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竿斬りの舞  作者: 凪子
第五夜
47/146

47.

「やはり、ターゲットはSPOの人間ということですね」


この緊急事態に、日向野は舞を、邪魔者を排除する尖兵せんぺいとして利用するつもりであることは間違いなかった。


「そういうことになるわね」


いつかこうなるときが来るかもしれないと覚悟はしていたが、舞の心は激しく乱れた。


「日向野の個人的な私怨しえんで、竿斬りを命じられるのですか」


「もちろん、報酬はこちらから払うつもりだけれど」


「そういう問題では、」


あらがった舞の唇に、女帝の人さし指がつきつけられた。


そのひやりとした感触は、まるでナイフの刃のようだった。


「あら、何が違うのかしら。顔の見えない誰かの恨みを買った男の竿を斬るのと、私が頼んだ人間の竿を斬るのと、どう違うというの?」


女帝の白魚のような指は、舞の唇から顎の線をなぞり、首筋を撫でる。


「もう一度言うけれど、あなたに選択の余地はないわ。今度のターゲットは二人いるし、難易度も高い。迷っている余裕などありはしないのよ」


「二人?」


女帝はトランプのように、二枚の写真をテーブルの上に広げた。


「右が田中涼たなかりょう。北山組の幹部兼組長の愛人。左は、北山隆明きたやまたかあき。SPOの会長であり、北山組の十三代目組長」


何か聞き捨てならない単語が出てきたような気がして、舞はもう一度写真に目を落とす。


右は、黒髪を肩まで伸ばした、目のくりっとした優男。


左は、汚らしく色素を抜いた金髪で、舌を出して眉をしかめ、右手は親指まで開いた変な形のピースをしている。


「御前」


「なあに?」


「今、愛人という言葉が聞こえたような気がしたのですが」


女帝の顔に人の悪い笑みが広がった。


「ええ、そうよ。こっちの田中涼っていうのは北山の愛人。北山は筋金入りの同性愛者で、歌舞伎町にゲイバーも経営しているの。田中涼もそちらが本業みたいね」


内容の濃い話に頭がくらくらして、舞はこめかみを押さえた。

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