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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
95/146

95.









どこをどう歩いたのかさえ分からぬまま、舞は滝のような雨に打たれて街をさまよった。


もう、何も考えられない。


何も分からない。


一詩の最後の笑顔と、朋子の歪んだ笑顔が交互に蘇り、舞の心を切り裂く。


ふらつき、よろめいていると、


「みっつるぎさん。みーつけた」


場違いに明るい声が響き、舞はずぶ濡れの顔を上げて前方を見た。


「久保田君」


雨の作る透明な幕の向こう、黒髪にラフなTシャツを着た彼は、ひらひらと手を振った。


久保田は涙に濡れた舞の顔を見ても、笑顔のままだった。


「ねえ、前に話した噂のことなんだけど、本当に知らない?」


錆ついた思考はうまく働かず、舞はぼんやりとした頭を左右に振った。


久保田は無邪気に笑い、


「そっか。おかしいなあ。俺の友達、志田っていうんだけど、君にそっくりな子に竿を斬られたって

言うんだ。心当たりない?」


いつもの舞なら、ここで危険に気づき、逃げ出すことができたろう。


だが今は、魂の抜け殻のごとく放心状態だった。


ゆるゆると首を振った舞に、久保田はにやりと不敵に笑い、


「本当に?」


「……知らないわ」


「じゃあ、この人は?」


久保田の後ろから傘を差して現れた男を見て、舞はようやく逃げようとした。


だが彼は――阿部和哉あべかずやは、肉食獣のように素早い動きで舞を捕らえ、獰猛どうもうな笑顔で言った。


「久しぶりだな。この間の礼はたっぷりさせてもらうぜ。竿斬りさんよ」


久保田はにこにこと笑ったまま、舞の顔を覗き込んで言った。


「SPOへようこそ。竿斬りの舞」





















【第八夜・終】

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