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54.
「ほう?男を惑わすために、この天河を借りるというのか。面白い」
萌は上機嫌に笑い声をあげた。
天河は隣で眉間に皺を寄せて言った。
「執事でありながら主の命令も遂行できないとはな。全く、笑わせる」
「返す言葉もございません。しかし、天河様のお力添えがあれば、SPOから情報を引き出すことなど容易でしょう。どうかお願いいたします」
「ひざまずけ」
天河は言うなり、藤城の頭を掴んで畳にたたきつけた。
「それが上位の者に物を頼むときの態度か。まだ身分の差が分かっていないようだな」
「……申し訳ありません」
「謝れば済むと思っているのか。この役立たずが」
藤城の襟首を掴んで持ち上げる。
眼鏡の奥の瞳は凍りつくほどに鋭く尖っていた。
舞が抗議しようとしたとき、
「よせ天河。ここでSMプレイをしたところで、一文の得にもならぬぞ」
見当違いの萌の制止によって、藤城は天河の手から解放されて咳きこんだ。
冷ややかな目で見下ろし、天河は腕を組んで傲然と言い放った。
「いいだろう。お前と舞様の手伝いをしてやろう」
ぱっと嬉しそうに顔を上げた藤城に、しかし天河は釘を刺す。
「ただし覚えておけ。これはお前達のためにするのではない。他ならぬ萌様のためなのだとな」




