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竿斬りの舞  作者: 凪子
第四夜

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43/146

43.

「じゃあまた。機会があれば」


機会など永遠に訪れないことを知っていながら、平気でいつわりを口にする。


いつの間にこんなにずるくなったのだろうと思いながら、舞は歩きだした。


「あ、そうだ。御剱さん!」


よく通る声に、思わず足を止める。


数メートルの距離で、久保田はこちらを見つめて立っている。


企みごとをほのめかす、いたずらっ子のような笑顔が言った。


「ねえ、知ってる?最近、男のアソコを切り取って盗む奴がいるらしいよ」


声も出ずに固まっている舞に、久保田はにやりと笑いかける。


「たまにそう言って警察に届けに来る、頭おかしい人がいるんだって。誰も相手にしてないらしいけど」


「どうして、そんなこと知ってるの?」


振りしぼって出た声は、かすれてひび割れていた。


恐怖と混乱が、じわじわと背中から忍び寄ってくる。


久保田は何も知らずに言っているのだろうか。


わざわざ呼びとめてまで?


久しぶりに偶然会った、元クラスメイトの目の前で?


一点の曇りもない笑顔のまま、久保田は言った。


「うちの父さん、下っ端だけど一応刑事なんだ」


「へえ。そうなの」


久保田は舞が引いているのに気づいたのか、気まずさをごまかすように軽く笑い、


「ごめんごめん。こんなの女の子にする話じゃなかったね。じゃあまた」


「ええ。さようなら」


背を向けて歩き出した舞の後姿を見送り、久保田は凶悪な笑顔で呟く。








「またね。――竿斬りさん」









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