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竿斬りの舞  作者: 凪子
第四夜
39/146

39.



「もしもし舞?」


『朋子。どうしたの?』


電話越しに聞く舞の声が心なしか沈んでいて、朋子は眉を寄せる。


「うん。用ってほどの用はないんだけど。今、大丈夫?」


『大丈夫よ』


「ねえ、舞。何かあった?」


受話器の向こうが一瞬沈黙し、それから、無理に明るくしたトーンで、


『別に何もないよ』


「嘘ばっかり。舞はポーカーフェイスな分、無理してると全部声で分かるんだから」


朋子が胸を張って言うと、かすかな笑い声がした。


『ホントに何でもないってば』


朋子は詮索するのをやめて、甘えるように言った。


「ね。今度いつ遊ぶ?」


押し黙った舞に、朋子は怪訝そうに首を傾げる。


「またあのカフェに行こうよ。かっこいいお兄さん……秋山さんだっけ?会いに行こうよ。買い物して、映画とか観てさ。ぱーっと遊ぼう?」


『朋子』


「なあに?」


『悪いんだけど、しばらく会えそうにないの。ごめんね』


朋子は目を見開いた。


受話器の向こうで漂うただならぬ様子に、声だけがはやって大きくなる。


「どういうこと?やっぱり何かあったんでしょう?」


岩のような沈黙に、朋子は焦れて早口になった。


「お仕事のこと?ねえ、そうなの?」


『ごめん』


「ごめんだけじゃ分かんないよ。説明してよ。ねえ、舞ってば」


『また電話するね。じゃあね、朋子。元気で』


電話は突然、ぶつっと音をたてて切れた。


朋子はリダイヤルボタンでかけ直したが、『この電話は、電源が入っていないか、電波の届かないところにあるため、通じません』という電子音が繰り返されるだけだった。


通話終了ボタンを押して、部屋の中央にいる人物に向き直る。


「相当追いつめられているようですね。舞は」

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