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竿斬りの舞  作者: 凪子
第九夜
96/146

96.








両手に縄をかけられた舞は、背後から荒々しく突き飛ばされ、倉庫のような部屋の中でぶざまに尻もちをついた。


突き飛ばしたのは阿部あべ、大柄で野性的な顔立ちをした男だ。


表情に失ったはずの精気が満ちているところを見ると、どうやら義竿を取りつけたようだ。


相変わらず趣味の悪いスーツを着ていると思うとおかしかった。


「何笑ってやがる」


どすの利いた声で言うと、舞の腹に鋭い蹴りを入れた。


舞は床の上を吹っ飛んで転がり、咳き込んだ。


「自分の状況分かってんのか?お前は今、敵の本拠地の真っただ中にいるんだぜ。

借りはたっぷりと返させてもらう。よくも俺の竿を斬ってくれたな、この化け物」


舞は瞳の底に軽侮けいぶの色を宿して冷ややかに阿部を見上げる。


彼は舞の前髪をつかんで引っ張りあげた。


「その目が気に入らねえんだよ!殺してやろうか、ああ?!」


「やめたほうがいいですよ」


背後で様子を見守っていた久保田が、へらへらした顔で口をはさんだ。


「その子はあの方への大切な貢ぎ物。傷一つ付けてはならないとおっしゃったはずです。それに」


久保田は舞の顎に指をかけて持ち上げた。


至近距離で彼の深い瞳がすっと細まる。


「せっかく綺麗な顔をしてるんだから、サンドバック以外にも使い道はあるでしょう」


冷酷な表情は、快活に手を振った少年とは全くの別物だった。


SPOは同性愛者の巣窟そうくつかと思っていたが、どうやら違う人間もいるらしい。


本能は身の危険を感じて警鐘を鳴らすが、ただ全てがおっくうだった。


――どうでもいい。どうにでもなってしまえ。


からっぽの心の内で、舞は投げやりに言った。
















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