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竿斬りの舞  作者: 凪子
第四夜
34/146

34.

真夜中、屋敷に戻った舞の蒼白そうはくな顔を見て、藤城は驚いて駆け寄ってきた。


「舞お嬢様。ご無事ですか」


肩に置かれた手を、舞は乱暴に払いのけた。


「萌様のところへ使いをやって。湯あみをしたらすぐに向かうと」


藤城は銀細工の懐中時計に目を落とす。


短針は一を指そうとしていた。


当主を夜中にたたき起こす無礼を、一体誰が引き受けるというのだろう。


藤城の困惑を察したのか、舞は皮肉な笑みを浮かべた。


「責任は全て私が取るわ。命令に逆らえば、竿斬りの化け物が暴れると言いなさい」


言い捨てると渡り廊下を進み、自室に備えつけられた大きな湯殿ゆどのに足を踏み入れる。


服を脱ぎすて、大理石の磨き込まれた広い湯船につかった。


天窓てんまどから蒼く清らかな月の光が差し込み、舞の白い肢体したいを照らし出す。


くもり立つ湯気の中で、舞は右手を湯で洗い清め、何度も何度強く手をこすり合わせる。


肩が小刻みに震え、息を吐くたびに噛みしめた歯が鳴った。

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