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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
79/146

79.

うつむいていた舞は、弾かれたように顔を上げる。


目が合うと、彼はゆっくりと頷いた。


「本当に辛いところにいるとき、人は感覚が麻痺まひして、辛いとも思えないものなんだよ。

君はきっと、自分が今どんな場所に立っているか気づいていないだろう。吹雪から逃れ、暖炉で体を温めたときにようやく、人は自分がどれだけ寒いところにいたのか分かるものだから」


秋山は身を乗り出し、舞の両手をくるんで握りしめた。


「君を苦しめているものが何なのか、俺には分からない。だけどそれが決して許されないことだと、俺は知っている。絶対に放っておけないって、あのとき思ったんだ。だから」


「やめて」


舞は硬く目をつむって顔をそむけた。


逃れようとした舞の肩に手を回し、秋山は華奢な体を強く抱きしめた。


「……君が心の底から幸せに笑える場所に連れていく」


涙で滲んで、目の前がよく見えなかった。


「もう二度と、奴隷のような顔も囚人のような気持ちにもさせない。誰かを信用して、本音を話して、笑いながら生きていけるように、俺が守るから」


閉ざされた氷の扉をこじあけられ、舞は口を手で覆って嗚咽をかみ殺した。


心が引き絞られ、ねじ切れそうだ。


押し殺した声をもらすたび、秋山の腕に力がこもる。


舞は目の縁を拭った。


「無理よ。できるわけない」


「無理じゃない」


秋山は力強く言い切った。


腕を離し、舞の顔を両手ではさんで自らの方へ向かせながら、言い聞かせるように、


「大丈夫。きっとできるよ」


観覧車はゆっくりと地上に滑り込む。


永遠のような時間は、美しい結晶となって舞の心に封じ込められた。


たとえ、うたかたの夢であってもかまわない。舞は思った。


そうだとしても、差し伸べられた手の温もりを、自分は生涯忘れることはないだろう。



















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