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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
78/146

78.

唇が離れ、硬直しきった舞の姿を見つめ、秋山はささやいた。


「君を敵に回したくない」


観覧車はちょうど、最も高い場所へたどりついたところだった。


秋山は鞄の中を探ると、


「少し後ろを向いて」


と言って、強引に舞に背中を向けさせた。


されるがままにしていると、後ろでしゃらりと音がし、胸元に何かがかけられる。


見ると、それは昼間、舞が魅せられたネックレスだった。


「やっぱり。似合うと思った」


秋山の満足そうな笑顔に、舞は呆然と問いかけた。


「これ……」


いつの間に買い求めたのだろうか。ご丁寧にタグも切ってある。


舞の白い肌と華奢な鎖骨に、ネックレスはとてもよく映えていた。


窓ガラスに映る自分の姿は、見たことがないほど女性らしい表情をしている。


「幼いころ、俺が養父に引き取られたって話をしただろ」


秋山は静かな口調で切り出した。


「養父は養母と折り合いが悪くて、あの家庭はそもそも、子供を育てられるような環境じゃなかった。家畜同然の扱いを受けたよ。食べ物も飲み物も満足に与えられず、ぎょろぎょろと卑しい、眼ばかり飛び出たような子供だった」


舞の顔色が変わるのを見て、秋山は苦笑した。


「養父が俺を引き取ったのだって、慈悲じひの心でもなんでもない。自分の道具か、ペットが欲しかったようなものだ。それに気づいたとき、地獄のような人生に絶望したよ。

あれは虐待なんて生易しいものじゃなかった。多分……君には想像もつかないだろうと思うよ。自分の意思で何かをすることは許されず、逃げ出すこともできない。俺にとって家庭というのは、ずっと牢獄でしかなかった」


舞はわなわなと唇を震わせた。


秋山は言う。全てを受け入れたような透明な微笑みで。


「恩人に救われて年月が過ぎたある日、俺はあのときの自分と同じ、生気を失ったような瞳を見た。生きることを諦めたような表情をしている女の子の中に」

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