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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
89/146

89.

「無礼者。手を離しなさい」


大の大人でも、すくみ上がってしまうような声で低く凄む。


いつもなら引き下がるはずの藤城は、ひるむどころか、さらに腕に力を込めた。


「斬れるのですか?実の兄のように慕っていた人を」


舞がかすかに身をよじった。


「あなたには関係ないでしょう」


ひた隠しにしている動揺が、声にはありありと滲んでいる。


「私の竿を斬ってください」


藤城の言葉に、舞は目を見開いた。


「何を言っているの?」


「私が狭山様の身代わりになります」


舞は鼻先でせせら笑った。


「馬鹿なことを言わないで。藤城、あなた頭がおかしくなったの?」


部屋は耳が痛くなるほどの静けさに包まれ、互いの呼吸音以外、何も聞こえない。


「竿を失った男は、顔つきも身体も精気が抜けてしまうもの。竿があるかないかなんて一目で見破られてしまうわ。そんな浅知恵あさぢえで騙されるような相手ではないのよ」


舞は腕をほどいて、藤城に向き直った。


「だいぶ見当違いだったけど、あなたの気持ちはありがたく受け取っておくわ」


「舞様」


「あなたはここで祈っていてちょうだい。私が無事に任務を遂行できるように」


舞は既に非情な竿斬りへと表情を変えていた。


藤城はいても立ってもいられず、叫ぶように、


「このままでは、あなたの心は壊れてしまう。お願いします。どうか逃げてください」


「私が壊れれば、次の誰かが力を継ぐだけよ。仕える相手が変わるだけ。あなたが心配するようなことはないわ」


藤城は舞の手を取る。なぜか、すさまじい倦怠感けんたいかんが身体を襲っていた。


「私が生涯仕えるのはあなただけです。舞様、わたくしはあなたが」


「黙って」


舞は強い口調で遮った。


視界が薄暗くぼやけてゆくなかで、舞の姿は神々しいほど美しかった。


「藤城……ありがとう」


薬を盛られたのだと気づいたときには、藤城の意識は急速に遠のいていた。
























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