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竿斬りの舞  作者: 凪子
第五夜
49/146

49.







うんざりした気分で日向野本社を出ると、道路の脇に豪華なベンツが停められていた。


物珍しく眺めながら通り過ぎようとすると、


「舞?舞じゃないか!」


声が聞こえ、ドアを破るようにして勢いよく飛び出してきた人影があった。


舞は一瞬、その姿を見ても誰だか分からず首をひねる。


だがすぐに、ぼやけていた記憶が鮮明に蘇った。


「一詩兄さん!」


何のためらいもなく、大きな広い胸に飛び込む。


往来の多い大通りで、テレビドラマのように抱き合う二人に好奇の視線が注がれた。


そんなものを一切気に留めず、彼――狭山一詩さやまかずしは微笑んで言った。


「元気だったか?舞」


舞は厚い胸板に顔をこすりつけるようにして、


「ええ。一詩兄さん、アメリカから帰ってきてたのね」


一詩はスポーツマンらしくきたえ上げられた、たくましい体つきをしていた。


舞とは一回りも二回りも体格が違っている。


均整の取れた肉体に、男らしくほがらかな笑顔。こぼれる白い歯、爽やかな顔立ち。


一目で裕福な育ちと分かる好青年だ。


「向こうでMBAの学位を修めてきたんだ。親父の会社を継ぐためにね」


その言葉を聞いて、舞の顔色は曇った。


――狭山コーポレーション。


近年、破竹はちくの勢いで利益を伸ばしている、不動産業界の新鋭と呼ばれる会社だ。


その利権争いに、日向野エンタープライズも深く関わっている。

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