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11.
こうして美しき刺客は、黒き小箱を手に深閑とした夜を駆ける。
日向野エンタープライズの地下倉庫を訪れると、待ち構えていたように扉が開いた。
「約束の竿です」
黒い小箱を開けたのは、上等なスーツに身を包んだ男だった。
彼こそが日向野家当主・日向野鉄――通称『竿塚の鉄』である。
鉄は中身を確認すると、
「確かに」
と言い、整然と並ぶ大きな冷凍保管庫の一つにその箱を押しこんだ。
竿塚の鉄は竿斬りの舞に問う。
「手強い相手だったか」と。
これはいつもの同じ台詞、同じ時間に行われる同じやりとりだった。
いつものように、舞は無表情のまま答える。
「いいえ。またつまらない竿を斬ってしまいました」
【第一夜・完】




