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竿斬りの舞  作者: 凪子
第七夜
70/146

70.






――これは、デートなのだろうか。






みなとみらい駅へ向かう電車の中で、舞は本日十七回目になる自問自答をはじめた。


事の発端は、先日の夜。突然かかってきた電話には、見知らぬ番号が踊っていた。


特に気にせず通話ボタンを押すと、


『もしもし?秋山です』


驚きのあまり通話終了ボタンを押してしまい、死ぬほど後悔していたら、もう一度コール音が鳴った。


穴があったら入りたい心境で応答すると、彼は先日の約束を持ち出して言った。


『もしよかったら、今度の日曜、おつき合いいただけませんか』


機械越しに耳元で聞く声は、妙な色気に溢れていた。


秋山は集合時間を決めると、断る隙も与えず電話を切ってしまった。


おかげで聞きたいことは山積みだし、気持ちは宙ぶらりんなままで、土曜の夜はなかなか寝つけなかった。


朝起きて、一番好きな洋服に袖を通しながら、藤城をぎろりと睨み、


「ついてきたら殺すからね」


と釘を刺すことも忘れない。


もらった名刺には、【Café ONEplusONE 店長 秋山敬太】と書かれていた。


五度ほど見直したが、どうやら印刷ミスではないようだ。


名実ともに秋山があのカフェの店長なら、そこに出入りする北山組、ひいてはSPOについて知っている可能性が高い。情報をさりげなく聞き出せるかもしれない。


だが当の秋山を目にした途端、舞の自信は根底から揺らいだ。


「こんにちは。舞さん」


秋山は清雅せいがたたずまいで、約束の時間の五分前に、とっくにそこにいましたという様子で立っていた。


ペパーミントグリーンのシャツに黒のジャケットを合わせ、ベージュのチノパンにローファーを履いている。


上品で趣味がよく、完璧なよそおいだ。


近寄ると、ほんのわずかに爽やかな香りが漂った。


まるでモデルのような出で立ちに、誰もが振り向き憧れの眼差しを注ぐ。


彼は人を惹きつけてやまない誘引力を備えていた。

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