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竿斬りの舞  作者: 凪子
第五夜
52/146

52.

『私に任せて。こういうことに向いている人間に心あたりがあるの』


『……舞様?』


『その代わり、あなたがそいつに頼むのよ。それくらいはできるでしょう?』


『かしこまりました。それで、その人物は?』


『あなたもよく知ってる人よ。その人は』


「その人は?」


突然、背後から声がかかって、舞は飛び上がった。


振り返ると、銀盤を胸に抱えた秋山がいたずらっぽく微笑んでいた。


小型マイクの向こうで藤城は沈黙を保ち、じっとこちらを見つめている。


舞は顔中の筋肉を総動員して、ぎこちない笑みを作った。


「すみません。携帯、使っちゃいけなかったんでしたっけ」


秋山はおかしそうにくっくっと喉の奥で笑う。


「いえ、大丈夫ですよ。今日は、朋子さんはご一緒じゃないんですね」


舞の心臓は不穏な音色で跳ねた。


「朋子、よくここへ来るんですか?」


「ええ。てっきりご存じかと」


口ごもっていると、秋山は不意に舞の耳元でささやいた。


「今度、店が終わったら会えませんか」


「え」


舞の心臓は壊れんばかりに鳴った。


秋山が照れたように笑う。


「僕が知らない鉄のこと、教えていただきたいんです。……お願いします」


喜びと不安が一気に押し寄せてきて、うまく反応できなかった。


かろうじて出たのは、


「でも私、日向野社長と知り合ったのはたった三年前で」


という、言い訳めいた言葉だけだった。


秋山はにこりと笑うと、取り出した名刺を一枚、テーブルの上に置いた。


困惑する舞の瞳を見つめ、


「あなたが分かることだけでいい。ご迷惑はかけないと約束します」


何て吸引力のある目だろう。魅惑的な輝きは、心をとらえて離さない。


舞ははからずも頷いている自分に驚き、そして呆れた。








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