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7.
「行ってらっしゃいませ」
使用人に見送られて屋敷の正門を出た舞は、少し歩いたところで背後に気配を感じ振り向いた。
「朋子」
「びっくりした。舞ったら、声をかけようと思ったら急に振り向くんだもの」
可憐な少女は、近所に住む幼馴染の石田朋子だった。
舞は警戒を解き、花がほころぶような笑顔を見せる。
「今から学校?」
「うん。今日は大学二限からなんだ。舞は?」
曖昧な笑みを浮かべて黙っていると、朋子の表情が曇った。
「……また例のお仕事?」
舞は肯定も否定もせず、駅へ続く大通りを歩き続ける。
「この間やったばかりじゃない。あのときだってすごく辛そうだったのに」
小走りになって追いかけてきた朋子が隣に並んだ。
「中学卒業してすぐにお仕事始めて、私なんかよりずっと頭いいのに高校も大学も行かないなんてもったいない。昔は友達だってたくさんいたのに、最近じゃみんなのことも遠ざけてるし」
「そうね、でも平気よ。心配しないで」
「舞ったら」
朋子は困り顔で首を振ったが、舞は笑って取り合わなかった。
この親友だけが、今となっては舞の家業と正体を知る唯一の人間だ。
舞の右手が血に染まってからも、変わらずそばにい続けてくれている。
舞が手を取ると、朋子の頬がかすかに染まった。
「ありがとう。朋子」




