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竿斬りの舞  作者: 凪子
第四夜
35/146

35.

天河に起こされた萌は、まるで最初からこの事態を予期していたかのように冷静だった。


寝まき姿のまま、天河に抱きかかえられ主寝殿しゅしんでんを抜けて謁見の間の椅子へ腰かける。


時を経ずして扉が開き、髪が濡れたままの舞が入室してきた。


「夜分にこのような格好で御前を汚す無礼、どうぞお許しください」


「どういうことか、ご説明いただけるのでしょうね。舞様」


天河の居丈高いたけだかな態度、主人よりも先に口を開く無礼千万な行為も、今はとがめられたものではなかった。


「説明いただきたいのはこちらです。当主様」


舞の言葉の一つひとつが、怒りを帯びて尖っていた。


萌は金のおうぎを開いて口元をおおう。


御簾みすは上がっており、二人の間を遮るものは数歩の距離と重ねられた畳分の段差しかなかった。


今にも萌に飛びかかりそうな舞の様子に、天河が一歩萌の前へ出ようとする。


無言のまま手で制し、萌は目を細めて舞の言葉を待った。


「私の力を遠隔操作しましたね」


舞は低い声を唇の間から押し出した。


「何のことじゃ」


「右手が……私の右手が暴走しました。阿部の竿を奪うつもりはなかった。なのに、勝手に右手が動いたんです」


背後で藤城が、目の前で天河が、それぞれはっとしたように息を呑む。


萌だけが、その言葉を受け止めて小揺るぎもしなかった。


「そうか」


「竿塚に預けにいったときに分かりました。あなたは最初から阿部の竿を私に奪わせるつもりだった。なぜなら、これはSPOをあぶり出すための布石だから。

幹部である阿部が竿塚から竿を盗んだ犯人を言わず、竿の保管場所も答えず、抵抗して竿を奪われれば、今度は報復のためもっと大物が動く。違いますか?」


萌は笑わなかった。


舞の視線は痛いほど真っ直ぐに萌を、その背後の欺瞞ぎまんを貫く。


「そのとおりじゃ」


舞は唇を噛みしめた。


「じゃが、そなたは一つ誤解をしておるぞ。舞」


顔を上げた舞に、萌は淡々と言った。


「そなたに竿斬りの能力を与えたのは確かにわらわじゃ。じゃが、そなたの力を遠隔操作することなど妾にできはせぬ。妾の身体を離れた時点で、もはや力はそなたのものなのだから」


舞の目が凍りついた。


「そんな」


かすれ、消え入るような声が言う。

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