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竿斬りの舞  作者: 凪子
第六夜
63/146

63.

――まさか、ここまで社長が話してくれるとは思わなかった。


帰り道を歩きながら、舞は考えにふける。


どうしてSPOと日向野が対立するのか、根底にあるものは分かった。


一笑に付してしまいたいような理由だが、ともかくも。


だが、全てが明るみに出たわけではない。


例えば、Kの持つという再生の力のことだ。


もしKが本当に竿を持ち主の肉体に還すのだとしたら、SPOは竿を得られない。


それでは本末転倒ではないか。


睨むように歩いていた舞だが、やがて腹がぐきゅるるる……と物悲しい音で鳴るのに気づいた。


昨夜北山の竿を斬り、早朝からfrank中目黒店へ出向き、朝食もまともにとっていない。


一度意識すると、猛烈に空腹感を覚え、耐えられそうになかった。


足が自然と『Café ONE plus ONE』へ向かっているのに気づき、舞はおののいた。


――ご迷惑はかけないと、約束します


心地よい声が耳の奥に蘇り、胸が締めつけられるようにうずく。


店の前を何度も往復し、舞は自分の挙動不審きょどうふしんぶりにうんざりした。


ガラス窓から店内をそっとのぞきこむ。


秋山に話しかける朋子の笑顔を見て、息が止まりそうになった。


可愛らしいカフェの制服に身を包んだ朋子は、危なっかしい手つきで給仕きゅうじをしている。


時々秋山がそばに寄っていき、新人指導らしきことを行っている。


わき上がってきたどす黒い感情に、舞は思わずうめき声をあげた。


なんと微笑ましく、お似合いの二人だろう。


愛くるしく魅力的な朋子と、爽やかでセンスのいい秋山と。


会話の内容など聞きとれるはずもなかったが、舞は思わず耳をそばだてる。


朋子が小さな体で精いっぱい背伸びして、何事か秋山の耳元に囁いている。


秋山は輝くような笑顔でそれに応じている。


恋人同士のように親密な雰囲気だった。


舞は思わず目をそむけ、きびすを返して走りだした。


――ひどい奴だわ……私


薄汚い感情が溢れ、流れだすのを止められない。


この呪わしい右手を持つのが朋子だったら。


代わりにあそこにいて、笑っているのが自分だったら。


そう思ってしまう自分を止められない。


舞は強く首を振って目をつむる。全てを洗い流し、消し去るために。


だがまぶたの裏の鮮やかな残像は、いつまでたっても薄らいでくれそうになかった。






















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