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つまりあのカフェは、秋山家の経営する店舗の一つということか。
飲食店をこんなに若い養子に任せられるくらいだ、相当に羽振りのよい実家に違いない。
「あのカフェ、地下にいくつか会議室がありますよね。あれって、誰が使うんですか」
「そんなこと聞いてどうするの?」
秋山は微笑みを絶やさずに尋ね返す。
舞はたじろいだ。
「いえ別に。ちょっと気になったので」
「あれはね、近くの会社の人とかがたまに使ったりするよ。そんなに広くないから、大所帯には向かないけどね」
「そうですか」
舞はそっと溜息をつく。
ちっとも真相が見えてこない。はぐらかされているのか、本当にSPOとは無関係なのか。
分かっている。
剣先が鈍るのは、いま一歩間合いを詰めて斬り込めないのは、自分の気持ちが邪魔しているせいだ。
この人が無関係であればいいと願っている。
「ついたよ。来たことある?赤レンガ倉庫」
秋山が指さしたのは、横に長い煉瓦造りの古色蒼然とした建物で、舞のお気に入りだった。
思わず足が速まる。
「はい。私ここ、大好きです」
ぱっと咲いた笑顔に、秋山は目を細める。
「そっか。よかった」
彼はそう言ってごく自然に、舞の手を取った。




