99.
涙が地面に吸い込まれてゆくのを暗い気持ちで見つめていると、
『とーもこっ』
温かい声が響き、力強い手が差し出された。
見上げると、ひまわりのように笑う舞の姿があった。
『舞ちゃん……いいの?ドッチボールは』
『いいのいいの。だって、朋子がいなきゃつまんないもん』
潔く言った彼女の深い優しさに、新たな涙が溢れ出す。
目尻をごしごしと拭うと、肌がこすれて痛かった。
『朋子。足、怪我してるじゃない』
舞は泣いている理由を怪我だと勘違いしたらしい。
『大丈夫。そんなにひどくないよ。保健室行って、消毒してもらおうね』
そう言って、朋子の小さな頭を優しく撫でる。
『痛いの痛いの、飛んでけー』
軽やかな歌が響く。
朋子の涙を優しく止める、魔法のような声だった。
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「ぼんやりしてるわね」
不意に意識を呼び戻され、朋子ははっとした。
一瞬、自分のいる場所がどこだか分からなくなる。
目の前にいる女帝の姿をみとめて、ひざまずいた。
「申し訳ありません」
日向野エンタープライズ株式会社の本社最上階。
彼女のため設えられた執務室の広さと豪華さは、他のどの部屋よりも際立っていた。
朋子が昨日しでかした失態を報告すると、女帝は笑みをひらめかせた。
「そう。それで舞は家に帰ったというわけね。今ごろ当主の膝にでもすがりついて泣いているのかしら。かわいそうに」
声色こそ甘やかだったが、朋子には断罪の響きをもって身に迫る。




