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竿斬りの舞  作者: 凪子
第五夜
51/146

51.

『普段自分のことけてる人を、自分が尾行するって面白いものね』


『舞お嬢様……ご冗談はおやめください』


襟元につけられた超小型マイクで舞と藤城は会話していた。


藤城は舞の言いつけどおり、まずはゲイバー「亜斗夢あとむ」に潜入。


難なく田中涼を籠絡ろうらくすることに成功していた。


だが、問題はここからである。


今日が二人の初デートの日で、舞はそこに陰ながら参戦することとなったのだった。


『ねーえ、藤城ちゃん。何食べたい?私パスタがいいなあー』


田中涼は女顔負けのぶりっこをして、藤城に身をぴったりとくっつけている。


『……何でもいいぜ』


無理に男っぽく喋ろうとしているせいか、藤城はよく言葉に詰まった。


それすら田中には愛おしく思えるのだろう、めるような眼差しで見つめている。


『じゃあここ入ろ?結構おいしいんだよ』


と言って彼(彼女?)が示したのは、何と「Café ONEplusONE」であった。


朋子といい田中といい、どうして星の数ほどあるカフェの中で、わざわざここを選ぶのだろうか。


人を引き寄せる磁力でも備わっているのだろうか。


舞ははっと気づいて、鞄の中に入れてきた資料を取り出した。


女帝から渡されていた、北山組のアジトのリストだ。


Café「ONEplusONE」は、アジトと断定はできないが、ちらほら組の人間が出入りする要注意スポットと書かれていた。


舞は覚悟を決めて扉をくぐる。


田中と藤城はとっくに席についていた。


怪しまれないよう本を開き、注文したミルクティーを飲みながら、舞は情報を聞き漏らさないよう耳を傾ける。


『藤城ちゃんって、どういう子がタイプ?』


『タイプ、ですか。私――いや俺は――』


『初デートでどこまでオッケー?てか、付き合ったら週何回?』


『えっと――その――』


完全に押されている。


肉食系田中の猛烈ながっつきに、藤城はたじたじのようだ。


舞は心の中で合掌がっしょうした。このままでは埒が明かない。


『藤城』


舞は小声で呼びかけた。


『何でしょう』


『竿のこと、聞けそう?』


『……申し訳ありません』


『いいのよ。私が悪かったわ。ここまでだとは思わなかった』


有頂天で喋りまくっている田中を尻目に、藤城は捨てられた犬のようにしょんぼりとうなだれている。

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