服しか知りません。

ケンジさんに気を付けてほしいのは『異世界の知識』の取り扱いについてです。」


「知識の取り扱い?」


セティが、いや教会が最も恐れているのは情報の漏洩である。


「能力者や『奇跡』は何もゴルド王国だけで発見されてるわけじゃ無いでしょ?」


「ですがそれらの情報を主に扱っているのは教会です、もし未知の知識をもつ異世界人がいると他国などが掴んだら…。」


「なるほどね、身に危険が迫っちゃうね。」


「えぇ!!ちょっと!!やばいじゃないですか!!」


能力を持つものは外見から分からず、自己申告するかその能力を見るまで分からない。

過去に教会側に協力的な人物などから取った記録しかないのだ。


これが何を意味するかというと、教会が把握できていない能力者がいる可能性があるという事、そしてそれを取り巻く組織や国が存在する可能性があるという事。


「簡単に言えば悪い奴が能力などを悪用するかもって話だよね。」


「なのでケンジさんの身柄はゴルド王国で保護していると思ってくださっても結構です、我々もこの事は外部に漏れないように努力しますし、ケンジさんも気を付けてください。」


「わ、わかりました。」


「ギルドの皆は口が堅いから安心しな、口が堅くなきゃ職員にはなれないから。」


ギルド職員になる為には実技と面接があるらしく、ギルド職員は高給与で待遇もよいのだが毎年1000人中10人程度しか合格者が出ないほど厳しい内容となっている。


「お話は以上になります、では最後にアケラさんの能力の確認を兼ねてテストをしましょうか。」


「「テスト?」」


「アケラさん、先日お譲りした『義手』は持ってきていただきましたか?」


「ええ、持ってきましたよ。」


先日、アケラ村へのお土産として持ってきた銀色の義手。

光魔法で動くとされているその義手は、高級そうな木箱の中で輝いている。


「この義手は光魔法で動かせます、光魔法は心を落ち着かせたりする効果の他に、身体の精神的な物にも影響を及ぼします。」


「精神?」


「光魔法は光源として足元を照らしたり、目くらましなどを主に使うんだけど、その他に心を落ち着かせたり痛みをやわらげたりする効果があるんだよね。」


「神経とかに作用するってことですか?」


「そう、けどこれはあくまで白服の人が使う光魔法のレベルね?

