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竿斬りの舞  作者: 凪子
第一夜
1/146

1.

――世の中には、死よりも惨いことがある。

闇の中、独り舞はたたずんでいた。


わずかな光もない、真の暗黒が全てを覆い尽くしている。

手を伸ばしてかき分けても、黒い霧はいっそう濃くなるばかり。


ぴちゃん、ぴちゃん、と液体が滴る音が響いた。


その間断ない水音だけを頼りに辺りを見回し、音のありかを探して歩き続ける。


不意に、水滴が額を濡らした。


それはつうと頬を滑り、足元へ落ち、闇の底に吸い込まれてゆく。

指先ですくいとり、口に含むと、どろりとした感触と鉄の味が口に広がった。


――水ではない。


忌み嫌うおぞましいもの。日の光の下で見ればきっと、鮮やかな緋色に違いない。


――これは……血だ。


意識がそう判じた途端、ぼとり、と頭上から何かが降ってきた。

ぼたり、ぼたり、と嫌な音を立てて雨のように降り注ぐ。

舞は恐ろしさと嫌悪に鳥肌を立て、半狂乱でそれを払いのけた。


それが何なのか、もう舞には分かっていた。


幾度も耳にした、世にも凄まじい断末魔と、恐ろしい怨嗟の声が鼓膜を突き刺す。


異臭を放ち、禍々しく存在を見せつけてくるその物体こそ、舞がこれまで狩り集めてきた――




「竿を返せ」

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