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竿斬りの舞  作者: 凪子
第三夜

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25/146

25.

「鉄は盗まれる前日、あなたから川村の竿を預かった後、竿が全てそろっていることを確認している。あなたでも鉄でもないのなら、外部から何者かが侵入して竿を盗んだことになる」


オードブルが下げられると、女帝はナプキンで口元をぬぐい、


「それに、何よりおかしいのは……映っていないのよ。防犯カメラには、誰ひとり不審人物は映っていなかった。人影どころか、ネズミ一匹ね」


敵は日向野の鉄壁の守りを打ち砕き、防犯カメラさえ欺けるほどの技量をもっている。


さらに言うなら、そこまでして竿を奪う必要のある人間なのだ。


「犯人の動機に心あたりはおありですか」


鉄の顔が一瞬歪んだように見えた。


「日向野に恨みを持つ人間の仕業かもしれないわね。ところで舞、あなたの家の人間は自分付きの執事を持つと聞いているけれど」


「はい。執事は主が盗めと命令すれば、忠実に実行するでしょう」


下手な小細工はするだけ無駄だ、舞は正直に答えた。


しかし女帝も鉄も、まだ何か隠しているように見える。


日向野に恨みを持つ人間がいたとして、難攻不落なんこうふらく要塞ようさいに、金にならない竿を盗みに入るだろうか?


「その女狐めぎつねに騙されてはならぬぞ、舞」


声が響いて、正面のドアが開いた。


ドアを開けたのは執事の天河、その天河に抱きかかえられているのは御剱萌みつるぎめぐみだった。


「萌様」


萌はめったに人前に姿を現すことはない。


御剱家の人間さえ、その顔を拝むことなく一生を過ごす者も多いというのに、一体どうしたことだろう。


天河は壊れものを扱うように丁寧に、そっと萌を椅子におろした。


「久しぶりじゃの、日向野の年増殿」


辛辣な一言に、女帝は艶然えんぜんと笑って、


「またお目にかかれて光栄だわ。御剱の若造りのおちびさん。

一体何の用かしら。招かれざる客は早々に立ち去ってほしいのだけど」


わらわとて、好きこのんでこのような俗世へ降りたわけではないわ。

じゃが、舞は御剱みつるぎの跡を継ぐべき大切な姫。あらぬ疑いをかけられているとあっては、黙っておるわけにはゆかぬからの」


萌は毅然とした表情で女帝を見据えている。

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