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98.
あっくんと呼ばれた飯島敦志が、(めんどくせえ)というような目で自分を見つめている。
チームの他のメンバーも、(こいつかよ)とか(足手まといが増えちゃうな)と考えているのが手に取るように分かった。
舞だけが天真爛漫に、何も気づかない様子で、
『何言ってるのよ。朋子がいなきゃ人数つり合わないでしょ。さ、入った入った』
朋子は思わず手を振り払った。
『いいってば!』
舞がぽかんと口を半開きにし、空気の温度が一瞬で下がった。
非難の視線が突き刺さり、朋子はその場を逃げ出した。
走って走って、勢いよく転び、校庭の隅、非常階段の下にうずくまる。
擦ったひざ小僧に血が滲んでいるのを見たら、途端に痛くなってきて涙が溢れた。
朋子は顔を覆って泣き続けた。
誰からも忘れ去られたようなこの場所で、薄暗く湿った影の中で。
泣けば泣くほど自分の存在はかすみ、薄まってゆく。
このまま空や地面と溶け合い、誰にも気づかれないまま綺麗に消えてなくなってしまいたい。
遠くでひときわ大きな歓声があがった。
ボールが地面につき、跳ねる音。走り回る足音、にぎやかな笑い声。
ほんの数十メートル離れたそこが、朋子にはまるで、果てしなく遠い場所のように思われた。




