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竿斬りの舞  作者: 凪子
第一夜
9/146

9.

彼女は黒革のソファーに腰を下ろすと、舞を見て微笑んだ。


「このうつし世に蔓延(はびこ)る罪深い男共よ、汚い竿を隠して震えるがいい。そうは思わない?」


「それが本当に罪深い者なら」


淡々と返した舞を見つめ、女帝は大胆な弧を描いた眉を寄せる。


「あなたはいつも寂しげなのね。そんなに素敵な能力を持っているのに、どうしてなのかしら」


「今回のターゲットの詳細を教えていただけますか」


「生意気ね。だけど、そういう子猫は嫌いじゃないわ。ちょっとお待ちなさいな」


女帝が少しかがむと、大胆にはだけた着物の襟口から谷間がのぞく。


つややかな髪を結い上げ、真っ白なうなじにおくれ毛がかかっている。


彼女が取り出したのは履歴書(りれきしょ)だった。

右隅に顔写真が張られてあり、小さく几帳面(きちょうめん)な文字がびっしりと並んでいる。


「あなたには今回、立明大学の学生になりすましてもらうわ。偽名と学籍はこちらで用意します」


「承知いたしました」


「資料によると、標的は女好きでだらしなく愚鈍(ぐどん)なようだから、接近も篭絡(ろうらく)も容易でしょう。あなたには退屈な仕事かもしれないわね」


「この男はどんな罪を犯したのですか」


「痴漢の累犯者で、相当な数の女性が被害に遭っているそうよ。あくどい手口らしく、決定的証拠を掴ませずに逃げおおせている。男の風上にも置けないゴミね」


それを聞いて、舞は胸のつかえが取れたような気がした。


女帝は薄く笑う。


「そんなに大義名分(たいぎめいぶん)が欲しいの?」


はっと顔を上げた舞に、鋭い視線が突き刺さる。


「どちらにせよ、あなたに選択権はないのよ。相手が誰であろうと、一度下された指令は実行するほかない。標的に情けをかけるのはやめなさい。うかつな考えは身の破滅を招くだけよ」


舞は強く唇を噛みしめた。


「まずは立明大学に潜入し、ターゲットの所属するサークルに入会しなさい。そこからは、あなたの裁量に任せるわ。迅速に事を済ませ、痕跡一つ残さないようにね。いつもどおり、切り取った竿は小箱に入れて鉄に引き渡しなさい」


「御意」

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