私とかの騎士団出身はそこまで高度な光魔法は使えないよ。」


白服の上位の人はもっと高度な光魔法が使えるらしいが、その内容は分からない。


「その光魔法で義手を装備できるので、是非試してください。」



◇     ◇    



「こうかな?」


テーブルの上に義手を置き、無くなった左腕部分をはめる。


「元々あった腕をイメージしてください、その腕に光魔法を動かす感じで。」


「あっ、なんかわかるかも…。」


「あっ!!うごいた!!」


ピクッと義手の指先が動いた、だがその一瞬だけでありその後アケラがいくら唸ろうとも動くことはなかった。


「なんか、すごく難しいな…前の様に腕があるような感覚はあるんだけども、金属だからか重い感じがする…。」


「異物ですからね、少しでも動かせたならすごいですよ!ほとんどの人は動かす事すらできませんでしたから。

では、アケラさん、能力の方を使ってみましょうか。」


「え?」


「アケラさんの能力は武器と認識したものはなんでも扱いが上手くなるんです、それも達人並みに。

過去には騎士団にも同じ能力を持つ者がまして、その方はたくさんの武器を担ぎ戦争へ赴いてました。」


「たくさんの武器…もしかして英雄バルハラトの事?」


「誰です?」


「戦争時に100もの武器を担いでそれらすべてを巧みに操り1000以上の魔族を打ち取った英雄だよ、まさか騎士団の英雄が能力者だったとは…。

しかも私と同じ『ウェポンマスター』。」


「この能力の素晴らしい所はズバリ『武器と認識したものを巧みに操る』といった点にあります。

今まだ道具としか認識していないその義手も…どうですか?手の形をした金槌だとイメージしてみてください。」


「う…うん。」


再び目を閉じ集中するアケラ、先程までは前の様に手として動かすことをイメージするのではなく一つの武器として動かすイメージをしてみる。


すると。


「!!」


銀色の義手は手を握りしめた形のまま上に掲げられた。


「あ、上がった!!」


「予想通り上手くいきましたね!!」


当の本人は驚いた表情をしておりポカンとしているが、その表情はだんだんと笑みに変わっていった。


「す、すごい。」


コツをつかめば後は簡単、手ではなく武器として捉えればよい。

物を掴んだり出来る武器だ。


「では、これを掴んでみてください。」


セティは毎度おなじみの、修道服の懐に手を入れ何もない空間からリンゴを取り出した。


「よ、よし。」


そろ~っとリンゴに義手を伸ばし掴む


しかし


メキョッ!!


という無残な音を鳴らしてリンゴは手の形に沿って絞られてしまい、テーブルの上にはリンゴジュースの水たまりが出来てしまった。


「ひぇ」


「うーん、まだ細かい力の制御ができていない感じですね。

こればかりは練習あるのみですね、まだ能力を授かってから日も浅いですし能力の感じ方なども一緒に鍛えていくことが今後の目標かもしれませんね。」


「と、とりあえず、しばらくは左手でものを触らないようにしようかな。

下手すると人をも殺しかねん強さだ…。」



◇     ◇     ◇     ◇



「いろいろ教えてくださりありがとうございました。」


教会の門の前で頭話下げるケンジ


「いえいえ、教会としてするべきことをしたまでです。

我々もまだまだわかってないことが多いので、ケンジさんにもいろいろお聞きするかもしれません。」


「えぇ、僕も協力できることがあればなんでも。」


ここでケンジは自分が抱えている問題を思いだした。


「あ、あのいきなりで申し訳ないんですけど教えてほしいことがありまして…。

水魔法について知りたいのですが、教えていただけませんか?」


そう、セティの来訪があったので後回しになってしまっていたが、ケンジには畑の水問題が未解決であった。

本来なら川から引いてこれば良いのだが、少し距離がある。


そこで注目したのが魔法である、水魔法なら雨を降らせたり効率よく水やりが出来たりするのではないかという考えだ。


その為には水魔法の使い手を尋ねたいのだが、聞いた話だと野営地の舵を取ってくれた水魔法使い『ミラドロル』さんの名が挙がった。

彼に会うためには野営地まで行かなければならない、馬で約1日かかる。


「なるほど、水やりの効率化ですね。」


「そうなんです、あいにく今回ので僕が魔法を使えないことは分かったんですけど、水魔法ならどんなことができるか知りたくて。」


「そうですね、そのミラドロルさんが何級を使えるかは不明ですが、確か水魔法使いの中には雨を降らせたりする人物も居たはずです」


「そうそれです!水やりが楽な魔法があれば大変助かるのですが、そこまではなくても川を引いたり、井戸を掘ったり…。」


「なるほどなるほど、申し訳ありませんが私は水魔法についてはあまり詳しくなく、どの様な事が出来るのかはちょっとわかりかねますので、やはり水魔法使い本人に聞くのが良いと思われます。」


「そうですか、わかりました!

明日、リガさんの予定が開いているそうなので野営地に行ってまいります。」


「あぁ!リガさんとでしたら安心ですね!!」


「私が同行しようか?」


アケラさんが横から割り込んできた、が。


「アケラさん、ダロランさんから聞いていますよ?まだお仕事残っていると伺いましたよ?」


「…。」


(アケラさん仕事終わってなかったんだ、そんなに書類あるのか....。)


