表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竿斬りの舞  作者: 凪子
第四夜
36/146

36.

萌は、かすかに憐れむような眼差しを舞に送る。


「右手が暴走したのは、そなたの感情が原因じゃ。怒りや憎しみや混乱に激しく感情が振幅しんぷくし、精神の安定が崩壊すれば、そなたの肉体は力を御しきれず暴走する」


舞は口元を手で覆ってうずくまる。胸を突きあげるような吐き気が襲っていた。


「舞様」


藤城が駆け寄って膝をつく。


そして、ほとんど初めて、攻撃的な視線で萌と天河を睨みつけた。


「よいしもべじゃ。妾に牙を剥こうとも、あくまで主に忠誠を誓うか」


萌はゆったりと笑う。


「妾とて、日向野の目的の全てが分かっておるわけではない。竿塚から竿がなくなろうと、痛くもかゆくもないのが現実。じゃが今の御剱の経済状況をかんがみれば、日向野に逆らって生き延びることはできぬのじゃ。分かってくれるな、舞」


「恐れながら当主様。あまりにむごすぎるお言葉かと存じます。舞様の肩に御剱の命運全てを載せるなどと。それでは人身御供ひとみごくうも同然ではありませんか」


「やめなさい」


藤城を素早く遮り、舞は気丈にもよろめきながら立ち上がった。


「分かりました。……よく、分かりました」


「次の指令は既に下っておる。明朝みょうちょう、再び日向野本社へ向かうのじゃ。恐らく標的はSPOのトップになると考えて間違いない。日向野は血眼で失った竿の奪回をもくろんでおるからの」


藤城はひざまずき、額をこすりつけるように土下座して乞う。


「お待ちください当主様。舞様はお身体を弱らせていらっしゃいます。せめて一日、刻限こくげんを明後日まで延ばしてはいただけないでしょうか」


言葉を失った舞の前で、藤城は痛切な声で哀願あいがんする。


「何卒お願いいたします。どうかお許しください……!」


天河が足音も荒く藤城の側へやってきて、髪をつかんで引っ張り、顔を上げさせた。


藤城の顔が苦痛に歪む。


「貴様、誰に向かって口を聞いている。おそれ多くも萌様に刃向い、要求を述べるなどと……身の程を知れ」


振り上げられた天河の手が、


「控えよ天河」


空中でぴたりと止まる。


萌は愛くるしい笑みを浮かべ、いつもの甘く高い声色に戻っていた。


「よかろう。そこのしもべに免じて、一日だけ猶予ゆうよをやろう。よく養生するのじゃな」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