37.
自分の部屋に戻るなり、舞は泥のように眠った。
起きれば、朝食の御膳が自室に運ばれており、藤城が物も言わずに控えていた。
「お疲れでしょうから、自室で食べていただけるよう手配いたしました」
細やかな気遣いが胸にしみ、舞は思わず顔をそむけた。
「昨夜のようなこと、二度と萌様の前で口にしないで。かばってくれと頼んだ覚えはないわ」
「差し出口をたたき、申し訳ありませんでした」
「萌様が本気になったら、あなたの首なんていつでも切られてしまうわよ」
「舞様」
「何?」
「もう、おやめになってください」
舞は呆れたように肩をすくめる。
「そんなに反逆者になりたいの。この私をそそのかしたとあっては、本当に首が飛ぶわよ」
何事もなかったかのように食事を続ける舞に、藤城は懇願した。
「これ以上舞様が辛いお立場へ追い詰められるのを、黙って見ていることはできません。どうか、萌様におっしゃってください」
「言ってどうなるというの」
舞は箸を置いて、低く呟いた。
藤城は言葉に詰まる。
「あなたも昨日聞いたでしょう。この右手に与えられた力は、もう萌様のものではなく、私のものなのですって。遠隔操作は不可能。暴走するのも私次第。ということは、もはや萌様でさえも、この力を取り除くことはできないということじゃないの」
悲嘆も絶望も見せず、舞は恬淡とした様子で言った。




