第1節「敷金・礼金」
令和元年、11月17日。一人の男が両親の元を離れた。この世に生を授かり34年、一人暮らしをはじめるイメージがいつしかなくなっていた。しかしその時はやってきた。こうあっけなくも颯爽と。
高校時代は独立に憧れたものだった。両親の勧めもあり、東京のとある大学を受けた。しかし端からとどくにとどかない夢物語だった。夢破れて地元の大学へ進学。いつの間にか「パラサイトシングル」ってヤツが自分の自然な感覚となる。
それから何年という年月が過ぎたのだろう。このまま年月が過ぎてゆけばなと思っていた傍ら「このままじゃあいけない」とも思っていた。
現実ってものは、皮肉にも自分の思い描いた方向とは違った方向へ動いていきやすい。それが得てしてうまくいくこともある。
さて、本作では私のプライバシーに纏わる話はほとんど書かないでおきたいと思う。まさかないと思うが、この作品がまさかのヒットを記録してしまった場合、私の何もかもが特定され、炎上に炎上を重ねてしまいかねないからだ。
これは私が1人暮らしをはじめてから1週間を記録した日記だ。
そしてこれは誰かの為でなくて、自分の為に記録するものであると言って良い。私が何かを思いだしたくなったとき、私が私で読み返して確認するものにする。ただそれだけなら別に作品にしなくていい筈。それはごもっともだ。
しかし私は言いたい。
1人暮らしをはじめるなら早いうちがいいと。
いつまでも家族と仲良く暮らす人たちはそれも1つの愛のカタチだ。私にとやかく言われる筋合いなんかない。そりゃそうじゃ。しかし「独立」という言葉が心の片隅にある者、じつは胸の内に秘めている者は「いつか」なんて甘ったるい言葉を持たないほうがいい。その「いつか」は「いつか」にしかならないと思いなさい。
一人暮らしをはじめたからには貯金だ。貯金をしはじめるのだ。
何故か? それはよく考えてみればわかる筈。
家を持つと言う事は生活をそこで営むということ。そして人の生活には様々な場面でお金がうんとかかっているのだ。例えばお洒落な服、美味いご飯、月々のスマホ代……他にもいっぱいあるだろう。
そして家を借りるとき、それを嫌でも実感するトピックがある。
そう、敷金・礼金だ。
これにはハンパの無いお金がかかる。ゲームアプリで課金しまくっている人は今すぐその趣味をやめないと、このドでかい壁を超える事はできない。それほどハンパのない額が突きつけられるのだ。この現実を直視したのは私が家族と喧嘩して飛び出した30ぐらいのとき。この敷金・礼金の話がでて、私は愕然とした。
これだけで私の貯金がなくなるのだと――
呆然とした私は「一旦持ち帰って考えます」とお家に帰って家族に謝った。
それから約4年、色々したい遊びをしながらも私はちょっとずつ給料を貯め、来たる時に備えた。そして時は巡りまわってやってきたのだ。
繰り返すがこれは私が私の為に綴る日記だ。
しかし、もしもこの日記を目にして一人暮らしを考え始めた若者がでてきたのなら、この作品は間違いなく私だけのものにはならないだろう。
一人暮らしを志す若人よ、腹を決めなさい。まずは貯金だ。
安くても敷金・礼金はだいたい20万ぐらいだ……
独立を志す皆の健闘を祈る。今日はここまで。おやすみなさい。
∀・)昨年の11月に新居へ引っ越して、一人暮らしをはじめたボクのリアルな日記です。7日にわたって連日掲載します。ボク恒例の後書きですが第1節と最終節である第7節のみの登場とさせて頂きます。エッセイではもう1作品「ユーザー企画をたちあげたいアナタへ」を3日間にわたって連載します。ユーザー企画を興すことに興味ある御方はあちらもどうぞ。ちなみにあちらの作品は後書きを一切残してません。宜しく。