「ではケンジさん、明日はお気をつけて行ってきてくださいね。

とは言っても道中の危険はほとんどありません、野営地までの道のりは比較的安全ですよ。

もし外出する際はギルドのクエストボードを見てみるといいですよ、街道周辺の討伐が貼りだされている場合は気を付けたほうが良いという事ですから。」


「あ~なるほど、そういったところからの情報で街道の状況を知る事が出来るんですね。」


アケラ村には少ないものの冒険者の来訪や、野営地などからの郵便や物資の搬入がある。

その際に街道や森の様子などがギルドに報告され、リガやダロランの判断でギルドが依頼主のクエストが貼りだされるのだ。


「昔は魔物や狼とかがよく出たけど、年々魔物が減って狼などの自然動物は森に帰っていくから最近では街道は安全だよ、領主である私からするとありがたい話だよ、本当に。」


本来ならばこういった街道や魔物被害対策なども領主であるアケラの仕事なのだが、アケラ村は周辺国家の辺境に比べると魔物の被害報告が低いそうだ。


「それは良かったです、僕なんか襲われたらすぐやられちゃいますからね。」


狼と戦えなんて、異世界人であるケンジからすると無理難題である。

竹刀ですら高校の授業で振ったっきりなのに、素早く動く狩りに特化した動物の相手をしようものならばすぐに餌になるのが目に見えている。


「そうならないためにも、外出する際は必ずリガか私、もしくはセティさんに声をかけるんだぞ。

今の所この三人が村の戦力だからな。」


「はい、肝に銘じておきます。」


「よし、では私は仕事に戻ります。」


「はい、本日は貴重なお時間を割いていて抱きありがとうございました。

教会の扉はいつでも開いておりますので遠慮なくお越しください。」




◇     ◇     ◇




セティと別れた後、アケラはギルドに戻りケンジは畑の様子を見に行くことにした。


(水の問題もあるけど、土の状態もあるよな~見た感じだとガチガチに固い。

ものすごい粘土質じゃない分ありがたいけど、やっぱり耕耘しないといけないよな、明日野営地に行った際にビットさんに頼んだ品が出来ているといいけど…。)


畑につくと向こうから一人の修道服を来た女性が子供たちを引き連れて歩いてきた。


「あれ?ラシさん?どうしてここに?」


「あれ?ケンジさんじゃないですか、私は子ども達と一緒に日常生活でも使える薬草の勉強会です。」


「へぇ、薬草の…。」


子供たちの手には複数の草が握りしめられており、恐らくそれらが薬草なのだろう。

ケンジが見たことのない草ばっかりだったので、間違いなく異世界の植物だ。


「薬草ってどんな効果があるんですか?」


「そうですね、今日取ってきたのは腹痛などに効く『旅人草』ですね、これはそのまま食べても行けますし、水に入れておくと水が痛まないので昔から旅人や冒険者に重宝されている薬草です。」


「へぇ!それはすごい。」


この世界では飲み水は基本的に煮沸したものや魔法などで生み出したものがほとんどである、ろ過したりする方法もあるが非効率なのであまりやらない。


中には川の水を飲料水として飲む物もいるがリスクがゼロではない。


そこでこの『旅人草』の出番なのである

汲んできた水を煮沸しその中に薬草を入れる、すると腹を壊さないほんのり茶葉の様な甘みのある携帯飲料水の完成だ。


「このやくそうをあつめてうるの!!」


女の子が丁寧に説明してくれた

(なるほどね、これはたしかに勉強にもなる。

栽培もできるだろうが、子供たちが自然に触れる事も授業の一環だろうし栽培はしないで自然採取が良いのだろうな。)


「ではそろそろお昼なので教会に帰りますね。」


「あ、もうそんな時間か、みんなばいば~い。」


子供たちに手を振ると向こうも手を振り返してくれる。


(どの世界でも子供は無邪気でかわいいなぁ。)



子供たちの無邪気さに癒されながらケンジは畑と向き合う。


「さて、僕も仕事をするか。」


ケンジは畑の真ん中でしゃがみ込み、自分にできることをし始めた…。


次回から耕作に入りますよ!!

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