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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
71/146

71.

「こんにちは」


秋山はにっこりと人好きのする笑顔を浮かべると、


「行きましょうか」


と言って歩き出した。舞は慌てて後を追う。


――落ちつけ。これまで、さんざん男を誘惑しては竿を斬ってきたではないか。


その経験を今、生かさずしてどうする。


そう言い聞かせつつも、舞は久しぶりに訪れる懐かしい風景に目を奪われていた。


開かれた港町を、心地よい風が吹き抜ける。


「あの、秋山さん」


「ん?」


「名刺に店長と書いてあるのを見ました。失礼ですが、あれは本当ですか」


秋山は腰をかがめ、舞をじっと見つめる。


「どっちだと思う?」


そらとぼけた返事に、舞は営業用の笑顔で食い下がる。


「お若いのにすごいですね、お店を任されているなんて」


「どこで仕入れてきたの、そんな台詞」


「え」


舞は喉を凍りつかせる。


さも面白そうに笑う彼は猫のようだった。


「はっきり言ってくれて構わないよ。その年で自分の店を持つなんて怪しい奴だって」


舞はしどろもどろになった。


「いえ、そんなことは」


「俺、孤児なんだ」


秋山は特に感慨かんがいもなさそうに言った。


「物心つく前に両親が自動車事故で死んで、親戚もいなかったから、地元の孤児院に預けられたんだ。そこから小学校に上がって、鉄と会った」


この人はともかく、社長に子供時代があったとは思えない。


「中学に入ったころ、俺を引き取ると申し出てくれた人がいたんだ。それでその養父に連れられて、仙台に移住したってわけ。でも数年で義理の両親が亡くなって、途方に暮れていたら、親切にも養父の親戚が拾ってくれたんだよ。

それが今お世話になっている家なんだけど……そこが経営してるんだよ、あのカフェ。

だから俺は店長というより、店番って感じなんだ」

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