67.
「それは一体、どういった理由での申し出なのでしょうか」
慎重に、注意深く父親が問い返す。
「誠に勝手ながら、御剱神社と御剱家の置かれている経済状況を調べさせていただきました。今の御剱家は、日向野家からの莫大な融資と貸付により、借金が雪だるまのように膨らんでいる状態とお見受けしました」
舞は恥ずかしさに顔から火が出そうだった。
「そこで提案なのですが、わたくしどもにその借金を肩代わりさせていただけないでしょうか。もちろん、必要であればこちらも惜しみない資金援助をさせていただきたいと思っています」
舞は思わず父親を横目で見やった。
長年日向野の支配下に組み伏せられてきた御剱家としては願ってもない話だが、やすやすと飛びつくには不審な点が多すぎる。
「どういうことなの?一詩兄さん。そんなことをすれば、狭山のお家が傾いてしまうじゃないの」
思わず差し出口をはさんでしまった。
父親がぎろりと舞を睨む。
一詩は出された茶を一口すすり、声を改めると、
「うちが日向野と商売敵なのは知ってるだろう?」
舞はこくりと頷いた。
「舞、お前は知らないかもしれないけど、舞の家はこのお屋敷以外にもかなり広い土地をあちこちに持ってるんだ。だけどそれは今借財の抵当に入っていて、日向野に差し押さえられてしまっている。
それをもし狭山の家に預けてくれるというのなら、俺はそこをリゾート地にしたり、マンションを建てたり、ビルを作ったりして有効活用したいんだ。そこで上がった利潤の一部を借金の返済として受け取り、完済されればその土地は御剱の家に返還する」
一詩の言っていることは分かりやすかったが、あまりにもうますぎるような気がした。
舞の父もそうなのだろう、半信半疑といった表情をしている。
「それはありがたい申し出ですが……一体どうして、そこまで言っていただけるのか腑に落ちません。恥ずかしながら我が家は代々、利に暗く世事にうとい家柄。商売に手を出して、大失敗をした過去を持ちます。真意も分からぬまま、そうそう簡単にお話をお受けするわけにはいかないこと、ご理解いただけるかと存じます」
もって回った言い方だが、一詩は伝わったらしく、ばつの悪い表情をした。
「いや、実はですね……恥ずかしながら、今弊社は日向野エンタープライズと、とあるリゾート地の利権を巡って訴訟中でして」
舞ははっと身を硬くした。
女帝や鉄が忙しそうに立ち回っていたのは、それが理由ではなかったか。




