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53.
「舞様。先ほどのことですが」
「萌様への報告は必要ないわ。私が一人で片づける」
田中とのデートを終えて、二人は帰り道を急いでいた。
屋敷の門まで来ると、藤城は心なしか怒ったように眉をつり上げた。
「軽はずみな行動はなさらないでください。あの場所はSPOのアジトの一つなのですよ」
「まだそうと決まったわけではないわ。だからそれを確認しに行くのよ」
我ながら筋の通らない理屈だと思った。
だが、藤城の顔を見ているとむしょうに腹が立つ。
「何よ。自分一人では男も誘惑できないくせに、偉そうに指図しないで」
正確に言うなら、誘惑はできていた。できすぎていて困るくらいなのだ。
だから真打が必要になる。
誘惑しながらも正確な情報を引き出せるに足る、有能な人物が。
藤城もその人物が誰なのか、もはや問おうとはしなかった。
二人はそろって、物も言わずに萌の居室に向かった。




