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竿斬りの舞  作者: 凪子
第三夜
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「どこの組の回し者だ、お前」


舞はその、見当違いの質問に思わず笑った。


「中学では三年二組だったけど」


「おちょくりやがって。このクソアマが!」


阿部が顔を殴りつけようとして振り下ろした手を、舞は簡単に受け止めた。


淡々と、その手を折れるほど力を込めて握りしめる。


ぎゃっと阿部が悲鳴をあげた。


「日向野から盗んだ竿のありかを教えなさい」


阿部の顔色が変わる。


激しく抵抗したが、舞はがっちりと手を押さえつけたまま離さなかった。


凄まじい力に、阿部は恐怖と混乱を汗ばんだ顔に浮かべている。


「吐きなさい。吐かなければ、あなたの竿をもらう」


低い声で、静かに舞は脅す。


「知らない。俺は何も知らない!」


阿部は半泣きで言った。


「あなたは北山組の幹部でしょう。ならば私の能力も知っているはず」


「やめろ!やめてくれ!竿だけは、竿だけはやめてくれ!!」


「なら今すぐ言いなさい。竿を盗み出した人間と、その保管場所を」


「分かった、言う!ちゃんと話すから、頼む!離してくれ!」


情けなく懇願こんがんする阿部に、舞は手を離してやった。


そこに生じた一瞬の隙をついて、阿部は舞を突き飛ばして殴りかかる。


左頬をきわどくかすめて、こぶしが壁にめりこんだ。


飛んできた蹴りがサイドテーブルを倒してスタンドが割れる。


怒号を上げて振りかぶってくる阿部に、舞はひらりと舞い、攻撃を避けた。


足払いをかけ、倒れた阿部の上に馬乗りになって、


「これが最後通告。竿はどこ?答えなければ」


「死ね!化け物め!!」


その言葉に、舞の顔色は激変した。


そして、気づいたときには、


「ぎゃあああああああああああああああ!」





舞の左手には、阿部の竿が握られていた。








無我夢中むがむちゅうでホテルを駆けだした舞の周りに、影が集まる。


深く広がる暗闇の中を走り続ける。出口の見えない、光のない道を。


この夜が悲劇の幕開けとなることを、一体誰が予測できたろう。


果てない迷走は始まったばかりだということを、彼女はまだ知らない。










【第三夜・終】

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