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竿斬りの舞  作者: 凪子
第八夜
88/146

88.






夜のとばりが落ちてくる。


舞は夕食もとらずに部屋に引きこもり、黒装束に着替えていた。


右手の調子はいい。


暴走する気配も、今のところは見せなかった。


「どうせなら、いっそのこと暴走してくれればいいのに」


それなら、自分のせいではないと言い張れるのに。


舞は忌まわしい右手を見つめ、机の上にあるカッターナイフに目をやった。


鋭い刃を出し、左手で握りしめ、目をつむって思い切り振りおろす。


その手は藤城に強い力で阻まれた。


「離して」


「できません」


「誰に向かって口をきいているの。私が離せといったら離すのよ」


舞は主の風格を滲ませ、言い刺した。


だが藤城は、一歩も動かなかった。


「舞様を傷つけようとする者は、誰であろうと許すわけにはまいりません。それがたとえ舞様自身であっても」


そう言うと力ずくで手のひらを開かせ、カッターナイフを取り上げ、自分の胸ポケットにしまう。


舞は藤城を睨みつけ、視線を右手へ転じた。


「こんな腕さえなければって、三年前から何度考えてきたか分からない。


だけど……今夜ほど強く思ったことはないわ」


低く呟くと、藤城の顔が歪んだ。


「そんな顔をなさらないでください」


「どんな顔をしようと、私の勝手よ。行くわ」


歩き出した舞は、突然後ろから強く抱きしめられて立ち止まる。


藤城は舞の肩に頭を乗せ、


「行かないでください」


吐息まじりの切ない声が耳の間近で響く。


藤城の体温が服を通して伝わってくる。


舞は天井を仰ぐと、瞑目めいもくした。

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