23/146
23.
惨劇の翌朝、鉄はいつも通りの時刻に日向野エンタープライズに出社すると、社長室に行く前に竿塚と呼ばれる秘密の地下倉庫へ向かった。
ここで朝晩1回ずつ、舞が狩り取った竿の管理、確認をすることが鉄の日課であった。
繰り返される変わりばえのしない業務。
予定調和の日々、行われるお定まりの儀式。
しかし、その日に限っては、鉄の予想だにしない出来事があった。
扉をカードキーで開き、棚を見上げた瞬間、鉄の顔から色が失せる。
「なぜだ」
震える手が支えを求めて壁に寄り添う。
冷凍保管庫の棚を見る瞳は焦点を失い、こめかみを冷たい汗がつたった。
誰にも聞き取れないほどかすかな、低く押し殺した声が響いた。
「竿が……ない」
【第二夜・終】




