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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
90/146

90.









突然邸宅を訪れた舞を、一詩は快く迎え入れてくれた。


「来月からは、奥さんも一緒にここに住むけどな」


高級マンションの4LDKの部屋は、確かに二人で住んでも十分な広さだった。


掃除が行き届いており、一詩らしいテイストですっきりとまとめられている。


「結婚するんだね。一兄かずにい


写真立てに飾られた幸せそうなツーショットを見つめ、舞は一詩に背を向けたまま呟いた。


一詩が照れくさそうに笑うのが、気配で感じられる。


「そうなんだ。小百合さゆりっていってな。大都銀行の頭取の娘さんなんだけど、そんなの関係なくあいつを愛してるし、護りたいって思ってる」


「……そっか」


舞はぎこちなく笑う。


一詩は怪訝な顔をしたが、何も言わなかった。


昔から、一詩は舞の嫌がるようなことは何一つしなかった。


ただその広い胸に、大きな懐に、全てを抱きとめてくれるだけ。


「舞。日向野ひがのとは縁を切れ」


不穏な響きに、舞は思わず顔を上げた。


一詩は真剣な眼差しで、食い入るように舞を見つめている。


緊迫した空気が漂った。


「日向野と縁を切って普通に大学に行くか、それができなきゃ、せめて家業を継いで巫女さんになれ。今のお前を、俺は見ていられないよ」


強張った舞の肩に手を置き、一詩はさとした。


「日向野はあくどい。儲けになることなら何だってやる会社だ。さといお前なら、それくらい分かってるだろう。そんなところで働くことを、本当にお前は望んでるのか」


胸が詰まって言葉にならなかった。


「一詩兄さん……私、」


「それとも、今ここで俺の竿を斬るか?竿斬りの舞」


舞は凍りついた。

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