94.
「舞」
秋山がうろたえる。
朋子の顔からは一瞬表情が消えうせたが、やがて冷笑がとって変わった。
「あーあ。ばれちゃった」
いたずらっ子のように無邪気に言って舌を出す。
「朋子……どうしてここにいるの?誰かに、捕まえられたんじゃ」
朋子は甲高い声を上げて爆笑した。
「やだ、アレ信じてたの?てことは、狭山一詩の竿も斬っちゃったんだ。かわいそうー」
その言葉に、秋山の肩がぴくりと反応する。
舞はわなわなと唇を震わせて立ちすくむ。
今にも倒れそうなほど血の気が引いていた。
朋子は腕を組み、舞に詰め寄ってあざ笑う。
「私はね、舞。御前付きのメイドとして、ずっとあなたを監視してたの。化け物の見張り番だったというわけ。だからこの前の電話も、今までのこともぜーんぶお芝居。どう?驚いた?」
この上なく残酷な笑い声が、舞の頬を容赦なく打った。
「友達だと……親友だと思ってたのに」
「気持ち悪いこと言わないで。寒気がしちゃう」
朋子は大げさに身を震わせると、氷点下の眼差しで舞を貫いた。
「私はあんたのことなんか大嫌いだった。いつもいつも、私を助けるふりをして見下して、私から何もかも奪っていくあんたが。今までよくも私を馬鹿にしてくれたわね。
小さいころからそうだった。男も女も、あんたのいい子ぶった演技に簡単に騙された。
みんなからチヤホヤされて、偉そうに調子に乗って……あんたの顔を見るだけで虫唾が走るのよ」
「朋子」
「でも、それももうおしまい。たった一人の友達に捨てられた気分はどう?」
これまでの自分の人生を、丸ごと否定された気分だった。
打ちのめされて崩れ落ちた舞に、朋子は哄笑を浴びせかけたかと思うと、平坦な真顔になって言った。
「今まで奪われてきた分、私があんたから全てを奪い去ってやる」




